前回、「災害時にクルマの車内は緊急避難シェルターになる」という記事をお届けし、車中泊が可能なクルマは、普段使い、レジャー、そして災害時の緊急避難場所、シェルターになりうる3Wayで使えることをお伝えしたが、今回は具体的に車中泊に向くクルマを紹介したい。ここではキャンピングカーは除外し、普段から普通のクルマとして使える乗用車を中心に、モータージャーナリスト、一家の災害対策主任!?としての知見を生かしてリストアップしてみた。
1. 日産セレナ
250万km走行テストの最終段階を迎えたロールス・ロイスのBEV「スペクター」
第一に推奨したい理由は、まずはそもそも3列シートを備えた大空間を備えた、日常使いもしやすいMクラスミニバンであるセレナとして初めてe-POWERモデルにAC100V/1500Wコンセントが用意されたこと。停電時でもガソリンが入っている限り、車内外で湯沸かしポットや簡易電子レンジ、充電式湯たんぽ、電気毛布などの家電品が使えるのである。
しかも、トヨタ・ノア&ヴォクシー、ホンダ・ステップワゴンを含む国産Mクラスボックス型ミニバンの中で、もっとも2-3列目フラットアレンジ時のフラット度に優れ、隙間が最小限で、クッション性が良く、それこそマットレス不要で全長2150mmもの快適なフラットスペース、ベッドスペースが確保できる点にある。しかも、ベッド化したスペースの下に、かなりの荷物収納スペースがある点も使いやすい。
2. 日産エクストレイル
ハイブリッドのe-POWERモデルにはAC100V/1500Wコンセントが標準、またはオプションで備わり、後席を格納すればラゲッジルームから続く比較的フラットかつ2m前後(前席シート位置による)のフルフラットアレンジが可能になり、車内をお座敷、ベッドルーム化しやすいSUV。
本格SUVならではの最低地上高はグレードによって185~200mmと十分で、四駆のe-4ORCEモデルであれば高い走破性を示してくれるから万全、安心だ。グレードによってはコネクティッド機能のひとつとしてSOSコールの用意もあり、さらに安心感が増す。
3. 三菱アウトランダー
三菱アウトランダーPHEVも災害に強い1台だ。アウトランダーは悪路に強いクルマとして認知されているが、現行モデルはPHEVのみとなり、全グレードにAC100V/1500Wコンセントを車内2か所に装備。停電時でもガソリンが入っている限り、車内外で家電品が使える電源を確保でき、V2H(Vehicle to Home)機能を使えば満充電、ガソリン満タンの状態で、一般家庭の電力量最大約12日分をまかなうことができるのだから心強い。
しかも、後席を格納すれば約1850mmの比較的フラットで、SUVにしては高さのあるスペース(最低天井高約980mm)が出現。快適なベッドルームに変身させることができる(別途、マットレスは必要だが)。
4. トヨタRAV4
トヨタRAV4にもAC100V/1500Wコンセントがハイブリッドにオプション、PHEVには標準で用意されている。パッケージはアウトドアニーズに応えた、後席よりも荷室優先で、荷物の積載力は抜群。そして後席を倒せばなんと、全長約1930mmものフラットスペースができ、大柄な人でもゆったりと横になることができ、最低天井高は810mmと十分。全車4WDで最低地上高もグレードによって190~200mmと、走破性も文句なしと言っていい。
5. ホンダ・ステップワゴン
3列シートを備えたMクラスボックス型ミニバンのステップワゴンは、現在の6代目で2列目キャプテンシートの左右スライドを、前後ロングスライドに加え付加。よって普段、贅沢なかけ心地、居心地が得られる2列目キャプテンシートを選択しても、2列目席をベンチシート化することができ(幅はスマートマルチセンターシートを備えたセレナより狭いが)、2/3列目席フラットアレンジによるベッド化が可能な、車中泊に向くミニバンの1台として挙げることができる。
強みは純正アクセサリーにアウトドア、車中泊、そして災害時の車内避難場所としても活躍してくれるセパレートカーテンとプライバシーシェードが用意されていること。セパレートカーテンはフロントシートバック部に取り付け、後席部分のプライバシーを守ってくれるアイテム。さすが純正アクセサリーだけあって、ジャストフィットで1列目席と後席をセパレート。
そしてプライバシーシェードは5枚セットでスライドドアウインドー、クォーターウインドー、リアウインドーに吸盤で張り付けるタイプのカーテンで、こちらもウインドーにジャストフィットするのはもちろん、脱着の容易性がポイント。サッと取り付けられ、サッと取り外すことができるスグレものだ。
AC100V/1500Wコンセントの用意はないものの、純正アクセサリーのカーテン、シェードによって完全にプライバシーが守られた広大な室内空間、最大2040mmの長さを誇るベッド長を生かし一時避難場所として使うにも文句なしの1台と言っていい。もちろん、平時のアウトドア、車中泊にも大活躍してくれること必至である。
と、ここまではMクラスのミニバン、Mクラスの国産SUVの中で、アウトドアはもちろん、災害時にも強い電動車を紹介してきたが、5ナンバークラス、軽自動車でも大人が真っすぐに寝られる(筆者の身長172cm基準で体験済み)、価格もリーズナブルな車種を紹介する。
6. ホンダ・フリード+
ホンダの5ナンバー登録となるコンパクトミニバンがフリード。ここではその2列シート版となるフリード+(プラス)を災害時にも役立つ室内空間を持つクルマとして紹介したい。最大のポイントは、後席を格納すれば、標準装備されるワイパブルボードによって、最大1890mmものフラットスペースがアレンジできるのだ。実際、フリード+で車中泊をしてみたことがあるが、純正アクセサリーのラゲッジクッションマット(幅1230×長さ1800×厚み30mm/4分割で収納可)なども用意され、大人2人+愛犬1頭で快適に過ごせ、真っすぐに寝られることを確認済み。AC100V/1500Wコンセントは用意されていないものの、ホンダではハンディタイプの正弦波インバーター搭載の発電機が多数、ラインナップ(12万1000円~)されているので、それを用いれば、災害時の電源供給が可能になる。
7. スズキ・ハスラー
軽自動車で車中泊に対応するクルマと言えば、大空間が自慢の、例えばN BOXのようなスーパーハイト系軽自動車を想像しがちだが、実は、ハイトワゴン系の軽自動車の中にも、1/2列目席フラット化によって車内にベッドスペースを確保できる車種がある。その筆頭が、悪路の走破性のも強い(4WD)スズキ・ハスラーだ。前席の背もたれをほぼ水平まで倒し、後席とつなげることで、なんと最大2040mmもの前後長があるベッドスペースを出現させことが簡単にできるのだ。これは車両開発時の狙いでもあり、そのため前席のシートサイドサポートを、フラット化のために削っているほど。
8. スズキ・スペーシア ベース
軽商用車ながら、ホビーユース、車中泊、サテライトオフィスとして万能に使えるのがスズキのスペーシア ベース。前席と荷室優先のパッケージで、その実態は、スーパーハイト系軽自動車のスペーシアを基本に、MC前のスペーシアカスタムの顔を与え、そしてスペーシアのクロスオーバーモデルであるスペーシア ギアの撥水シート表皮やルーフレールを採用するなどいいとこ取りをして、前席背後を軽商用車として仕立てた、走る秘密基地にもなりうる1台。
大きな特徴が、まずは荷室に実測サイズで幅1130×奥行き685mmの「マルチボード」を標準装備していること。これは下/中/上段にセットできるボードで、上段固定用のアタッチメント、固定用ネットも標準装備されている。そのマルチボードを下段にセットし(ボード下の収納スペースの高さ160mm)、前席の背もたれをほぼ水平に倒せば、マルチボードとつながるフラットフロアが出現。その全長はフロア長で実測1740mmに達する。つまり、身長174cm前後の人なら、真っすぐに横になれるベッドスペースとして使えるわけだ。
さらにマルチボードを上段にセットし(ボード下の収納スペースの高さ435mm)、後席を格納すれば、マルチボードがテーブルに、格納した後席部分がベンチタイプの二人掛けの椅子となり、アウトドアでの窓向きのテーブル席に変身。バックドアを開ければオープンテラス席として使え(どちらも雨天OK)、食卓、ワークデスクとして使うにもぴったりなのである。
天井やリヤクォーターウインドー部分は収納になっていて、まさにワンルームのように使える、災害時にも強い味方になってくれるに違いない。
さらに純正アクセサリーとしてウインドー全周を覆うプライバシーシェードが用意され、車内が完全なるプライベート空間になるから、アウトドア、車中泊、災害時の車内避難を問わず、安心・快適だ。
ちなみに停電時には使えないが、純正アクセサリーとして”外部電源ユニット”が用意され、オートキャンプ場の電源設備、あるいは自宅からスマートにAC100V電源を車内の引き込むことができ(窓やドアを少し開ける必要なし。専用取り込み口がある)、車内で1500Wまでの家電品を使うこともできるから便利(HVやPHVにある自己完結型のAC100V/1500Wコンセントとは意味合いが異なるが)。
9. シトロエン・ベルランゴ&プジョー・リフター
最後に輸入車から2台を紹介。ミニバン×SUV×ワゴンを掛け合わせたパッケージが魅力のアウトドアにも似合うシトロエン・ベルランゴと兄弟車のプジョー・リフターも、オシャレなだけでなく、車中泊に向くクルマだ。その理由は、オプションながら「agreベッドキット」という専用のベッドキットが用意され、2列シート、標準ホイールベースモデルでも幅1200mm、全長1800mmのまんまベッドクッションをシートアレンジによって装備することができるのだ。その際の天井高は890mmもあり、寝るだけでなく、お座敷として座ることも可能(身長、座高による)。つまり、本来の目的のアウトドアユースから、災害時のプライベートなベッド空間までを叶えてくれるアイテム。豊富なカラバリも、フランス車に相応しい。
10. 三菱デリカD:5
このほかにも、シートアレンジによって、普段使いからレジャー、車中泊、災害時の緊急避難場所として使えるクルマは、三菱デリカD:5などのミニバンを中心に多々ある。
実際にショールームを訪れ、災害時に役立つUSBソケット、AC100V/1500Wコンセントなどの装備の確認と、シートアレンジでベッド化したときの居心地、寝心地の確認は必須。多くの場合、シートアレンジだけではフラットに寝られないため(日産セレナなどを除く)、専用または汎用のベッドキット、マットレスの併用も併せて検討したい。
ちなみに筆者は東日本大震災の際にはミニバンに乗っていたが、現在はコンパクトなステーションワゴン、VWゴルフ7.5ヴァリアントのラゲッジスペースを、後席格納によって夫婦+愛犬で車中泊できるように仕立て(後席格納時のフロア長は1670mmだが、裏技として、ヘッドレストを逆付けして枕代わりにすればベッド長が伸び、身長172cmの筆者が足を伸ばして横になることができる)、フロア下に災害用アイテムをどっさり積み込んでいる。
次回は、日ごろから車内に積んでおきたい季節に合わせた災害時用アイテムの数々などについて紹介させていただきたい。
文/青山尚暉
写真/青山尚暉 雪岡直樹
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みんなのコメント
ルーフテントという手もあるよ。
日頃から車中泊に慣れておくのが、肝要だね。