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人気の軽自動車売れすぎ注意? 販売好調の陰には日本の不安な将来像が見えていた

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人気の軽自動車売れすぎ注意? 販売好調の陰には日本の不安な将来像が見えていた

■新車販売の約4割を占める軽自動車

 昨今は軽自動車が人気です。ひと昔前とは違い、デザインも性能も普通車とあまり変わらなくなっており、ファーストカーとして使用するユーザーも増えています。

なぜホンダ「N-BOX」売れ続ける? 軽メーカーダイハツ・スズキが超えられない理由とは

 2019年5月の販売台数を見ると、1位はホンダ「N-BOX」(派生車種のスラッシュを含む)、2位はスズキ「スペーシア」、3位は日産「デイズ」(ルークスを含む)で、上位3車はすべて軽自動車でした。

 4位は普通車のトヨタ「プリウス」ですが、5位は再び軽自動車のダイハツ「タント」、6位はダイハツ「ムーヴ」(キャンバスを含む)と続きます。その結果、新車として販売されたクルマの38%が軽自動車となり、売れ筋のカテゴリーであることがわかります。

 メーカー別に見ると、軽自動車比率を急速に高めたのがホンダです。2019年5月には、新車として販売されたホンダ車のうち、N-BOXが37%に達しました。「N-WGN」などを含めた軽自動車全体で見ると52%です。

 2019年7月18日にはN-WGNのフルモデルチェンジもおこなわれるので、ホンダの軽自動車比率は60%から70%になるかも知れません。これはスズキの82%に近づく勢いです。

 また、2019年3月にフルモデルチェンジしたデイズの売れ行きが好調で、日産も軽自動車の販売比率が37%に達しました。

 軽自動車は日本独自の規格で、メーカーも力を入れて商品開発をおこなうため、売れて当然といえるでしょう。しかし軽自動車がたくさん売れて、小型/普通車の販売比率が下がると弊害も生じてきます。

 弊害のひとつとして挙げられるのは、税収不足です。軽自動車は購入時に納める自動車取得税(地方税)の税率が低く、自家用車は取得価格の2%です。小型/普通車は3%なので、軽自動車は取得税を安く抑えられます。つまり、税収が下がというわけです。

 軽自動車は自動車重量税(国税)も軽減され、車両重量が1001kgから1500kgの小型/普通車と比べると、税額は27%と安いです。

 軽自動車税(地方税)は、自家用乗用車の場合で年額1万800円となります。小型/普通車の自動車税(地方税)は、現時点では税額が最も安いエンジン排気量1リッター未満の車種でも、年額2万9500円になり、軽自動車なら税額を37%以下に抑えられるのです。

 このように、軽自動車は節税効果が優れているため、軽自動車が増えて小型/普通車が減ると、地方税収は大幅に減額されます。

■軽自動車の税金も値上げの可能性

 しかし今の状態が続くと、軽自動車税を値上げする可能性が高まるでしょう。すでに値上げはおこなわれており、以前の軽自動車税は年額7200円でしたが、2015年4月1日以降に届け出された車両は、年額1万800円に値上がりしました。軽自動車の販売比率が今後も増え続けると、さらに値上げされる可能性があります。

 軽自動車の税金が値上げされると困るのは、公共の交通機関が未発達な地域に住む人達です。とくに高齢者の場合、都市部に住んでいればシルバーパスを使って低料金で移動できますが、公共の交通機関を利用しづらい地域では、軽自動車を購入して通院や日常的な買い物をしています。

 このときに使われる軽自動車は、好調に売れる最新型のN-BOXやスペーシアではありません。古いホンダ「ライフ」やスズキ「ワゴンR」などです。

 年金で暮らす高齢者にとって、軽自動車税が年額7200円から1万800円に増えるのは、大幅な負担増加となります。これ以上、軽自動車の販売比率が拡大して小型/普通車の割合が減ると、さらなる負担増加となり、移動の自由を奪いかねないのです。

 このような状況を心配する理由は、すでに自動車関連の税金が酷い状態になっているからです。最初に登録してから13年を超えた軽自動車は、軽自動車税が年額1万2900円に上がってしまうのです。

 自動車重量税も同様です。車検を受ける時に納める2年分の重量税は、軽自動車では通常なら6600円ですが、最初の登録から13年を超えると8200円、18年を経過すると8800円に増額されます。

「新しい軽自動車に乗り替えれば環境に優しい」という単純な理由で、古い車両を使うユーザーに重税を課すのが今の自動車税制です。13年を超えたクルマのユーザーが、どのような境遇にあるのか、なぜ古いクルマを使うのかなど国はまったく考えません。

 そうなると軽自動車の販売比率が増えれば、税金を高くするでしょう。軽自動車がたくさん売れるほど、軽自動車の税金が危機にさらされます。

■新車販売店が抱える問題とは

 軽自動車の増加は、税収面でユーザーに弊害があるばかりでなく、新車を販売する販売店の収益にも影響を与えます。

 大手自動車メーカーの販売店スタッフは次のように話します。

「軽自動車は、1台当たりの粗利が少ないため、小型車や普通車に比べるとまったく儲かりません。軽自動車でも売れれば車検、点検、保険などの仕事が入りますから、もちろん販売した方が良いのですが、小型車とのバランスも大切です」

 販売店が儲からないということをユーザーの側から見れば、「軽自動車は機能や装備の割に価格が安い」といえます。だからこそ人気を高めたのですが、その反動で小型/普通車の売れ行きが下がると販売会社は困ってしまいます。

 問題は販売会社の経営が行き詰まると、店舗の削減などリストラが進むことです。馴染みの店舗が廃止されたりするとユーザーも困るでしょう。

 国産車のメーカーは、今は海外を中心にクルマを販売するため、日本国内にコストを費やさない傾向が見られます。その結果、国内販売が軽自動車に託された面もありますが、そこには弊害も生じるわけです。

※ ※ ※

 日本車メーカーは、軽自動車をヒットさせたなら、それ以上に小型/普通車の開発にも力を注いで販売の不均衡が生じないよう配慮すべきでしょう。

 今は、軽自動車の販売比率が前述の38%に達しましたが、理想は25%以下です。1990年頃は、軽自動車の販売比率が23%くらいでした。この時代の売り方に戻すべきです。小型/普通車のニューモデルに期待したいです。

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