■世界一過酷なラリーにランドクルーザーで参戦
ダカール・ラリーは、1978年にフランス人冒険家のティエリー・サビーヌ氏によって始められました(第1回目は「オアシス・ラリー」という名称)。
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オートバイレーサーだったサビーヌ氏の「パリからダカールまでラリーをしよう」というひと言で始まったこの競技は、元々はフランス・パリをスタート。その後、スペイン・バルセロナに移動して、そこからアフリカ大陸に上陸。そしてサハラ砂漠を駆け抜けて、セネガルの首都であるダカールの砂浜にゴールするというものでした。
開催年によって異なりますが、競技は2週間から3週間にわたっておこなわれ、総走行距離は約8000kmにも及ぶ、前代未聞の壮大な冒険ラリーでした。競技は四輪車、二輪車、トラック、バギーが同じステージを走り、その総合タイムを競います。
いまでは、砂漠やジャングルなどを駆け抜ける冒険的なラリーを「クロスカントリーラリー」、もしくは「ラリーレイド」と呼ぶのが一般的になりましたが、そのカテゴリーの先駆けとなったのが、まさにパリダカール・ラリーなのです。
トヨタ車体の「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)」の参戦は(チームの前身となるトヨタ・チームアラコを含め)1995年からですが、それ以前には日本のチームACPがトヨタ「ランドクルーザー70(BJ74型)」で出場。また多くのプライベーターたちが、信頼性の高いランドクルーザーを選びました。
そしてサハラ砂漠を舞台に、ライバルである三菱「パジェロ」やランドローバー「レンジローバー」と激闘を繰り広げ、日本のオフロード4WDファンを魅了しました。
その後、ルートとなっていたアフリカの治安悪化を理由に2008年大会が中止。翌2009年の第31回大会から舞台を南米に移しましたが、ゴールの地名であったダカールの名は象徴として残り、『ダカール・ラリー』という名称で大会は続いていきました。さらに2020年には、舞台を中東のサウジアラビアに移し、現在に至っています。
TLCの前身は、かつてランドクルーザーを生産していた「アラコ(荒川車体工業)」が主体となった「トヨタ・チームアラコ」。2005年大会でTLCに活動を引き継ぐまで、“市販車部門”において7度もクラス優勝に輝く快挙を達成しました。
ちなみに、ランドクルーザー80系や100系、そして200系で参戦してきたのは「市販車部門(グループT2)」ですが、それはどのようなものなのでしょうか。
市販車部門は、年間1000台以上の生産がおこなわれている市販車両に、規定で定められた安全装備(ロールケージなど)を装着したラリー車両が出場するクラスをいいます。このクラスのマシンは、エンジンや駆動系の主要部品は市販の状態のままというレギュレーションになっています。
ラリー参戦のための改造において、比較的自由度が高い「改造車部門」とは異なり、市販車部門のマシンはベースとなるモデルの品質の高さが勝利のカギとなります。いってみれば市販車部門で優勝することは、世界中を走っているランドクルーザーの優秀さを実証することになるわけです。
そして2022年。TLCは、1995年の参戦開始から28回目となるダカール・ラリーに挑戦します。
出場車両は、トヨタ車体が生産するランドクルーザー200系。同車両としては14回目となり、200系最後の出場となります。ドライブするのは、昨年度の大会でランドクルーザーを見事に市販車部門8連覇に導いた、トヨタ車体社員の三浦昂(みうらあきら)選手たち。
サウジアラビア北部のハイルをスタートして、首都リアドで一日休息。再び砂漠を疾走して、最終日には紅海を望むジェッダにゴールします。
2022年1月2日から14日までの13日間、全12のスペシャルステージとリエゾンセクション(移動区間)を含めた約8000kmのラリーを戦う予定です。
今回のメインステージは、“エンプティクオーター(何もない大地)”と呼ばれるルブアルハリ砂漠。100%砂丘路面の3ステージが予定されており、メカニックによる整備やスペアパーツ供給が一切禁止されるマラソンステージも、砂丘路面で設定されているといいます。
昨今はマシンも高性能化して、砂漠でのアベレージスピードも驚異的なレベルに。三浦選手いわく、「砂丘では20km/hから30km/h程度の場所もありますが、比較的フラットな路面では180km/hは出ます」といいます。
今回のダカール・ラリーも、ドライバーとナビゲーターに高度な技術を求める過酷なラリーになる模様で、三浦選手をはじめ、TLCの面々、ランドクルーザー200系がどのような闘いを繰り広げるのかが楽しみです。
■ランドクルーザー300系の開発にフィードバック
ダカール・ラリーへの28回目の挑戦に準備をスタートさせた「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(以下TLC)」。チームのエースドライバーである三浦昂選手、そしてチームを率いる角谷裕司監督ですが、じつはトヨタ車体の社員なんだとか。
ともに『総務部 広報室 ダカールラリー推進グループ』という部署に所属しています。そして本多篤チーム代表もまた、トヨタ車体で領域長を務める社員です。
ただしメンバー構成は同社社員のみならず、福岡トヨタ自動車のメカニックや欧州のラリーメカニック、プロのドライバー、ナビゲーターなどが参加するグローバルチームです。トヨタ車体はアラコから受け継ぐ形で、2005年からダカール・ラリーに参戦。自らが生産したランドクルーザー100系と200系で、すでに14回もクラス優勝を果たしています。
それにしても、トヨタ車体が長年にわたって、ダカール・ラリーに参戦し続ける意義とは何なのでしょうか。ドライバーの三浦選手は、目的の一つは社員のモチベーションを高めることだといいます。
「ランドクルーザーはほとんどが輸出向けになるのですが、生産ラインにいる社員一人一人が、世界の過酷な状況で使われているシーンをイメージできるかというと、難しいと思うんですね。でも、同じ会社の社員がラリーに出て、その体験談を話し、クルマを見せると“こんなになるの!?”ということになるんです。“だったらちゃんと作らなきゃ”とか、“俺たちのクルマで世界一を取るんだ”という感覚を共有し、もっといいランクルづくりへのチャレンジに繋げたいと思っています」
もちろん、ランドクルーザーの信頼性、耐久性、悪路走破性の高さを自らが実証するということも主眼に含まれています。さらには、世界の舞台に挑戦する会社を若年層に知ってもらい、この会社で働いてみたいというリクルーティングの一環でもあるようです。
ただ、それだけはないと三浦選手は付け加えます。
「自分としてはモータースポーツをきちんとビジネスにしたいと思っています。だからこそ、ランドクルーザーにその経験をフィードバックしたいとか、売るという点ではこのモデルの本当の魅力をお客さまにどのように伝えられるかとか、そういうビジネスでの貢献を意識するようにしています」
そのビジネス化の試みは、どのようなシーンで具現化しているのでしょうか。
「ひとつの成功事例が、ランドクルーザー300系です。
クロスカントリーラリーで起こる事象というのは、開発レベルで考えれば一般的な使用条件を超えてしまっているんですね。“ダカール・ラリーでこうなりました”と伝えても、開発側から“それはそうでしょう”といわれてしまいます。だから自分がドライバーなった時に、将来の開発を見据えるような長いスパンで考えなければダメだなと。この事象はラリーだけの話だけど、こうすればお客さまがラクに運転するのに繋がりますよねと、ランクル300系の開発で初めてコミュニケーションが取れるようになりました」。
たとえば、新開発のプラットフォームにより、ランクル300系のリアサスペンションのレイアウトは200系から大きく変更されています。リアのダンパーが従来型よりも起き気味に装着されており、より適正化されたジオメトリーと、トラベル量の拡大が実現されました。そしてこの構造の変更は、ダカール・ラリーからの経験がフィードバックされていると三浦さんは語ります。
「ランクル200系に乗っていて、リアサスペンションに限界を感じていました。波打っているような路面をハイスピードで走っていると、当然クルマは暴れ始めます。そうすると、リアのストローク量が足りないため、お尻が跳ね始めて、やがては前転してしまうんですね。そこでスピード限界が決まってしまいます。
これを何とかすれば、もっと速く走れるし、お客さま目線だと“ラクに運転できる”ということにつながると思うんです。その結果、生まれたのがランクル300系のリアサスというわけです」
■ダカール・ラリー2022から新たにトーヨータイヤを装着
2022年のダカール・ラリーには、ランクル300系ではなく、従来型のランクル200系の参戦となります。そこには、市販車部門のレギュレーションが立ちはだかっていると、角谷チーム監督はいいます。
「まず市販車部門の規定として、年間の生産台数が1000台以上でなければなりませんので、残念ながら2022年1月までにそれがクリアできません。
ランドクルーザーは仕向け地によって様々な仕様がありますが、ラリー車をつくる時にはそれらすべての仕様から使うパーツを精査します。FIAの規定で、こうしたパーツや装備品についても生産台数の規定が細かく定められているからなんです」。
この話を聞いた時に、たとえば200系はどんなグレードを使い、どんな仕様になっているのかが気になってきました。その疑問を、ひとつひとつ三浦選手にぶつけてみました。
「まずラリー車は欧州でつくるため、欧州仕様のロアグレードがベースとなります。これは日本から運ぶのではなく、フランスのディーラーで購入します。トラクションコントロールやマルチテレインセレクトなどの電子デバイスは、すべてカットしてあります。僕自身がマルチテレインセレクトなので(笑)。
使っているパーツは、ロールケージや防爆燃料タンクなどを除いて、すべて世界のランドクルーザーで使われているパーツです。ボディ補強もおこなっていますが、それも市販車のボディの一部を切って、二重にするといったものです。タイヤは銘柄やモデルは標準タイヤと異なりますが、インチ、リム幅は市販車に付いているものと同じサイズのものを使わなければなりません」
今回の取材で、2021年ダカール・ラリー仕様のマシンを目の当たりにしましたが、ノーマルよりもかなりロードクリアランスが上がっているのがわかります。海外仕様のランクルのなかには、日本仕様よりも車高が上がっている仕様がありますが、そのサスペンションの装着を考えても、地上高はノーマルとはまるで違います。
三浦選手に聞いたところ、なんとラダーフレームとアッパーボディの間に4cmアップのブロックをかませて、ボディリフトをおこなっているんだとか。市販車部門では、いろいろな改造のノウハウがありそうです。
2022シーズンからは、最近さまざまなオフロードラリーで活躍中のトーヨータイヤがパートナーに加わったことも、チームのトピックです。
ダカール・ラリー2022には、現在開発中の競技志向のタイヤが装着されるとのことなので楽しみですが、
多種多様な路面を走らなければならないラリー車にとって、タイヤの重要性や求められる性能要件の厳しさは容易に想像できます。
まだ正式な開催は決まっていませんが、TLCはダカール・ラリーの前哨線ともいえるモロッコラリーへの準備中です。
欧州でつくられたTLCのランドクルーザー200系2022年バージョンは、いよいよ最後の挑戦を始めます。新しいマシンの仕様やトーヨータイヤのNEWモデルなど、注目のポイントがいっぱい。ダカール・ラリー2022のゴールまで、まだまだ目が離せません。
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注目度が低いのもそのため。