■まずは「法人向け」販売からスタート
ヤマダデンキは2023年6月29日、三菱自動車工業(以下、三菱)の軽EV(電気自動車)「eKクロス EV」と、軽商用EV「ミニキャブ・ミーブ」の新車発売について、法人を対象に7月4日よりスタートすると発表しました。まず首都圏の5店舗から開始するといいます。
同社では以前にも三菱のEVを販売した実績があるなか、再開した理由や今後の動向について解説します。
【画像】販売予定の三菱「eKクロス EV」「ミニキャブ・ミーブ」を写真で見る(30枚)
ヤマダデンキが、三菱のEVを販売することを発表しました。
2023年7月より、神奈川県内と埼玉県内のヤマダデンキ5店舗で、三菱の軽EV「eKクロス EV」と商用軽EVの「ミニキャブ・ミーブ」を法人向けに新車販売するということです。
販売は、テックランド横浜本店(横浜市港南区)、テックランド横浜泉店(横浜市泉区)、家電住まいる館YAMADA戸塚店(横浜市戸塚区)、テックランド大宮宮前本店(さいたま市西区)、そしてTecc LIFE SELECT 春日部本店(埼玉県春日部市)の5店舗から始まります。
今後は11店舗まで販売店舗を増やし、さらに販売店舗の拡張を目指すと、EV販売に前向きな姿勢を示しています。
このニュースを見て「あれ、そういえばちょっと前にもヤマダデンキで『i-MiEV(アイ・ミーブ)』を売っていたのでは」とか、「結局、以前のEV販売がこれまで続いてきたのか、それとも…」などという感想を持つ人が少なくないでしょう。
そこで、まずはヤマダデンキの過去のニュースリリースを確認してみました。
するといま(2023年)から13年前の2010年12月1日に、「ヤマダ電機(当時の社名)、三菱自動車の『i-MiEV』を試行販売」という発表をしていました。
それは、次世代の住宅という名目の「スマートハウス事業」の一環でした。
当時、自動車の販売実験を行っていた17店舗の販売員などが販売促進を行うという流れです。
この試みが結局どうなっていったのか、今回の三菱との事業連携について、ヤマダホールディングス・広報課に問い合わせてみました。
すると、三菱との過去の協業は、2010年12月から2013年11月で終了していました。
対象となった店舗は、東京、神奈川、埼玉の合計17店舗です。
ここでは一般ユーザー向けの販売を行いましたが、販売実績は、アイ・ミーブとミニキャブ・ミーブの合計68台にとどまりました。
販売を停止した理由については次のように説明します。
「アイ・ミーブがマイナーチェンジによって普通車扱いとなるなど、当初の車両条件などが変更になったからです」
では今回、なぜEV販売事業を再開するのでしょう。
きっかけは、三菱が2022年10月13日に発表した、ミニキャブ・ミーブの一般販売再販です。
ミニキャブ・ミーブは2011年12月から販売され、2021年3月末に一旦生産を終了していますが、日本郵便など一部の法人向けで販売を続けており、地味な存在ながら、軽商用EVのロングセラーでした。
それが、昨今のカーボンニュートラルに向けた企業や個人の意識の高まりなどがあり、異例ともいえる再販につながったのです。
そうした中で、三菱からヤマダデンキに対して協業再開の打診があったということです。
ヤマダデンキとしては、昨今の社会情勢を鑑み、EVに加えて太陽光、蓄電池、充電設備のトータルパッケージ「EVのワンストップサービス」を法人向けに提案することが可能であるとの考えから、協業再開を決めたという経緯があったといいます。
■「個人ユーザー」に向けた販売に拡大するのはいつ!?
では、どうして神奈川と埼玉から事業を始めるのでしょう。
ヤマダデンキでは、三菱の国内販売子会社である東日本三菱自動車販売の販売テリトリーであること、またヤマダデンキの自動車販売拠点と法人営業部がある店舗から事業を始めるためだとしています。
まず、最初の5店舗で店頭に展示。法人営業車両としても導入するといい、また将来的にはオンライン販売も検討するとのことです。
なおヤマダデンキでは、現時点で全国展開の予定はないと説明します。
整備や車検などメンテナンス業務については、ヤマダデンキがパートナーとしている、JARWA(一般社団法人 日本自動車車体補修協会)に依頼。
中古車販売については、東日本三菱自動車販売と調整しながら行います。
また、EV事業で重要となる電池のリサイクルについては、自社での電池リサイクルではなく、三菱との情報交換を踏まえながら、今後進めていくという回答でした。
このように、ヤマダデンキがすでに構築している自社の自動車販売網と、パートナー企業との連携をさらに強化することで、EV販売はスムーズに進みそうに思えます。
さて、気になるのは個人向け販売です。
当面は法人向けのミニキャブ・ミーブが事業の主流ですが、そうした法人向け事業で足場固めをした上で、個人向けの事業化が加速することを期待したいところです。
むろん、2010年から2013年での知見や反省を踏まえて、世の中のEVシフトの実態をベストタイミングで捉えるといった視点での事業展開を考えることが大事でしょう。
ただし、法人向けにしろ個人向けにしろ、商圏を拡大するとなると、既存販売店(新車ディーラー網)とのテリトリー制の調整など、クリアしなければならないハードルは様々あるはずです。
そのため、今回のヤマダデンキによる三菱とのEV事業連携の再開が、同社による新車販売綱の再建に直結するといった未来図を、現時点で描くことは少々無理があると感じます。
とはいえ、ヤマダデンキといえば近年、キッチン、バス、トイレなどのリフォーム事業に積極的に参入していることで知られています。
テレビショッピングでも数百万円のパッケージ商品が人気になっているといいます。
近い将来、V2H(ヴィークル・トゥ・ホーム:車と家の電力連携)という切り口で、EV+普通充電器+太陽光パネル+定置型蓄電池といった、個人向けパッケージ商品が「EVのワンストップサービス」として、ヤマダデンキのテレビショッピングに登場することがあるかもしれません。
今後も、「ヤマダデンキ×三菱自動車」の取り組みを注視していきたいと思います。
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