STIがモータースポーツで培った技術によって、スバル車の持つ資質を引き上げたこだわりのモデルが「STI Sport」だ。今回はレヴォーグ、WRX S4、フォレスターの3モデルにラインナップするSTI Sportを西川 淳氏がテストドライブ。(Motor Magazine2023年3月号より)
WRCをはじめとするモータースポーツ活動で高めたブランド力
さほどラリーやレースに興味のなかった私がSTIの存在を初めて知ったのは初代レガシィのころだったと記憶する。ラリー好きでスバル好きの編集者が誇らしげに「このレガシィセダン、STIがみっちり仕上げたんすよね!」と言うから、そのエスなんちゃらって一体何なの?と聞き返すと、「先輩、知らないんですか!スバル・テクニカ・インターナショナルの略っすよ」と教えてくれた。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
あれから30年以上が経った。STIの発足そのものは1988年のことだったから、正確には2023年の4月で35周年を迎える。その間、STIの三文字はというとスバリストはもちろんのこと、日本の、否、世界のラリーカー好き、高性能車好きから一目を置かれる存在にまでのぼり詰めた。
もちろん、WRCに代表されるモータースポーツ活動こそが彼らの本業であり、その数々の成功によってブランド力を高めてきたというわけだ。ドイツ車好きにはBMWのMに該当するといえば、STIの立ち位置は自ずと理解できるだろう。
モータースポーツ活動の他に彼らの名をクルマ好きに知らしめたのが、レガシィやインプレッサといったスバルの量産モデルを独自にチューニングして生産したコンプリートカー商品群だった。件のレガシィセダンはその嚆矢というべき存在でモデル名を「レガシィRSタイプRA」と言い、このときはまだSTIを車名には添えていなかった。
ネーミング話のついでに急いで書き加えておくと、STIに限らず日本の付加価値ブランドといえば名前の付け方に一貫性がまるでないのが残念だ。たとえばSTIのコンプリート系でいえば、初期からS●00(数字三桁)を使っているにもかかわらず、その他にもいろんな名前があっていささか混乱してしまう。
もちろんチューニングレベルやカテゴリーの差を鑑みてのことだったと思うが。とくにこれから紹介する「STIスポーツ」のようなセカンドライン、いわゆるディフュージョンブランドを展開する場合には、本家の名称および誰もが理解できるネーミング方法を確立しておくことが大事だと思う。
フラッグシップにSTIスポーツの名が付けられる
閑話休題。「STIスポーツ」を名乗るモデルは、STIによるコンプリートマシンではなくスバルが企画しSTIがシャシやサスペンションまわりを中心に磨き上げた高性能モデルである。それゆえに生産も通常の生産ラインにおいて行われる。
STIから見ればセカンドラインではあるが、スバルのスタンダードなラインナップ上では最上級グレードに位置している。BMWにおけるMパフォーマンスモデルと同様、基本的にパワートレーンには手を入れないことで、価格を抑えつつドライビングファンなグレードに仕立てあげることを目標としたモデルと言っていい。
同時にスバルというブランドのあり方、たとえばモータースポーツイメージと安全性の両立、といったテーマを体現するフラッグシップという大役も担っている。
現在「STIスポーツ」を名乗るグレードを持つモデルは4種類あるが、そのうちインプレッサはモデル末期(新型の情報はMM3月号107ページに掲載)ということで、今回は残る3モデルのWRX、レヴォーグ、フォレスターを撮影取材へと連れ出してみた。
もっとも売れているスバル車フォレスターにも設定
まずはもっとも新しいSTIスポーツグレードとなるフォレスターから報告しよう。日本市場において一番売れているスバル車(22年)であり、それゆえSTIとの親和性があまり高くないことを承知で上位グレードとして設定したということだろう。事実、プライス表を見ても最廉価グレードの+約60万円と、この種の高級グレードとしては驚くほどリーズナブルな設定となっている。
もっともその仕様や装備を詳細に見れば、+60万円で済んだ理由もうなずける。ベースとなったグレードはそれまでの最上級だった「スポーツ」で、前述したようにパワートレーン系の変更はなく、CB18型1.8L水平対向4気筒ターボ+CVT(リニアトロニック)を積んでいる。
内外装の仕様変更やデコレーション追加はさておき、STI絡みでいえば基本、足まわりのダンパー変更がメインだ。それもフロントダンパーを日立アステモ製SFRDダンパーに変更し、リアの減衰特性をそれに併せてチューニングするという極めてシンプルな手法を採った。
その他の要素、たとえばコイルスプリングやスタビライザー、タイヤ&ホイールサイズなどの変更はない。車高(最低地上高)も「スポーツ」と同じ。
これで「STIスポーツ」を名乗っていいのか?とさえ思ってしまうが、ここでまたネーミング法を変えてしまうと元の木阿弥だろう。むしろ「それだけの違い」でいかにフォレスターの乗り味を進化させることができたのか、STIの腕の見せどころというわけである。
案の定、常用域における乗り心地=とくにハイトのあるタイヤを履くSUVが苦手とする舗装路のコンディション変化やオウトツへの対処が明らかに上等になっていた。
加えてオンロードのクルージングフィールがとても滑らかで心地良い。さらにワインディングロードでは適切な踏ん張り感とわかりやすいステアリング応答性を見せた。最上級グレード+60万円弱でこの走りを手に入れることができるのだから、フォレスターを検討する方には迷わずお薦めする。
今後はスバル製SUVのパワートレーンにも電動化を含めた次世代の“力強さ”を期待したい。
WRX S4とレヴォーグでSTIスポーツの本領を知る
「STIスポーツ」の本領は今、おそらくこの2台で確かめるべきだろう。セダンとワゴンの関係にあり、スバルの乗用車イメージを引き上げた世紀のレガシィに相当する2台、WRX S4とレヴォーグである。いずれも渋滞時ハンズオフアシストなど高度化されたアイサイトXを積む最上級グレードのSTIスポーツR EXだ。
STIスポーツ化の手法も共通する。パワートレーンはKA24型2.4L水平対向4気筒ターボ+大容量CVT(スバルパフォーマンストランスミッション)+VTD‐AWDでそれ自体には大きく手を加えない主義であることは前述したとおり。ちなみにレヴォーグにはCB18(+リニアトロニック)を積んだ「STIスポーツ」の設定もある。
注目すべきはやはり足まわりだ。可変ダンピングのZF製電子制御ダンパーを搭載し、ドライブモードセレクトを専用設計とすることで4+1(プライベート設定)の走りのキャラクターを持つに至った。最新の高性能モデルはもはや可変ダンパーなしには成立し得ないというのが持論だから、この点は試乗でもじっくり確認しておきたいところ。
両者に共通する印象も先に記しておこう。まずは今どきのクルマでは嬉しくなるほど「低い」着座位置に懐かしささえ覚えた。WRXに至ってはオプションのレカロシートが奢られていたから余計である。最新のインフォテインメントシステムを搭載する大型のセンターディスプレイを採用しているが、コクピット全体の雰囲気はノスタルジックで、それもまた懐かしいと思う要因だろう。
ゆっくり街中を流すような場面における乗り心地の良さも両STIスポーツの魅力だろう。車格を超えたライドコンフォートを持っている。スバルのコンパクトミドルに500万円級というのは高く感じるかもしれないが、その乗り味そのものは完全にプライスマッチするものだった。
軽快に走るWRX S4と上質さを高めたレヴォーグ
セダンとワゴンゆえ、車体剛性や重量、前後重量配分などが違う。乗り味の差はそこでつくわけだが、パワートレーンのフィールそのものはやはり同じというべきだ。全体的に言ってボディ&シャシが勝っていることと、そもそもスペック的に見れば先代のS4に比べて抑えてあることから、「速さ」はそこそこ。有り体に言って、STIをイメージするような過激さは希薄である。
逆にいうと積極的に踏んでいける。とくにアクセルペダルを大きく踏みこんだり、またパワートレーンモードをスポーツもしくはスポーツ#にしたりすれば、この大容量CVTはステップATのように振る舞って、驚くほどリズミカルな加速を見せてくれる。自慢のVTD‐AWDと相まり、コーナリングでは驚くほど曲がってくれるから、ついつい走行ペースが上がってしまうというわけだ。
この完成度の高さを知ると、やみくもにエンジン出力を上げてしまうのもどうかと思ってしまうし、それこそ本格STIモデルの出番というものだろう。いずれにしても何かが突出したり個性的になったりするようなスペシャルモデルではなく、車両全体のバランスを考慮してWRXなりレヴォーグなりの上級モデルを目指したというのが、これらSTIスポーツグレードの本質だと言っていい。
では、セダンとワゴンとの走りの違いは何か。それはボディ形状の違いに起因するものだった。ドライバーズシートに腰を下ろした瞬間の印象、ノスタルジックな思いに整合するドライブフィールを示したのはもちろんWRXの方だった。
がむしゃらに走ってもへこたれない、否、そもそもそんな気にさせるボディの強さと、フロントがややヘビーな重量バランスが、より軽快なドライブフィールを演出していた。回頭性もいっそうシャープで、ハンドリングの正確さも際立つ。スポーツ#にしておけば、変速もDCT並みに素早く、持ち前の4WD制御と相まって、程良いパワースペックがかえって嬉しくなるほどワインディングロードに似合っている。
対するレヴォーグはすべてにおいて懐深くマイルドに感じた。上質さの表現力という点ではこちらの方が表現が豊かだ︒オトナのスポーツワゴンとでも言おうか。目を三角にして走らせても応えてくれるけれど、そこにこのモデルの本分はないと思う。
日常使いに余裕を与えてくれるような高性能。スバル車の魅力を引き上げるモデルである「STIスポーツ」らしさとして目指したのは、レヴォーグのような仕立てではなかったか。(文:西川 淳/写真:永元秀和)
レヴォーグのハイパフォーマンス版「STI Sport♯(シャープ)」が登場
レヴォーグの特別仕様車「STI Sport♯(シャープ)」が1月13日に発表された。STI Sport R EXをベースにブラック塗装のフロントグリルやドアミラーを採用、内装もウルトラスエードのレカロシートやルーフトリムなどをブラックで統一。足まわりは19インチのBBS製鍛造アルミホイールとミシュラン製ハイパフォーマンスタイヤを装着するほか、新開発のSTI製フレキシブルドロータワーバーやフレキシブルドロースティフナー、トランスミッション用のオイルクーラーなどでスポーツワゴンとしての性能をさらに高めたモデルとなる。500台限定の販売で、価格は576万4000円。
スバル フォレスター STI Sport主要諸元
●全長×全幅×全高:4640×1815×1715mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1570kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:1795cc
●最高出力:130kW(177ps)/5200-5600rpm
●最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・63L
●WLTCモード燃費:13.6km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):363万円
スバル WRX S4 STI Sport R EX主要諸元
●全長×全幅×全高:4670×1825×1465mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:2387cc
●最高出力:202kW(275ps)/5600rpm
●最大トルク:375Nm/2000-4800rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTCモード燃費:10.8km/L
●タイヤサイズ:245/45R18
●車両価格(税込):482万9000円
スバル レヴォーグ STI Sport R EX主要諸元
●全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:2387cc
●最高出力:202kW(275ps)/5600rpm
●最大トルク:375Nm/2000-4800rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTCモード燃費:11.0km/L
●タイヤサイズ:225/45R18
●車両価格(税込):482万9000円
[ アルバム : レヴォーグ STI Sport R EX × WRX S4 STI Sport R EX × フォレスターSTI Sport 「スバル ST I Sportの真価を確認」 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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