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実は「史上唯一」なV12ターボ+MT アストン マーティン・ヴァラーに試乗 至福の境地へ!

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実は「史上唯一」なV12ターボ+MT アストン マーティン・ヴァラーに試乗 至福の境地へ!

V12ツインターボ+MTのロードカーは史上唯一

自動車史を振り返ると、V型12気筒ツインターボエンジンにマニュアル・トランスミッションを組み合わせたロードカーは、1つしか存在しないことがわかる。果たして、それが今回試乗したアストン マーティンだ。

【画像】史上唯一なV12ターボ+MT ヴァラー アストンの限定モデル SP3 デイトナとカウンタックも 全161枚

生産数は110台の限定。超希少といえ、路上で目撃できるのは、真夏に雪が降るくらいの頻度かもしれない。だとしても、100万ポンド(約2億200万円)の英国価格へ納得するのは、一般的な市民には難しい。

実のところ、アストン マーティンDBSの方が速い。専用のカーボンファイバー製ボディやパワートレイン以上に、裕福な層でも所有している人が限られるという、特権のお値段といえる。

オマージュしたといわれるのは、1970年のDBS V8がベースで、1977年と1979年のル・マン24時間レースを戦ったレーシングカー。タイヤやブレーキ、トランスミッションなどを激しく傷めることから、マンチャー(ムシャムシャ食べる人)と呼ばれた。

ヴァラーの構造を見ていくと、フロントピラーから後ろは、基本的にヴァンテージ V8と同一。だがリアアクスルの間には、ヴァンテージ V12用の6速MTと、電子制御されないリミテッドスリップ・デフが搭載されている。

フロント側に載るのは、DBSの最終仕様として開発された、770用のV12エンジン。ただし6速MTの許容力に合わせ、最高出力は770psから715psへ、最大トルクは91.7kg-mから76.5kg-mへ、デチューンされている。

乗り心地はしなやか 極上の音響体験

主任技術者を務めたサイモン・ニュートン氏は、もう少しパワーは上げられたものの、シフトフィールは犠牲になっただろうと説明する。確かに、ヴァンテージ V12Sに載っていた7速MTの感触は、褒められるものとはいえなかった。

インテリアは、メルセデス・ベンツ由来のモニターとスイッチ類が用いられた、1世代前のアストン マーティン。内装のコーディネートは無限と表現したくなるほど多様だから、お好みで素晴らしい雰囲気に仕立てることはできる。

試乗車は、落ち着いた色の化粧トリムとツイード生地でコーディネート。印象的な美しさだった。

アルミホイールは、ヴァルキリーが履くものと似ているが、センターロックではない。5本のボルトで固定する。

V12エンジンは、聞き慣れた重低音を控えめに放って目覚める。走り出せば、極上の音響体験が待っている。

クラッチペダルはかなり重いのではと想像したが、非常に軽かった。ブレーキペダルやアクセルペダル、ステアリングホイールの重みづけと完全に調和している。

公道前提で、乗り心地はしなやか。変速も滑らかだ。ちなみに、サーキット前提の兄弟モデル、アストン マーティン・ヴァリアントも、38台の限定で登場する。

思いのままの操縦性 至福の境地に浸れる

シャシーは素晴らしい。ダンパーをソフト側に設定すれば、乗り心地は最高。もう少し上下動を抑えたい場合は、スポーツ・モードが丁度いい。ピタリとボディは落ち着く。

フロントノーズは重い。リミテッドスリップ・デフとの組み合わせで、アンダーステア傾向かと思いきや、まったく違う。ステアリングの反応は至って高精度。思いのままのラインを辿っていける。

フロントエンジン・リアドライブの高出力モデルとしては例外的に、見事なトラクションで脱出加速も鋭い。トランスアクスルのレイアウトと、しなやかなサスペンションの効果だろう。

6速MTも出色。スムーズにシフトレバーは動き、手のひらへ心地良い機械的な手応えが伝わる。ゲートも正確に選べる。唯一、2速から3速へシフトアップする時は、少し慎重に操作した方が良いようだが。

公道での運転体験は、筆者が期待していた通り。流暢なシャシーに、V12エンジンのパワーとサウンドが融合し、至福の境地に浸れる。

それでも、重箱の隅をつつくのが自動車ジャーナリストだとすれば、いくつか指摘できる部分はある。自分が開発チームの一員だとしたら、さらに踏み込んだセットアップを主張したかもしれない。

運転の楽しさを追求した特別なアストン

エンジンやシャシーのマイルドさを抑え、ステアリングとブレーキのアシストを減らし、クラッチとアクセルへ調整を加え、DBS 770級のレスポンスを得ても良かった。ファイナルレシオは、もっとショートで良さそうだ。

パワートレインのマッピングにも、手を加えたくなる。ノーマル、スポーツ、トラック(サーキット)の各モードには、今以上に大きな変化を与えるだろう。サウンドは、さらにドラマチックにしたいところ。

筆者は少し面倒くさがり屋だから、変速時のレブマッチング機能も欲しい。V12ツインターボエンジンのレスポンスは、自然吸気ユニットより予想しにくい。ヒール&トウでのシフトダウンが、うまく決まらない場面もありそうだ。

とはいえ、強いていえば、という程度。ハイスピードを求めたのではなく、運転の楽しさを追求した特別なアストン マーティンという仕上がりは、とびきり魅力的。ユニークな成り立ち通り、心の底から楽しめる。

もっと身近な価格で、似たようなモデルは作れないのだろうか。ペダルは、もちろん3枚欲しい。

アストン マーティン・ヴァラー(欧州仕様)のスペック

英国価格:100万ポンド(約2億200万円)
全長:4599mm
全幅:1987mm
全高:1274mm
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1780kg
パワートレイン:V型12気筒5204cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:715ps
最大トルク:76.5kg-m
ギアボックス:6速マニュアル(後輪駆動)

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