「魅惑のSUV」はゲレンデ以外にも豊富だぞ!
2024年11月号の特集はSUV。もはや自動車界のデフォルト的存在だ。車高が低いとショッピングリストに入れてもらえないと感じたメーカーは多くのモデルを投入した。では、そもそも“SUV”とは何者なのか?
【九島辰也のカーガイ探訪記】21世紀名車を選ぶ楽しい時間。視点を変えると候補が変わる(2024年6月号)
日本で最初に雑誌名に“SUV”という文字を入れた立場から説明したいと思う。2000年当時の話だ。日本では背の高いクルマをRVと呼ぶ傾向が強かった。そのため、なかなか理解してもらえなかったのを覚えている。
「サブって何?」なんて突っ込みはしょっちゅうだった。
SUVはご存じの方も多いと思うが、“スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル”の略である。ベースとなるのはピックアップトラックで、ベッド(荷台)にセカンドシートを付けてキャノピーで覆ったのがSUVだ。象徴的なのは1966年のフォード・ブロンコや1969年デビューのシボレー・ブレーザーあたり。その後ダッジも追従する。
出来上がった理由はマーケティング的見地から。低コストで生産性の高いピックアップトラックをより広く売るために考え出された。セカンドシートを付けることで、ファミリーでレジャーに使ってもらう目論みだ。このクルマにスポーツ用品をたくさん積んで遊びに出掛けましょう!みたいな主旨である。
で、それが瞬く間に大ヒット。アメリカではピックアップトラックのような商用車は税金と保険が安いから多くの若者に受け入れられた。ヒットするにはそれなりの仕掛けがある。
そんなSUVの歴史の中で個人的に一番好きなのはジープ・ワゴニアだ。現在その名が復活したので、そちらを思い浮かべる人もいるだろう。が、ここでいいたいのは1963年にリリースされた初代。前年デビューしたグラディエーターにセカンドシートを取り付けキャビンとして覆ったのが、成り立ちとなる。
このクルマのすごいところは2つある。まずはジープとしてのスタビリティを持っていること。当然ラングラーほどではないが、センターデフロック機構で悪路の走破を担保する。それに3つのアングルも深いから少しぐらいのギャップは気にしない。
もひとつは高級SUVであること。“高級”の定義をどこにするかにもよるが、アメリカ製SUVの歴史を掘る限りこのクルマの高級度は高い。その理由の第1はボディにウッドパネルが貼ってあること。当時のアメリカ車は高級であることをツートンやスリートーンで塗り分けることで表していた。その意味ではウッドパネルは最強なのだ。そして中に入ると上品なレザーとファブリックのコンビシートと毛先の長いカーペットに驚かされる。初期モデルはルームランプやトリムの装飾もかなり凝っていた。
デザインしたのは自動車専門ではない有名な工業デザイナー、ブルックス・スティーブンス氏。ミッドセンチュリーの家具や家電をデザインしながらグラフィックデザイナーとしても活動していた。ミラービールなんかも彼の作品。きっとそんな背景も関係しているのだろう。日本でもかつてブームがあった。多くの若手ファッションデザイナーやグラフィックデザイナーたちが乗っていた。ちなみに、そんなブームを仕掛けたのは私。専門誌からファッション誌まで広いカテゴリーで取材し、ブームが起きた。テレビCMにも使われたくらい。
どうです、ゲレンデ以外にも魅力的なSUVあるでしょ。みなさんもSUV沼を掘ってみては!
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