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ロータス・エリート 初代オーナーは本田宗一郎氏 レストアを終え日本へ 後編

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ロータス・エリート 初代オーナーは本田宗一郎氏 レストアを終え日本へ 後編

あえて残した本田博俊氏のクラッシュ痕

本田宗一郎氏が初代オーナーだった、ロータス・エリート・タイプ14のレストアを率いたデリル・ブシェル氏が説明する。「過去に施されていた修復部分は、すべて元に戻す必要がありました」

【画像】ロータス・エリート・タイプ14同時期の初代エランと2代目エリートも 全55枚

「届いた時点で、ボディシェルは左右が非対称。新品のボディシェルを買うことはできますが、クルマが刻んできた貴重な過去はすべて失われます」。ボディにサンダーがかけられると、ホワイトとブラック、レッドの塗装が順に姿を見せた。

宗一郎の長男、本田博俊氏が起こした鈴鹿サーキットでの横転事故の痕跡も残っていた。「場所によっては、想像以上の処理が必要なことも。ルーフの内部構造は、大きな損傷を受けていました」

今でも良く観察すると、磨き込まれたウインドウフレームの運転席側に、舗装で削られた傷が残っている。クルマの記憶として、ブシェルがあえて残したという。

「クルマの血統を残すことが重要だと考えました。オーナーの馬場さんからの依頼で、2か所、そのままの塗装の場所もあります。トランクリッドとホイールアーチの内側。現在までの経歴を確かめることができます」

「馬場さんは、残したい場所をマーカーで囲みました。実際は、その外側に新しい塗装面を仕上げているので、マーカーの線も残っているんです」

ロータス・エリートは、工場指定のホワイトではなく、ホンダのグランプリ・ホワイトに塗られた。40年ほどガレージで眠っていたエリートのお色直しの塗装色として、賢明な選択だと思う。

日本と英国の共同で進められたレストア

現オーナーの馬場ナオキ氏が友人とレストア状況を見に英国へ来た時、歴史を裏付ける貴重な情報が発見される。リフトアップされたボディシェルに、59年前に日本へ上陸した時にサブフレームへ刻印された番号が残っていた。新車時の塗装部分に。

本田一家から直接譲ってもらったクルマなだけに過去への疑問はなかったが、その番号はエリートの血統を立証する重要なものだった。ブシェルが興奮気味に振り返る。「2人が見つけたんですよ。幸せそうに話す彼らと一緒で、素晴らしい時間でした」

メカニズムのセッテイングは、英国ロールソン・レーシング社のガイ・シェパード氏へ託された。キャブレターの調整を終えた彼が説明する。「クルマには、大きく現像された写真が付いてきました。燃料タンクもデフも、標準より大きいとすぐにわかりました」

「ワイヤーホイールは錆びていました。通常よりサイズが大きく、ジャガーEタイプか何かから流用されたものでしょう」

「トランスミッションはZF社製です。ですが、シフトレーバー用の穴が正しい場所に開いていないとわかったのは、シェルの塗装が終わってから。MGAのトランスミッションが載っていたようですね」

燃料タンクは、一般的なアルミに置き換えるのではなく、元のタンクと同じスチールで再製作。サスペンションまわりは慎重にリビルドされた。ヒーターマトリックスなどの装備は、日本でレストアされていたようだ。

スーパー95仕様にチューニング

「美しく仕上げられたボディシェルへメカニズムを組み込む作業は、素晴らしい時間です。コンポーネントをオーバーホールした自分たちは、まるで新しいクルマを作っているようでした」

エンジンのリビルドは、英国のピーコック・エンジニアリング社が担当した。オールアルミ製のSOHC直列4気筒1216ccコベントリー・クライマックスFWEユニットを、ファクトリーレーサーのスーパー95仕様にチューニングしてある。

高圧縮比化とツインSUキャブレターによって、最高出力はノーマルから20psほど高い、96psを獲得。ロータスによるスペシャル・エクイップメント仕様でも、86psだった。

見事に完成したグランプリ・ホワイトのロータス・エリートが、40年ぶりに太陽の日差しを浴びる。美しいボディラインが、眩しく光を反射する。ツインのテールパイプから、荒々しいエグゾーストノートが響く。

活気に溢れたサウンドが、コクピットを充満する。アクセルペダルの小さな動きに、エンジンは鋭い回転数の変化で応えてくれる。

ステアリングホイールは程よく重くタイト。下ろしたてのタイヤのゴムが生む抵抗を感じる。すべてのコンポーネントが真新しい。スプリングにも張りがあり、車高はピンとしている。

この取材から数日後、真っ白なロータス・エリートは日本へ出荷される段取りにある。この記事をお読みいただいている頃には、日本の港へ着いているかもしれない。

見事な復活を遂げ60年ぶりの再開

取材したテストコースには、騒音規制が掛けられていた。貴重な歴史を持つ英国製スポーツカーを、限界領域まで攻め込むことは許されていない。今後の長旅を考えれば、むしろ好都合な条件だったかもしれない。

なにしろ、このロータス・エリートのミニマリストさを最初に味わったのは本田宗一郎氏。しかもサスペンションは、手強いチャップマン・ストラットと呼ばれる独立懸架式を採用している。

限られた速度域であっても、フェザー級と呼びたいほど軽いエリートの俊敏性を味わえる。FRPモノコックは剛性感が高く、ZF社製の4速MTはサクサクと軽快に次のギアを選べる。

「興味深いアイデアが、サスペンションに展開されていますよね。素晴らしいエンジンとシャシーは忘れられません。少しうるさかったとも思いますが」。と博俊が振り返る。

ブシェルたちのチームが成し遂げたレストアも素晴らしい。宗一郎と博俊が残した過去も刻まれている。ロータス・エリート・タイプ14に施された丁寧なレストア、とひとことで片付けられる内容ではないだろう。

このレストアの最終的な目的は、博俊を笑顔にすることでもある。ロータス・エリートが日本に戻ると、79歳の彼と再開する予定だという。50年以上ぶりに。

少し興奮気味に博俊が話してくれた。「とても美しく仕上がったようですね。かつて事故を起こした時のように、ガレージへこもりっきりになるかもしれません。それが少し心配です」

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みんなのコメント

4件
  • 無限の博俊さんお元気そうでナニよりです。
    再び日本に帰ってきたエリートも、いずれ鈴鹿等の
    イベントで拝見できる日が来るかもしれませんね。
  • 翻訳ソフトで訳したまま?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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