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ソフトトップ・フェラーリの誘惑 ローマ・スパイダー 275 GTS 比較試乗(1) 印象的な60年の進化

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ソフトトップ・フェラーリの誘惑 ローマ・スパイダー 275 GTS 比較試乗(1) 印象的な60年の進化

印象的なほどの進化を遂げたローマ・スパイダー

「うわ、ちょっとまずいな」。フェラーリ275 GTSの1速へシフトレバーを傾け、クラッチペダルを緩めても、びくともしない。アクセルペダルを軽く倒しつつ、思わずこんな言葉がこぼれた。

【画像】ソフトトップ・フェラーリ ローマ・スパイダーと275 GTS ポルトフィーノとデイトナも 全119枚

何度試しても駄目。カッコいいボラーニ社製のワイヤーホイールは、地面へ張り付いたように転がらない。爽快なクルージングを想像していたのに。

275 GTSの所有者へ電話をかけると、すぐに原因は突き止められた。リアブレーキのパッドは温まると膨張し、ディスクをロックしがちらしい。

暫く待つと温度が下がり、時価150万ポンド(約2億8800万円)と見積もられる純白のフェラーリは、無事に発進してくれた。胸をなでおろしたのは、いうまでもない。

駐車場で一緒に待っていた、最新のフェラーリ・ローマ・スパイダーなら、こんなドッキリとは無縁。マラネロ生まれの、フロントエンジン・コンバーチブルの新旧を比較するために、英国編集部が用意した1台だ。

この2台には、丁度60年という時間の隔たりがある。当時の275 GTSがそうだったように、ローマ・スパイダーは、先代に当たるポルトフィーノ Mから印象的なほどの進化を遂げている。スタイリング的にも、技術的にも。

今も現役のポルトフィーノ Mのルーツを遡ると、2008年のカリフォルニアへ辿り着く。リトラクタブル・ハードトップを備えた、コンバーチブルだ。2000年の550 バルケッタ・ピニンファリーナが備えたのは、急な雨に対応するための簡易屋根といえた。

60年前なら衝撃的だった動力性能

ローマ・スパイダーは、ファブリック製のソフトトップを背負う。8層構造で、59km/hまでなら走行中でも開閉可能。13.5秒という早業で、くねくねと巧妙に動き展開される。320km/h近い速度での疾走にも、耐えられる強度があるそうだ。

1969年には、フロントエンジンのコンバーチブル、365 GTS/4「デイトナ」スパイダーが存在していた。280km/hの最高速度をフェラーリは主張したが、そんなスピードでは、閉めたソフトトップは吹き飛ぶのではないだろうか。

AUTOCARでは、既にローマ・スパイダーへ試乗済み。2020年のクーペの後を追うように、2023年から販売が始まっている。英国価格は、21万838ポンド(約4048万円)に設定される。

エンジンはクーペと同じ、3855ccのV型8気筒ツインターボ。8速デュアルクラッチATを介して後輪が駆動される。最高出力は620ps/5750-7500rpmで、0-100km/h加速は3.4秒。こんな動力性能は、60年前なら衝撃的だったに違いない。

先代からひと回り大きくなり、乾燥重量はクーペ比で84kg多い1556kgがうたわれる。ポルトフィーノ Mより、僅かに重い。+2のリアシートを備えることは共通だ。

モータースポーツで培った技術を展開

そのご先祖の275 GTSは、クーペボディのGTBと同時に、1964年のフランス・パリ・モーターショーで発表された。前後に与えられた独立懸架式サスペンションは、リジッドアクスルだった先代の250シリーズからの、技術的な飛躍といえた。

トランスミッションをリアアクスル側へ搭載する、トランスアクスルも公道用フェラーリとしては初採用。前後の重量配分を最適化し、動的能力は大幅に向上していた。

モータースポーツで培った技術が展開された、典型的な例といえる。フロントエンジンのフェラーリ250 LMと250 TRは、ともにトランスアクスル。サスペンションは、独立懸架式だったのだから。

3.3LのV型12気筒エンジンも、多くのレーシングカーで活躍したユニットと共通。技術者のジョアッキーノ・コロンボ氏が設計した、バンク角60度のオールアルミ製ユニットで、複数の排気量で実績を積んでいた。

275では、250の2953ccから3286ccへ拡大。1気筒当たりの容積が273.8ccとなり、275というモデル名に至った。GTSの最高出力は、263ps/7000rpm。GTBより20ps低いが、屋根を開いたおおらかな走りに適していた。

とはいえ60年前の水準では、275 GTSも相当に速かった。最高速度は241km/hとされ、0-100km/h加速は6.5秒と、現代でも見劣りはしない。

軽くないラダーフレーム・シャシーに、スチール製パイプの骨格を持つボディが被さるが、車重は1120kg。ローマ・スパイダーより436kgも軽い。

芸術と表現したい、女性的で魅惑的なボディ

ピニンファリーナ社によるスタイリングは、女性的で魅惑的。シャシーやドライブトレインは、ややずんぐりとしたGTBと共有しつつ、ボディパネルはすべて異なる。

細身のライン構成で、2シーターのスパイダーが形作られている。楕円形のフロントグリルやワイヤーホイールに至るまで、フェラーリらしさもしっかり宿す。芸術と表現しても、過言ではないだろう。

フェラーリのデザイナー、フラビオ・マンゾーニ氏が描き出したローマ・スパイダーの隣に並ぶと、275 GTSには華奢な印象すらある。この60年で、クルマの見た目は大きく変化したようだ。

1960年代のフェラーリは、次々に更新されるハードトップ・モデルと並行して、コンバーチブルを提供していた。330 GTSと365 カリフォルニア、365 GTSへモデルチェンジを重ねる中で、V12エンジンの排気量は4.4Lへ拡大。パワーも上昇していった。

裕福なアメリカ人が収益的に重要視され、豪華さも求められた。そして1969年に、フロントエンジン・フェラーリの金字塔といえる、365 GTS/4「デイトナ」へ到達する。

エンジンは、同じクワッドカムのコロンボ・ユニットで、4.4Lの排気量から329psを発揮。当時のフェラーリは、世界最速の量産オープンカーだと主張した。

その傍らで、フィアットがフェラーリ株の50%を取得。エンツォ・フェラーリ氏は公道用モデルの開発から一線を退き、フロントエンジンからミドシップへの変化が訪れた。

この続きは、フェラーリ・ローマ・スパイダー 275 GTS 比較試乗(2)にて。

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