サファリラリー&ツールドコルス優勝車を展示
世界に名だたる日本のラリースト、つい最近でも全日本ラリー選手権モントレーで2勝目を遂げている新井敏弘選手のトークショーが、22日、長野県山形村のアイシティ21で開催された「I LOVE RALLY フェスタ」にて行なわれました。
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日本人ラリーストとして世界ラリー選手権(WRC)のプロダクションカー部門にてスバル・インプレッサWRX STIで2005年、2007年と二度のチャンピオンに輝き、全日本ラリー選手権チャンピオンにおいても2008年と2014年に栄光を獲得した新井選手。
世界中のラリーを転戦してきた新井選手の実体験を通して語られる内容は重みがあって、終始なごやかな雰囲気でした。
そして、会場内のセンターモールには週末の期間、トヨタのレジェンドカー2台を展示。多くの方々は足を止めて「これが優勝車の実物ですか!?」と身近に存在するホンモノに見入っており、写真を撮る人の姿も目立っていました。
展示されていたのは1985年のサファリ優勝のトヨタ・セリカツインカムターボ(TA64)と1995年にツールドコルス優勝のセリカGT-FOURのワークスカーレプリカ。
1984~1986年の3年連続サファリ・ラリー優勝のセリカツインカムターボは、グループBというバケモノのように性能アップしてきたメーカーのワークスカーがしのぎを削っていた終盤に、WRCで最も過酷な競技ルートであるサファリラリーに君臨し続けていました。
200Km/hオーバーの驚異的なスピードで走り抜けることの多いサファリで、泥沼のようなダート路やホイールを飲み込むほどの穴だらけの路面、場所によってはナイフのような黒曜石の転がっている路面が続く。そんな荒れた路面のラリーで3連覇したのは、紛れもないタフなマシンであることの証といえるでしょう。
一方でターマック路面の難所ラリーとして有名なツールドコルスで優勝を遂げたST205セリカGT-FOUR。ヨーロッパで歴史のあるラリーイベントの中でもターマックでコーナーの多い特徴が強く、海際の断崖絶壁のルートであれ中央山岳部の峠ルートであれ、一歩間違えれば死の危険すらもあるラリーです。そこで優勝を遂げるには何よりも、死を賭すことなくスピードを競い合える高性能と操作における信頼性の高さにのしかかってきます。加減速、ハンドリング、ブレーキング、足回り、シャシー、トータルに高度なバランス性能の極みが、展示されているST205セリカには漂っているようでもありました。
世界の公道から語られるマシンと人間とラリーと
さて、子供の頃に父の運転する三菱のクルマで氷上ドライブを楽しんでいた時、スピンを体験した新井選手。スピンしてしまった後に悔しげだったかどうか「やっぱりプロには敵わない」という父の言葉が忘れられずに育ったという、まさにプロ中のプロです。
「サファリラリーは、状況を読み取る人の力が勝負に影響しますね。もちろんマシンの信頼性は重要ですが、例えばヘリコプターを使って無線ですぐ上空から、あと何キロ先に地元のクルマがいるから注意とか、ちょい先のサバンナのコース前方に動物の群れが見られると、ヘリコプターが下がってきて追い払ったり。クルマの方は240km/hで巡行しているとヘリコプターを追い越してしまうことがあるので、こういった情報が重要なサファリラリーでは、上空から『速すぎる』と無線で指示が飛んできたりもします」。
続いて「ツールドコルスは、ヨーロッパ中から観客が押し寄せてくる人気のターマックラリー。崖がありバンピーな舗装路があるのでタイムアタック中に天候が変わって雨が降ると怖いですね。SSスタート前に天候が悪いと待たされることもあるのですが、山岳部はスタート地点の下が晴れていても上の方は雨だったりするので、スリックタイヤだと時速40キロでもハイドロ現象で滑ってしまうこともある。野ブタや家畜の飼い放しもあり出くわすと怖いですね。ヘンリ・トイボネンが亡くなってグループBが終わったコースでもそのまま残されてます。普段のドライブでも自己責任でドライブを楽しんでますので、日本のように事故の起こったコーナーがすぐにガードレールで景観が壊されるようなことはありません」。
「クルマが好きでドライブを楽しんでいる若い人たちが、モータースポーツラリーのビギナーとしてコストも含めて手軽に加わることができ、ステップアップがしやすいように、日本の各競技シリーズのレベルがうまくピラミッド型に形成され、世界選手権レベルへと挑戦し育って行きやすい環境を、日本で作ってゆくこと。それがこれからの私たちにとっての試練かなと思っています」。
数々のラリー現場を体験している新井選手が、実績のあるレジェンドマシンを目の前にして語ってくれた素晴らしさ。日本ラリー界の行く末に願いを込めるような話題も出ていました。
折しも現地山形村の名物である蕎麦がお隣のイベントで振舞われており、世界各国の地域の公道を競技ルートとして地元の人たちの応援を背に走るラリーならではの地元密着シーンがここにも見られました。唐沢川の水車で石臼を動かし地元産の蕎麦の実を挽き、挽きたての蕎麦粉を美味しい地元の水で打って作られた「やまっちそば」には、新井選手も舌鼓していました。
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