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182億円 史上最高額 究極の1台  メルセデス・ベンツ300SLRウーレンハウト・クーペ、どんなクルマ?

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182億円 史上最高額 究極の1台  メルセデス・ベンツ300SLRウーレンハウト・クーペ、どんなクルマ?

昭和の大スターが愛したカモメの翼

2022年5月、クラシック・メルセデスの名前が突如として世界中を駆け抜けた。

【画像】300SLRと300SL、どう違う? 影響あたえたSLSとも比較【詳細】 全98枚

300SLRウーレンハウト・クーペである。

長年メルセデス・ベンツ・クラシックの非公開コレクションとしてミュージアムに所蔵されていたこのクルマが、今月のはじめ秘密裏に開催されたオークションにおいて自動車の世界最高落札額の記録を塗り替えた。その額、約182億円。

はたして300SLRウーレンハウト・クーペとはどのようなクルマなのか?

究極の1台を知るため、1950年代のスポーツカー・シーンを席巻したメルセデス・ベンツ300SLシリーズ全体を俯瞰してみよう。

1950年代に誕生したメルセデス・ベンツ300SLシリーズには市販スポーツカーとレーシングカーが存在し、双方にオープンとクーペのモデルがあった。

なかでもクーペモデルは、開け放ったドアの形状が羽ばたくカモメの羽のように見えることから「ガルウィング」という愛称が与えられていた。

市販型の300SLガルウィングはわが国では自動車ファンのみならず広くその名を知られていた。

その理由はプロレスラーの力道山が所有しており、彼の愛車に惚れ込んだ昭和の大スター石原裕次郎が生涯にわたって所有し、愛情を注いだ1台だったからである。

300SLR、大いなる勝利と大惨事

メルセデス・ベンツ300SLシリーズの中でも、シリーズ末期の1954~1955年にかけて、僅か9台だけ生産された300SLR。

車名の末尾に追加されたRのアルファベットはレンシュポルトヴァーゲン(レーシングカー)であることを表している。

レーシングの世界では珍しくないことだが、300SLRは市販型の300SLとは異なる構造を与えられていた。

鋼管フレームは専用であり、ボディの素材はアルミニウムからマグネシウムに置き換えられていた。

またエンジンは直列6気筒ではなくグランプリカー由来の直列8気筒を搭載。ZF製の5段ギアボックスはリア側にマウントされていた。

300SLRがレースで挙げた最高の勝利は1955年のミッレ・ミリアの優勝である。

スターリング・モスとイギリス人のモータースポーツジャーナリスト、デニス・ジェンキンソンのコンビが記録的なタイムでイタリアを代表する長距離レースに勝利したのだ。

一方300SLRは1955年のル・マン24時間レースで起きた大惨事のきっかけになった悲劇の1台としても知られている。

事故の後も、メルセデス陣営が撤退を決めるまで300SLRの1台はトップを独走していたのだから、その速さは絶対的なものだったのである。

エンジニアの名を冠した幻のレーサー

9台が作られた300SLRの中で7番目と8番目に製作された個体には特徴的な「ガルウィングドア」を与えられていた。

メキシコで開催されるカレラ・パナメリカーナのために作られた2台こそ「300SLRウーレンハウト・クーペ」である。

ルドルフ・ウーレンハウト(1906~1989年)は300SLシリーズの開発を指揮したメルセデスのチーフエンジニアである。

完璧主義として知られた彼は、ドライビングの腕も超一流であり、ニュルブルクリンクでは当時のトップドライバーに劣らないラップタイムを記録することができたという。

メルセデスのレース活動からの撤退を受け活躍の場がなくなってしまった300SLRクーペ(シャシーナンバー0007/55)をウーレンハウトは普段のアシとして利用していた。

これが「ウーレンハウト・クーペ」というニックネームが後に付けられた理由なのである。

1950年代のメルセデスを象徴する300SLシリーズと、その中にあって究極の進化型レーシングカーであった300SLR。

その中でもさらに2台だけが作られ、長年メルセデスが所有し続けてきた300SLRウーレンハウト・クーペ。

歴史的な経緯を考えれば、自動車史上最高の落札額は当然なのかもしれない。

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