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【自国だけではない】ICE新車販売禁止、世界に与える影響は 反グローバル化も

掲載 更新 11
【自国だけではない】ICE新車販売禁止、世界に与える影響は 反グローバル化も

生産国にも大きな影響が

text:AUTOCAR UK編集部

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translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

英国政府が2030年にガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止し、2035年にはハイブリッド車の販売も禁止するという決定は多くの人に歓迎されているが、その影響は国境を大きく超えている。グローバルな製造ネットワークにも大きな影響を与え、今日売られている量産モデルに別れを告げることになるかもしれない。

英国でのバッテリー式電気自動車(BEV)の販売台数は2020年には前年比185.9%増となり、市場シェアは6.6%に達するが、大半はいまだにガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)など内燃機関(ICE)を搭載している。

世界のほぼ全大陸26か国が英国に自動車を供給しており、その多くはICE車しか製造していない。2019年のトップ5はチェコ共和国、トルコ、南アフリカ、ポーランド、イタリアとなっている。

チェコ共和国では国内総生産の9%を自動車産業が占めており、2019年には15万4468台のガソリン車とディーゼル車を英国に輸出した。昨年からは、ヒュンダイ・コナ・エレクトリックとスコダ・シティゴiVに加え、スコダ・スペルブとオクタヴィアのPHEV版が登場し、新時代に突入した。

チェコで製造されるスコダ・エンヤクiVは今年発売予定。ICEを搭載したカロックとコディアックの間に新しい電動SUVが登場するという噂もあるが、今年末に発売予定の新型ファビアは電動化されていない。

チェコ共和国の自動車工業会のヴォイテック・セヴェリンは、次のように述べている。

「わたし達はすでに数年前から自動車部門の変革に向けて準備を進めてきました。自動車メーカーはEUの規制の圧力にさらされており、今後のトレンドに向けて十分な準備をしています。2020年には、PHEVを含む複数のBEVを導入しており、ヒュンダイ、スコダ、トヨタの3社は、今後数年で他の多くの低排出ガスモデルを展開していくでしょう」

「過去1年間の市場の発展は、多くの国で消費者が低排出ガス車を採用する意欲を示しており、自動車メーカーは、英国だけでなく世界中の消費者の期待と同様に、気候目標を達成するために最善を尽くすでしょう」

同一ラインでICEもEVも作る

自動車製造戦略の変更を余儀なくされているのはチェコだけではない。南アフリカではBEVを全く生産しておらず、ハイブリッド車はメルセデス・ベンツCクラスのみである。

南アフリカは、2019年に10万1401台の自動車を英国に輸出した。その中には、BMW X3やフォルクスワーゲン・ポロなど売れ行きのモデルに加え、フォード・レンジャーやトヨタ・ハイラックスなどの人気ピックアップ車も含まれている。

BMWは現在、X3のPHEVバージョンを生産するため、現地の工場で技術的な問題を解決しようとしているとコメントしているが、電動のiX3の製造は中国で行われているため、南アフリカで生産する可能性は低いと思われる。将来的には英国を輸出先リストから外す可能性がある。

BMWの多くの工場では、複数のドライブトレインを生産する体制に移行している。同社のグローバル生産責任者であるミラン・ネデリコビッチは、AUTOCARに対し「わたし達は、内燃機関車と電気駆動系の両モデルを単一ラインで生産し、顧客の要求に柔軟に対応することができます」と語った。

同氏は、2023年までに展開する25の電動モデルのうち半数を完全電動化するという戦略を進めるBMWにとって、これは重要な成功要因であると説明した。

しかし、BMWは内燃機関の禁止よりも、EVへの移行に向けたインセンティブを望んでいるという。

EVは先進国、ICEは発展途上国向け?

フォルクスワーゲンはすでに、ドイツにある116年の歴史を持つツヴィッカウ工場をEV生産に切り替えている。今後数年間で、フォルクスワーゲン・グループはMEBプラットフォームでEVを生産する工場を35か所に増やす。しかし、2019年に3万6000台以上のポロを英国に輸出した南アフリカでは、そうはいかないだろう。

フォルクスワーゲンは、英国やその他の市場向けにポロのBEV版を製造するのは非常に難しいだろうと語った。その代わり、アフリカなどの市場に向けてのみICEのポロを生産すると述べている。

アフリカ自動車工業会のデービッド・コフィー会長によれば、アフリカ大陸での新車販売台数は現在の年間110万台から2035年には500万台以上に増加する可能性があり、そのほとんどは依然としてICE車になるという。

南アフリカのイースト・ロンドン工場で英国向けにCクラスを生産しているメルセデス・ベンツでは、世界市場の需要に対応できる柔軟性が鍵を握っている。

メルセデスは、2022年までに高級セダン「EQS」など6台のBEVを販売する計画だ。EQSはドイツのシンデルフィンゲンにある新工場「ファクトリー56」で生産される予定だが、この工場は世界中の生産施設の見本となり、同じラインであらゆるパワートレインを生産することができる。しかし、南アフリカの工場では、この青写真を採用するために多額の投資が必要となる。

メルセデス・ベンツの生産・サプライチェーン担当役員であるイェルク・ブルツァーは次のように述べている。

「メルセデス・ベンツの生産ネットワークは、グローバルでデジタルかつ柔軟性に富み、今後のEV攻勢に備えています。2022年までに6台の電動モデルを発売するというのは、世界中のメルセデス・ベンツの生産拠点の強さと能力を裏付けるものです」

反グローバル化の流れ

フォードは今年、初のBEVモデルであるSUVのマスタング・マッハEを英国に導入する予定だ。しかし、今後の戦略を変更しなければならないメーカーでもあり、英国で購入できるモデルに影響を与える可能性がある。

フォードの広報担当者によると、ピックアップトラックのレンジャーは現在南アフリカから供給されているが、電動化されることはないという。F-150のEVバージョンが今年米国で生産される予定だが、英国のレンジャーもF-150に置き換わるのだろうか。

すでに各メーカーが世界的な生産ネットワークやモデル戦略を根本的に変えているため、英国ではポロやレンジャーのようなモデルに終止符が打たれるのかもしれない。

パワートレインに関する法規制の影響もあって、特定の市場に対応するために生産をローカル化する企業が増えるかもしれない。英国と欧州を離れてアジアに集中するという決断をした三菱も1つの例である。

これまで長年にわたりグローバル化が進んできた自動車業界にとって、これは逆転現象のようにも見える。だが、輸送に起因する膨大なCO2排出量の削減など、メリットも多いだろう。

英国は世界の自動車生産のほんの一部に過ぎないが、ICEの新車販売の販売を禁止する決定が世界中に影響を与えることは明らかである。

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みんなのコメント

11件
  • そんな短期間でBEVに移行できるかあやしいもんだ。
  • HVも販売禁止ってどう考えても日本車潰しだね!
    EVのバッテリー問題(生産時のCO2とリサイクル)が、まったく解決していないのに、どんどん突き進むのは、ディーゼルゲート以降、ナンとか土俵をひっくり返して、主導権を握ろうと言う動きだよね。
    オマケに欧州で売れなくなったディーゼル車を日本で販売するのはモラルとしてどうなの?
    まぁ買う方にも問題ありか‥
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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