この記事をまとめると
■ヒットした車種の名前を使用したにも関わらず販売がイマイチで終了したモデルたちを紹介
こんな商品ホンダじゃなきゃ出せんだろ! ノリと勢いが詰まった「N-BOXスラッシュ」みたいなクルマがいまこそ欲しい!!
■派生車たちは個性的な装備を売りとしていたがユーザーにあまり響かなかった
■ビッグネームを用いた派生車は名前ありきの商品力という諸刃の剣的な側面を持っている
業界を彩った派生車たちを振り返る
クルマの車名には、クラウンクロスオーバー、ヤリスクロス、デリカミニ、レヴォーグレイバックのように、ふたつの名称を合体させたパターンがある。事情はさまざまだ。クラウンは2021年の売れ行きが1990年の約10%まで下がり、車種の存続を賭けて、4車種をそろえるシリーズとした。そのためにクラウンのあとに、クロスオーバーやスポーツといった名称が加わる。
ヤリスクロスもヤリスとは別のクルマだが、クラウンと同様のヤリスシリーズに位置付けた。デリカミニはeKクロススペースの改良版だが、ユーザーから「表情が怖い」と指摘されたフロントマスクを刷新して、車名も変えることで販売のテコ入れを狙う。レヴォーグレイバックは、レヴォーグのSUV仕様で、ボディの基本部分は共通だ。レヴォーグの車名を冠した理由もわかりやすい。
以上のように車名を合体させた理由は多岐にわたるが、共通するのは、先に付く名称が基幹車種であることだ。デリカミニの開発者は「デリカの車名は多くの方がご存じで、馴染みやすさもある」と述べた。
過去に遡ると、車名の合体は膨大にある。しかし、いまに続く車種は少ない。それは現時点で売られている車名を合体させた車種の多くが、新規投入になることからも明らかだ。車名を合体させた車種で、歴史が相応に長いのは、ランドクルーザープラドやジムニーシエラ程度になる。大半の合体車名は消滅した。
たとえばN-BOXスラッシュは、初代N-BOXの天井を低く抑えて、後席のドアを横開きに変更した軽自動車だ。デザイナーが遊びで描いたスケッチが商品化に至った珍しいクルマだが、実用性はN-WGNを下まわり、N-BOXスラッシュは装備を充実させたから価格も高い。スライドドアも装着しないから、売れ行きが伸び悩んで終了した。
タントエグゼは、タントと同じく全高が1700mmを上まわる軽自動車だが、後席側のドアは横開きだ。やはりスライドドアの非装着が災いして販売は低迷した。
ムーヴコンテは、直線基調のボディを備えた背の高い軽自動車だ。背が高い場合、着座位置も高めに設定されるから、小柄な女性は足がペダルに届きにくい。スライド位置を前寄りにして運転するが、そのままでは降車できないため、乗り降りする度にスライド位置を前後に動かす。そこでムーヴコンテは、軽自動車ながらも運転席にメモリー付きの電動スライド機能を採用した。しかし人気は得られなかった。
そもそも降車できないほど運転席を前寄りにスライドさせたら、ステアリングホイールを抱える無理な運転姿勢になる。メーカーは、ドライバーが体格に応じて選べるように、床と座面の間隔が近い小柄な人向けの車種も用意せねばならない。以前のアルトは着座位置が低く、小柄なドライバーもペダル操作をしやすかったが、先代型や現行型では持ち上がってきた。小柄なドライバーのペダル操作性は、いまも続いている問題だ。
普通乗用車にも数多くの派生車があった
このほか3列シート車にも車名の合体が多い。カローラスパシオは相応の人気を得たが、車内は窮屈だった。そこで専用の薄型燃料タンクを備えたシエンタが発売され、カローラスパシオは終了した。
パッソセッテも3列目が狭かった。しかも車名がダメだ。ミニバンはたとえコンパクトでも、ファミリーユーザーにとって憧れの存在だ。子どもが生まれてミニバンを買い、両親は「これから子育てを頑張るぞ!」と決意を新たにする。その車名にエントリーカーの「パッソ」が付いたら、購買意欲も薄れる。
要はミニバンの顧客の気持ちが理解できておらず、機能も未熟で販売不振に陥った。その結果、一度生産を終えた初代シエンタを復活させる異例の事態となった。パッソセッテは短期間で生産を終えて、シエンタがいまも続いている。
マークXジオは、3列目シートを使うとミニバン、格納するとワゴン、格納して間仕切りも装着するとセダンになると宣伝された。ただし、Lサイズのボディなのに3列目が呆れるほど狭く、価格も割高で販売低迷に陥った。
プリウスαもワゴン風のハイブリッド専用車で、3列シート仕様もあったが狭かった。ただし、販売は好調で、発売から2年後の2013年でも、1カ月平均登録台数が8000~9000台に達した。当時のプリウスの販売総数の内、約40%をαが占めた。それでも2014年にフルモデルチェンジされたノア&ヴォクシーがハイブリッドを用意すると、売れ行きを下降させていった。
以上のように車名を合体させた車種の多くは長続きしない。ビッグネームにあやかる発想自体に、コンセプトの甘さ、自信に欠ける商品開発があるからだ。
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みんなのコメント
マークXは付けずにジオでよかった。