”ロータリーは日本の宝”が信条
東洋工業ロータリー研究室OBのサーキット遊び用FC3S!
「マツダロータリー研究室OBの愛機はフルチューンFC3S!?」自作ブリッジポートでサーキットを楽しむ!
還暦を過ぎてからFC3Sを購入し、プライベートでロータリーチューニングを行いながらサーキット走行を楽しんでいるオーナーの登場だ。
実はこの人物、単なるロータリー好きカーガイではなく、かつてはマツダ本社(当時の東洋工業)のRE研究部に所属し、ロータリーエンジン開発の中で信頼性や耐久性のテストを担当していたという経歴の持ち主だったりする。
その証拠に、退職時に研究部の仲間達から贈られた“寄せ書き”を今でも大切に所持しているのだ。
当時の仕事内容について尋ねると「あの頃、市販化されていたのは10Aで組み立ては手組み。研究部は専門部署が細かく分かれていて、私は一日ベンチ室に缶詰め。車体関係は別の部署になるので、テストを行なったエンジンがどんなクルマに載るのかなんて分かりませんでした(笑)」と振り返る。
続けて「私が最後に実験に携わったのが12A。研究部には10年ほどお世話になりましたが、諸事情で九州に帰ることになり、翌年そのエンジンを積んだクルマがRX-7(SA22C)だと言うことを知りました。いやぁ、すごい形のクルマが出てきたなと思ったものです」。
そんなオーナーのFC3Sは、ペリ仕様のSA22Cに乗り換えるという知人から譲り受けたものだ。
自ら組み上げたエンジンは、ブリッジポートのNA仕様となる。NA化を敢行した理由は、ローコストでなおかつマイペースに走ることができるから。そこに使い慣れた38φのウエーバーキャブを組み込み、デスビにはSA22C用を用いるなど、純正パーツを流用してアナログ制御化している。
「補機類を含め、このFC3Sの中身はRX-3と同じですよ。あ、コイツにはパワステが付いてるか。一番の理想はペリフェラルポートなんですけどね。ハウジング自体の加工が必要になってくるからお金もかかるし、そこまで腕がついていかないから(笑)」。
オーナーの人柄を最も表しているのが、エキゾースト環境だ。サーキット仕様のため、マフラーは排気効率重視のフルストレート構造を採用しているが、さすがにこのままでは爆音すぎて走れない。
そこで積載車の出番となるのだが、FC3Sを積載車に積み込む際もマフラーにインナーサイレンサーを取り付け、さらにもう一本マフラーを繋いで純正以下の超サイレント状態を作り上げている。近隣への配慮は万全というわけだ。
なお、ガレージには製作を終えたスペアエンジンも用意されていて、こちらもブリッジポート仕様だった。
「構造がシンプルだから、バラすのも組み立てるのも簡単なんですよ。組み上がったら軽トラで知り合いの工場に運んで、インパクトでの締め込み増し締めさせてもらってます」とのこと。
所有する工具類はさほど多くはないものの、「このくらいでできるシンプルさもロータリーの魅力なんです」とオーナーは語る。もちろん、シール類などは常時ストックされ、分解時に不可欠な専用工具も揃える。
オーナーが使用したブリッジポートの型や、各種シール類もしっかりと保管されている。
「ブリッジとはレシプロで言うところのハイカム化と同じ。当然、やりすぎると下が無くなって乗りにくくなりますけどね。アペックスシールは当初カーボン(アルミ含浸カーボン)でしたけど、市販車は途中でメタル(鋳鉄製)に変わったんですよ」。
さらにレアアイテムとして、昭和42年の入社時に先輩から渡されたという東洋工業発行の“ロータリーエンジンの原理と解説”も発見。その隣には、当時描かれたブリッジボートのラフスケッチも残っていた。
ちなみに、オーナーがサーキットに通う理由はタイムアップが目的では無い。自分の組んだエンジンが、どう動いてくれるかを体感するためにベストな環境だから。つまりは実験場、完全にチューナーの思考である。
「20代の若造時代から、皆さんに本当に可愛がってもらいました。大好きですよ。今までも、これからもマツダ一筋ですね」。愛車を眺めながら話を締めくくるオーナー。FC3Sのノーズ先端に取り付けられた最初期のマツダエンブレムが、誇らしげに見えた。(OPTION2誌2011年10月号より抜粋)
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みんなのコメント
老後の楽しみ方として羨ましいです。
自分の携わったエンジンに乗れる、
エンジニア冥利につきますね。