理屈抜きで多くの人を惹き付けたミニ
パワステなしのステアリングと、岩のように硬いクラッチペダル。リアシートへ座れるのは子供だけ。そんな小さなハッチバックは、1959年から2000年まで約500万台が生産された。ミニは、理屈抜きで多くの人を惹き付けてきた。
【画像】驚くほどの中毒性? ローバー・ミニ(Mk6・7) 最新の電動ミニとカントリーマン JCW 全109枚
BMW傘下になったミニというブランドだが、オリジナルの特長は今でも大切に維持されている。AUTOCARでは、1991年に企画した「世界を変えたクルマ・トップ50」で、1位に選出してもいる。
今回はそんなオリジナルのミニでも、1990年から2000年にローバーが生産した、通称Mk6とMk7(日本ではMk8からMk10)に注目してみたい。英国では、比較的気軽な予算で選べる中古車が、今でも数多く流通しているからだ。
1960年代の初期のモーリス・ミニは、最も安い例でも1万2000ポンド(約230万円)以上する。だがローバーのミニなら、2000ポンド(約38万円)から探すことができる。
年式が新しいぶん、お値段以外のメリットも多い。それ以前は1.0LのBMC Aシリーズ・エンジンが載っていて、最高出力は40psだった。しかしMk6では、1275ccのローバー・ユニットが登場。キャブレターで50psを発揮した。
63psのインジェクション仕様も存在し、1994年以降はそれ1本に絞られている。とはいえ、どのエンジンでも活発なのは100km/hくらいまで。速度に関係なく、クッキーの缶のように簡素なボディ内へ響く、エンジン音は小さくない。防音材も最小限だ。
運転へ夢中にさせる敏捷性と安定性
むしろドライなエンジン音は、トランスミッションやタイヤからのノイズを打ち消してくれる。聴覚的に、クルマとの一体感を高めるものだと受け止めたい。
ステアリングホイールには、路面の状態がしっかり伝わる。運転席の中央から位置は若干ずれているが、反応は鋭くダイレクト。アシストが備わらず、少し重たいとしても。
カーブへ突っ込んでみれば、12インチか13インチという、小さなタイヤがしっかりグリップ。小さなエンジンと4速マニュアルを活用することで、意欲的な脱出加速を楽しめる。ちなみに、4速ATも用意されていた。
タイヤはボディの四隅へ位置し、高い敏捷性を実現しつつ、安定性も低くない。運転へ夢中になれるはず。
また1991年から2000年にかけては、数多くのバリエーションも提供された。英国ではミニ・シティが好例で、Aシリーズ・エンジンから135km/hの最高速度を叶えている。1992年には、ミニ・スプライトが登場。最高出力は140km/hへ上昇した。
当時のトップグレードに据えられていたのが、クロームメッキで飾られたミニ・メイフェア。1996年に1.3Lエンジンへアップデートされている。2000年にクーパーSが登場。これは現在でもお高めの価格帯にある。
バリエーションは多いが、オリジナルのミニが楽しいという点は共通している。普段使いのファミリーカーとしては相応の覚悟が必要だとしても、休日のドライブを明るく彩ってくれることは間違いない。
新車時代のAUTOCARの評価は?
やっぱり、ミニは魅力的だ。運転は楽しく、今でも変わらず個性的。燃費は抜群に良いし、どこへでも連れて行きたくなるような敏捷性もある。歴史的価値も高い。今後も、まだ売れ続けるに違いない。(1989年8月23日)
オーナーの意見を聞いてみる
ニール・バージェス氏
「クイックシルバーにブラック・ルーフの、1993年式ミニ・クーパーに乗っています。1997年に盗難車として発見され、部品が外された状態で購入しました。ミニは、驚くほど中毒性の高いクルマですよ」
「最初のミニは、サーキット用に改造しました。ラリーにも出ましたけど。ノーマルのインジェクションでも充分戦えるんです」
「それは今でも所有しており、コーギーのミニカーのモデルにもなりました。最近はレースから引退し、家族の一員のように愛されています」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
エンジンオイル漏れに注意。シールやガスケット類の劣化は想定できる。定期的にオイル交換されて来たかも確かめたい。
クラッチペダルを踏む度に、エンジンが停まってしまう症状に悩むオーナーがいる。これは、オルタネーターやバッテリーの接触不良、燃料系の詰まりが原因かもしれない。バッテリーの電圧不足でも、エンジンは不調になりやすい。
エンジンマウントが劣化すると、アイドリング時や加速時にシフトレバーやクラッチペダルへ振動が伝わる。エンジンが滑らかに吹け上がるかも、予め確認したいポイント。
ブレーキ
ピストンやキャリパーは固着しがち。ブレーキを掛けた時にまっすぐ進まなかったり、キーキーと鳴く場合は、その可能性がある。ブレーキが効き始めるまで、ペダルの遊びが多すぎるのも良くない。
停止時にブレーキペダルへ力を込め、フロアまで踏み込めるか確かめる。奥まで届かない場合は、機械的な不調が疑われる。
電気系統
ステレオやスターターモーター、ヘッドライトに電気を供給する配線が、劣化し擦り切れる場合がある。これが切れると、基本的に運転できなくなる。この配線はステレオユニット後方にあり、状態は定期的に確かめたい。
ボディ
ローバー・ミニのボディやシャシーの鉄板は、初期型より薄い。前後のサブフレームやドア、フロントピラーとスカットル、給油リッドの周辺、バンパー、フロアマットの裏側などが錆びていないか観察したい。ヘッドライト内部の湿気も、望ましくはない。
塗装は、劣化し気泡のように浮いてくる。多くは完璧ではない再塗装か、塗膜の間に雨水が侵入することが原因といえる。酷い場合は、修理した方が良いだろう。
インテリア
車内に雨水が侵入していないか、フロアなどを点検したい。ラバーシールの劣化などが原因で、ドアやセンターピラー付近から雨漏りしがち。サンルーフが備わる場合は、そのラバーシールの状態も要確認。
知っておくべきこと
ローバー・ミニには、多くの特別仕様が存在した。英国では、ミニ・ブリティッシュ・オープンクラシックが特徴的な1台。ブリティッシュ・レーシンググリーンの塗装にサンルーフ、ハーフレザーの千鳥格子クロス・シートが与えられていた。
ミニ 35では、調整式ヘッドライトに開閉可能なリアウインドウ、ブルーかレッド、ホワイトの塗装にシルバーのストライプで差別化された。スポットライトや、ゴールドかブラックのエンブレムで飾られた、クーパーSがベースのミニ 40もあった。
英国ではいくら払うべき?
2000ポンド(約38万円)~3999ポンド(約76万円)
走行距離が15万km前後まで伸びた、1990年代初期のミニを英国では探せる価格帯。1275ccエンジンでも、状態は良くない。
4000ポンド(約77万円)~7999ポンド(約153万円)
比較的きれいな例が増えてくる。走行距離は約4万5000kmから13万kmと幅がある。
8000ポンド(約154万円)~9999ポンド(約191万円)
状態の良い、Mk6かMk7のミニをお探しなら、この価格帯から。走行距離は10万kmを切る場合が殆ど。
1万ポンド(約192万円)~1万3999ポンド(約267万円)
クーパー・スポーツなど、1990年代後半に作られた好条件のミニを英国では探せる。
1万4000ポンド(約268万円)以上
特に状態の良いミニ Mk6やMk7は、英国ではこの価格帯で売られている。殆どがクーパー・スポーツのようだ。
英国で掘り出し物を発見
ローバー・ミニ・クーパー 1.3i 登録:1998年 走行距離:7万800km 価格:8995ポンド(約173万円)
走行距離が比較的短い、状態の良さそうなローバー・ミニ。1.3Lエンジンのクーパーで、マニュアルで、ボディカラーも好ましい。
インテリアは、ウォールナットのダッシュボードに、クリーム色のビニールレザー。メカニズムは好調だと主張され、整備記録も残っている。
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みんなのコメント
中古ミラジーノ(二代目)で満足しちゃった。