■パワーを使い切ってMTを操作する楽しさ満載のクルマを振り返る
1970年代にAT車の普及が始まると、イージードライブが可能とあって爆発的に数を増やし、現在、日本の自動車市場ではAT車の販売比率は98%以上といわれています。
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つまり、MT車の割合は2%に満たないほどまで激減し、一部を除く各メーカーのMT車ラインナップは風前の灯火といったところです。
一方、数少ないMT車のなかにはローパワーながら軽量で安価なモデルもあり、スポーツカーではなくても走って楽しいクルマも存在。
そこで、パワーを使い切る楽しさが味わえるMT車を、3車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「ヤリス X」
2020年2月に登場したトヨタのコンパクトカー「ヤリス」には、超高性能な派生車として「GRヤリス」をラインナップしていますが、6速MT車の価格(消費税込、以下同様)は396万円からと高額です。
しかし、スタンダードなヤリスにも6速MT車が設定されており、価格も安価に設定されています。
ヤリスは新たな「GA-Bプラットフォーム」を採用した車両の第1弾で、軽量かつ高剛性なシャシが特徴です。外観は抑揚のあるフェンダーの造形と、力強さを演出するフロントフェイスにより、ライバルに対してスポーティさを強調。
ボディサイズは全長3940mm×全幅1695mm×全高1500mm(Xグレード)と、同クラスとしては標準的ですが、車重は980kg(Xグレード、6速MT)と軽量です。
パワーユニットは1リッターと1.5リッターのガソリンエンジン、1.5リッターエンジン+モーターのハイブリッドのラインナップで、MTは120馬力を発揮する1.5リッターガソリンのみです。
グレード構成は「X」「G」「Z」の3つが設定され、各グレードの6速MT車の価格は、「X」が154万3000円、「G」は170万1000円、「Z」は187万1000円です。
●ルノー「トゥインゴ S」
ルノーの歴史で、近代的なFFコンパクトカーの元祖といえるモデルが、1972年に発売された「5(サンク)」です。
日本でもルノーのエントリーモデルとして浸透し、1993年にはさらに安価なモデルとして「トゥインゴ」が登場。1995年から日本にも正規輸入が始まると、戦略的な価格設定と個性的なデザインからヒットしました。
現行モデルは2014年に登場した3代目で、スマート「フォーフォー」と兄弟車となっており、エンジンをリアに搭載するRRの4シーター5ドアハッチバックです。
かつてスポーティなグレードの「トゥインゴGT」をラインナップしていましたが、2019年には販売を終え、MTモデルの「トゥインゴ ZEN MT」も続いて消滅。
しかし、2020年2月にベーシックなグレードとして「トゥインゴ S」が発売され、MTモデルが復活しました。
トゥインゴ Sには最高出力73馬力の1リッター直列3気筒DOHC自然吸気エンジンを搭載。ボディサイズは全長3645mm×全幅1650mm×全高1545mmと、かなりコンパクトで、車重も950kgと軽量です。
アンダーパワーながらも軽量な車体と5速MTとの組み合わせによって、パワーを使い切る楽しさが味わえます。
トゥインゴ Sの価格は179万円で、現行モデルの海外ブランド車では100万円台で手に入る唯一のMT車です。
■軽自動車のなかでも超軽量なモデルとは!?
●スズキ「アルト F」
1979年、軽自動車の歴史に燦然と輝く名車のスズキ初代「アルト」が発売されました。装備は極力簡素化し、徹底したコスト削減をおこなうことで、価格は47万円からという驚異的な低価格を実現し、大ヒットを記録。
その後代を重ね、1980年代にはターボエンジンの普及によって高性能化が加速し、1987年にはパワー競争の頂点に経つ「アルトワークス」シリーズが登場。高性能な軽自動車市場をけん引しました。
現行モデルのアルトは2014年に発売された8代目で、軽乗用登録の5ドアセダンが基本となっていて、新プラットフォームの採用によりエンジンルームを最小化したことで、軽セダンではトップクラスの室内長を実現。
また、新プラットフォーム採用の恩恵は車重にも現れており、従来モデル比で60kg軽量化され、最軽量の「アルト F」グレードでは驚異的な610kgを達成しています。
アルト Fにはクラッチとシフト操作をコンピュータが最適制御する「5AGS(オートギアシフト)」とともに5速MTが設定され、エンジンは49馬力(MT)を発揮する660cc直列3気筒を搭載。
また、価格も86万3500円と安価ながら、快適装備も充実しています。
64馬力を発揮するアルトワークスも大いに魅力的ですが、超軽量なアルト Fの実力も侮れません。
※ ※ ※
昭和の時代は軽量なクルマが多かったのですが、装備が簡素だったため必然的に軽くなっていました。たとえばコンパクトカーなら、エアコンやパワステ、パワーウインドウなどは標準装備しておらず、エアバッグなどの安全装備も搭載していません。
一方で、現行モデルではひととおりの快適装備や、安全装備が充実しているので、軽量化は難しい状況ですが、スズキは独自の軽量化技術を駆使して、軽いクルマをつくり続けています。
軽いクルマは走行性能の向上だけでなく、燃費にも良い影響を与えるため歓迎すべきですが、安全面や装備との兼ね合いもあるので、そう簡単ではないのが現状です。
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