新型ステップワゴンの開発責任者は、「ホンダ史上最大空間を感じ取ってほしい」というコメントを残している。たしかに実際に室内、特に2列目シートに座ってみると、オットマンもついていることもあってか、「これはもしかするとアルファードはいらないかもしれない」などと思ってしまった。
本当にダントツ人気の高級Lサイズミニバン、アルファードは不要なのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底解説する。
ミニバン栄枯盛衰 ひとつの時代を築いた儚い両雄 生産終了したエスティマ オデッセイの復活説は本当か?
文/渡辺陽一郎、写真/トヨタ、ホンダ、ベストカーweb編集部
■2022年は「ミニバンイヤー」!
販売店で予約受注を開始したホンダ ステップワゴン
高級Lサイズミニバンの王者、トヨタ アルファード
2022年は「ミニバンの年」だ。1月13日にノア&ヴォクシーがフルモデルチェンジを行い、ステップワゴンも、販売店では価格を明らかにして予約受注を開始した。セレナも2022年末から2023年に掛けて、フルモデルチェンジを実施する。
これらのミニバンにとって、最も大切な機能は、車内の広さと居住性だ。今回はミドルサイズとLサイズの主力車種について、主に2列目と3列目のシートを比べてみたい。
まずは身長170cmの大人6名が乗車した場合を想定して、2/3列目シートの足元空間を比べる。測り方は以下の通りだ。ドライバーが運転席に座って運転姿勢を調節したら、その後ろの2列目シートに同乗者が座る。2列目の膝先空間が握りコブシ2つ分になるように、シートのスライド位置を調節する。
さらにその後ろ側にも乗員が座り、膝先の空間を測る。乗員の身長はすべて170cm、2列目シートの膝先空間は握りコブシ2つ分に統一することで、3列目の膝先空間を比べるわけだ。そのランキング順位は以下のようになる。
■主なミニバンの3列目シートの膝先空間
全車に身長170cmの大人6名が乗車して、2列目のスライド機能を使い、膝先空間を握りコブシ2つ分に調節する。この状態で3列目の膝先空間をチェックした。
●各車の3列目シートの膝先空間
・アルファード:握りコブシ4つ半
・オデッセイ:握りコブシ3つ弱
・セレナ:握りコブシ2つ半
・新型ステップワゴン:握りコブシ2つ分
・新型ヴォクシー&ノア:握りコブシ1つ半
以上のように3列目の膝先空間は、アルファードが圧倒的に広く1位になる。2位は生産を終えたもののオデッセイで、当然ながらLサイズミニバンが有利になった。
意外なのはヴォクシー&ノアで、セレナや新型ステップワゴンよりも狭く、取り上げた5車種の中では最下位だ。ヴォクシー&ノアの3列目が狭い背景には、プラットフォームの刷新がある。
新型で採用したGA-Cプラットフォームでは、従来型に比べて前席の着座位置が下がり、1列目から3列目までの乗員間隔が先代ヴォクシー&ノアに比べて20mm減った。そのために今回の測り方でも3列目が狭まった。
同様のことがGA-Cプラットフォームを採用するほかの車種にも当てはまる。プリウスの後席も、前席の着座位置が下がった影響もあり、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は先代型と同じなのに足元空間が少し狭い。
いずれのミニバンも多人数乗車は可能だが、ヴォクシー&ノアは、新型車ながら足元空間に若干の不満がある。
逆にセレナは設計が古く、前述の通り2022年か2023年にはフルモデルチェンジするが、3列目の足元空間はミドルサイズミニバンでは最も広い(3列目のスライド装着車)。加えて3列目の座面の奥行寸法も、ヴォクシー&ノアやステップワゴンに比べて30mmほど長く、座り心地も快適だ。
またセレナのノーマルエンジン車(Sハイブリッド搭載車)の場合、2列目シートの中央部を1列目の間までスライドさせると、収納設備として活用できる。セレナは設計が古いため、安全装備などはヴォクシー&ノアを始めとするライバル車に見劣りするが、3列目の居住性とシートアレンジでは今でも負けていない。
そして2/3列目の快適性を総合的に評価すると、ミドルサイズでは新型になったステップワゴンも注目される。シートの造りを変更して座り心地を向上させ、3列目は座面の厚みを20mm増して底突き感を解消したからだ。
2列目も改良され、スパーダとスパーダプレミアムラインのセパレートシートには、乗員の足を支えるオットマンも装着される。新型ステップワゴンの特徴は、リラックスできる内外装にあり、それをデザイン面で最も分かりやすく表現したグレードがエアだから、この仕様にもオットマンを装着可能にすべきだ。
新型ステップワゴンでは、クルマ酔いの研究も行って、2/3列目に座る乗員の視界にも配慮した。1/2列目シートの背もたれに丸みを付けて、その後ろ側に座る乗員の圧迫感を抑えている。
またサイドウインドーは水平基調で直線的に配置され、車外の風景もスッキリと見やすい。デコボコをなくすことで、乗員の視線が安定するように配慮した。
新型ステップワゴンのボディサイズは、エアの全長が4800mm、スパーダは4830mmと長い。全幅も1750mmになり、全高は仕様に応じて1840~1855mmだ。
プラットフォームは先代型と共通で、ホイールベースも2890mmで変化はないが、全長は70~100mm、全幅も55mm拡大された。ボディのサイズアップに伴って、居住空間も広がっている。
前述の通り、セレナも室内が広くシートアレンジは多彩だが、内装のデザインやシートの座り心地まで含めると、ミドルサイズミニバンの居住性1位はステップワゴンになる。
車両全体の総合評価は、燃費や安全/快適装備を大幅に進化させたヴォクシー&ノアが1位だが、居住性や快適性ではステップワゴンが注目される。
■3列目は生産終了したオデッセイが快適
2021年12月に生産を終了したホンダ オデッセイ
ホンダ オデッセイのシートレイアウト
一方、Lサイズミニバンではアルファードの人気が突出して高く、3列目の足元空間も、取り上げた5車種の中では最も広い。ただし3列目の座り心地はいま一歩だ。床と座面の間隔が不足して、足を前方へ投げ出す座り方になる。3列目は格納する機能を重視したから、座り心地もいまひとつ柔軟性に欠ける。
むしろ3列目は、生産終了したオデッセイが快適だ。足元空間はアルファードよりも狭いが、床と座面の間隔に余裕があり、座り心地も相応に柔軟になるからだ。
したがって居住性を総合的に判断すると、取り上げた5車種では、オデッセイがベストになる。オデッセイのセパレートタイプの2列目には、プレミアムクレードルシートも装着した。クレードルとは「ゆりかご」の意味で、乗員の体をスッポリと優しく包み込む。
新型ステップワゴンのシートレイアウト
アルファードのエグゼクティブラウンジシート
それなのにオデッセイが生産を終えた背景には、アルファードの高人気もある。アルファードの3列目は、前述のように座り心地がいま一歩だが、車両のイメージとしては快適性のNO.1だ。
しかもウェブサイトやカタログを見ると、内装が一番豪華で、両側に固定式のアームレストを備えたエグゼクティブパワーシートやエグゼクティブラウンジシートが目を引く。エアラインのビジネスクラスのような雰囲気だ。
それでも実際に座ると、印象が少し異なる。座面の前側が大きめに持ち上がり、腰の落ち込んだ座り方になるからだ。小柄な乗員は、膝の裏側を押された感覚になりやすい。
エグゼクティブパワーシートやエグゼクティブラウンジシートは、乗員の体格や好みによって評価が分かれ、ベーシックなセパレートタイプのリラックスキャプテンシート、あるいは8人乗りのベンチシートがしなやかに感じることもある。
そこでアルファードを買う時は、いろいろな2列目シートを比べたい。ライバル車のオデッセイも加えて2/3列目の両方を比較すると、さらに客観的にアルファードのシートを評価できる。見栄えが良いから快適とは限らないことに注意したい。
以上のように2/3列目シートを総合的に評価すると、1位はオデッセイだ。2位はステップワゴンとアルファードが横並びという印象。僅差でセレナとヴォクシー&ノアが続く。
■ヴォクシー&ノアの注意点
新型ノアのシートレイアウト
ヴォクシー&ノアは、前述のように足元空間では最下位だが、床と座面の間隔を見直して、3列目は座り心地も向上させた。居住性には、各車ともに一長一短があるから、差が付きにくい。
選ぶ時の注意点として、ノーマルエンジン車とハイブリッドの違いもある。ミニバンのハイブリッドでは、駆動用電池が1列目シートの下側に搭載されることが多く、2列目に座る乗員の足が収まりにくい。
3列目を使わない時は、2列目を後方にスライドさせて足元空間を広げれば済むが、これでは多人数乗車時に3列目が窮屈になってしまう。3列目を使う時は、2列目に座る乗員の膝先空間を前述の握りコブシ2つ程度に詰めねばならない。
そうなると1列目の下側に足が収まりやすいか否かにより、2列目の居住性が大きく変わる。
特に注意したい車種は、ヴォクシー&ノアハイブリッドとセレナe-POWERだ。両車ともに1列目の下側が駆動用電池で塞がり、2列目に座った乗員の足が収まりにくい。
その点でステップワゴンのe:HEVは、ヴォクシー&ノアやセレナに比べると、駆動用電池による1列目の下側の塞がりが小さい。3列目の足元空間を広げるため、2列目の膝先を握りコブシ2つ分まで詰めても、さほど窮屈には感じない。ツマ先が少し持ち上がる程度だ。
従ってハイブリッドでは、ステップワゴンの評価が高く、ヴォクシー&ノアとセレナは一層下がってしまう。
ヴォクシー&ノアは、新型になってハイブリッドとノーマルエンジンの価格差を35万円に抑えた。しかもハイブリッドは購入時に納める税額が約13万円安いから、実質差額は22万円に縮まる。
レギュラーガソリン価格が160円/Lとすれば、約6万kmを走ると22万円の実質価格差を取り戻せるから、ハイブリッドが買い得度だ。それだけに先に述べたように、ハイブリッドを選ぶ時は、2列目シートの居住性に注意したい。
ステップワゴンとヴォクシー&ノアを新型同士で比べると、総合的にはヴォクシー&ノアが有利だが、居住性を重視する場合はステップワゴンを選ぶ余地もある。
ミニバンはどれも似通ったクルマと見られやすいが、実際には用途や好みに応じて選べるバリエーションが展開されている。購入時には、候補車種を決めて販売店に出かけ、試乗車を乗り比べたうえで選ぶと良いだろう。
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