2022年1月7日に初公開されたホンダの新型ステップワゴン。クルマの概要については、情報がほぼ出揃っているが、走行性能に関しては現時点で「e:HEV搭載」というところまでとなっており、新規ユニットとなるのか、流用なのか、そしてガソリンエンジン車はあるのかなど、具体的な内容についてはまだわかっていない。
同じくミドルクラスミニバンの新型ノア/ヴォクシーでは、クラストップレベルとなる驚異的な燃費性能を実現してきており、新型ステップワゴンの走行性能に関しても、気になるところ。
オデッセイ、エスクァイア、エスティマ…絶版なりたて名門ミニバンは中古が狙い目だった!!
そこで今回、新型ステップワゴンのパワートレーンの内容や、燃費性能、そして走りの質感などについて、ヴェゼルやフィットのパワートレーンをもとに予想してみた。
文/吉川賢一、写真/ホンダ、トヨタ、ベストカー編集部
■e:HEVは改良型に!!
現行ステップワゴンには、ハイブリッド仕様とガソリン仕様の2種類がある。ハイブリッドは、排気量1993ccの直列4気筒エンジン(最高出力145ps、最大トルク175Nm)と、発電用と駆動用の2モーター(駆動用184ps、315Nm)を組み合わせたe:HEV。
車速や走行負荷によって、モーター走行、モーター+エンジン走行、エンジン走行の3つを、巧みに切り替えながら走行するシリーズパラレル式ハイブリッドだ。
スクエアでクリーンな外観にイメージチェンジした新型ステップワゴン。パワートレーンはe:HEVと1.5Lダウンサイジングターボのいずれも現行改良版が搭載される
高速走行中であっても、クルマがコースティング中(惰性走行)と判断すれば、モーター駆動へ切り替えて、燃費を伸ばす制御となっている。ちなみに、オデッセイハイブリッドも、同じユニットを搭載している。
なお、WLTCモード燃費は20.0km/L(市街地18.8km、郊外21.7km、高速19.5km)。つい先日登場した、新型ノア/ヴォクシーハイブリッドの燃費23.4km/Lに大きく負けている状況だ。おそらく、ホンダのパワートレーンエンジニアたちは、ライバルの進化を見て「ゾッ」としたはず。
生産開始を遅らせないギリギリのタイミングまで、e:HEVユニットの高効率化や、ハイブリッド制御のブラッシュアップを行い、キャッチアップをするのは間違いないだろう。
■ピュアガソリンエンジンも残る!!
現行のガソリンエンジン車は、排気量1496ccの直列4気筒のL15B型VTECターボエンジン(150ps、203Nm)だ。このエンジンは、現行ステップワゴンのほかにも、現行CR-Vや先代ヴェゼルツーリング、先代シビック(FC1)など、ひと昔前から使用されていたユニット。
WLTCモード燃費は13.6km/L(市街地10.3km、郊外14.3km、高速15.2km)。新型ノア/ヴォクシーの15.1km/Lとは、これまた差が付いている。
新型ヴェゼルや新型シビック(FL1)のピュアガソリンエンジンは、新世代の1.5LVTECターボ「L15C型」へと移行している。新型ステップワゴンにピュアガソリン仕様があるならば、間違いなくこちらのエンジンが流用されるだろう。
国内販売でのシェアを考慮すれば、ピュアガソリンはまだまだ必須。これ以上、普通車のシェアを落としたくないホンダとしては、「次のステップワゴンが最後」という条件でも付けて、L15C型ガソリンエンジンへと更新してくるのではないだろうか。
■燃費では敵わないが、エンジンの質感は確実に勝てるはず
燃費性能で「ダントツ」の1位になった新型ノア/ヴォクシーに、走りの弱点があるとするならば、それは「エンジンノイズ」だ。新型ノア/ヴォクシーは、加速時に、トヨタ製直4ユニット特有の「ガーガー」という、ややガサツなエンジンノイズが聞こえる。むしろ、2L直4のガソリンエンジン(ハリアーやRAV4と同じユニット)のほうが、エンジンの音が気持ちいいと感じるのだ。
迎え撃つノア/ヴォク。ステップワゴンに先行すること半年。現在も絶好調な販売・予約状況だ。ただ、第4世代となったTHS-IIもエンジンフィールなどには課題あり。ステップワゴンに分があるか
一方、新型フィットe:HEVや新型ヴェゼルe:HEVなど、最近のホンダ製ハイブリッド車は、どれもエンジンの質感が高い。「加速の強さ」や「レスポンスの鋭さ」といった特徴はないのだが、滑らかな回転フィールとスムーズな加速、そして静かなロードノイズなどから、「走りの質感」を感じられるのだ。加速時の騒音も、「澄んだいい音質」なので、運転していてストレスがない。
前述したように、おそらく新型ステップワゴンは改良型のe:HEVを搭載してくるはずで、となると、燃費性能において驚くほどの大きな進化は見込めない。「ミドルクラスミニバンにいい音質など必要なのか」という考え方もあるだろうが、どのメーカーのミニバンも進化が極まってきた現在、数字では表しにくい、この手の「走りの質感」が、最後に背中を押してくれる存在なのかもしれない。ぜひとも新型ステップワゴンには、極上のe:HEVユニット開発を目指してほしい。
■高速直進性やコーナリング、乗り心地などは、互角以上か
新型ノア/ヴォクシーに採用したTNGAプラットフォーム(GA-C)は、堅牢感が非常に高い。そのため、新型ノア/ヴォクシーは、一般道を30km/h程度で走行すると、路面凹凸からの振動が、それなりにフロアに伝わってくる。
60km/hにまで速度を上げれば、振動はほとんど気にならなくなるが、見栄え重視の17インチ55扁平タイヤ(S-Z 2WD仕様)はややオーバースペックにも思える。その半面、60km/h程度の中速走行でのロードノイズは、至極静かだ。
また、センタリング性が高く、適切な操舵力にセッティングされているEPSは、運転していて非常に楽。コーナーや交差点での身のこなしも、すっきりした運転感覚でとても好ましい。
「(車体の)リアゲートやサイドドアの開口部の剛性を高めて、車体を作り込んだうえで、サスをしっかりと動かしたかった」と、トヨタ車両実験部動的性能開発室主査の兼子正人氏も言うように、しっかりした足回りで安定感の高さを目指しているようだ。
TNGA採用による全体的な剛性感の向上が見られる。特に背高で巨大な開口部となる車両後側の剛性アップに力を入れた結果、サスの動きもよくなったという。ステップワゴンとの比較が楽しみだ
新型ステップワゴンも、新型ノア/ヴォクシーと同様、車幅が拡げられ、ボディはロール方向やピッチ方向へ、より揺れるようになるはず。タイヤやサスペンション、そして車体剛性など、これまで以上に対策が必要になるだろう。そして注目したいのが、EPSの操舵力特性だ。
この手のミニバンでは、キビキビしたハンドリングにすると運転操作がやりにくくなる(クルマの動きが大きいので修正操舵が増えるため)ことがあり、ある程度、「緩慢さ」を持たせるほうがいいことが多い。
先日、箱根で新型ヴェゼルe:HEVに試乗したが、機敏過ぎず、かといって遅れも少ない、運転しやすいEPS特性に仕上げられていた。あの方向性で新型ステップワゴンも仕上げれば、きっといいフィーリングに仕上がると思う。
■まとめ
年明け早々の東京オートサロン2022で新型ノア/ヴォクシーが発売開始したことで、ミドルクラスミニバンのカテゴリーの火が一気につけられた。すでに先行予約の受注が始まっている新型ステップワゴンだが、注文から工場へ出荷されるまで約5カ月かかる見込みだという。
最強の進化を遂げた新型ノアヴォクシーに新型ステップワゴンがどこまで食らいつけるのか、こちらの発売開始は2022年5月の予定だ。
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みんなのコメント
ミニバンにそんなのを求めてる人なんていないと思うんですが