現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 2021年新春発表か!? 1億円超確実 トヨタGRスーパースポーツを発売する本当の理由

ここから本文です

2021年新春発表か!? 1億円超確実 トヨタGRスーパースポーツを発売する本当の理由

掲載 更新 34
2021年新春発表か!? 1億円超確実 トヨタGRスーパースポーツを発売する本当の理由

 トヨタは2018年の東京オートサロンで、ル・マンのハイパーカーの市販モデルであるGRスーパースポーツ(仮称)のプロトタイプを初公開。

 そして、コロナ禍で開催された2020年のル・マン24時間レースでそのプロトタイプがサルトサーキットで走行をお披露目して、順調に開発が進んでいることが確認できた。

希少な国産5ナンバーセダンの佳作!? ホンダ グレイスの軌跡が示すもの【偉大な生産終了車】

 堅実なメーカーであるトヨタが、車両価格1億円オーバーは確実とも噂されるGRスーパースポーツを市販する意味とは何なのか?

 ル・マンのハイパーカークラスに参戦するためには販売が義務づけられているから仕方なく販売するのか、それとももっと深い意味、狙いがあるのか?

 トヨタがGRスーパースポーツを販売する意味について御堀直嗣氏が考察する。

文/御堀直嗣、写真/TOYOTA、LEXUS、ASTON MARTIN、PEUGEOT、PORSCHE、TMG

【画像ギャラリー】東京オートサロン2021で市販モデルを公開!? トヨタ渾身のGRスーパースポーツはそのまんまレーシングカー

ハイブリッドのパイオニアはレースにも積極投入

2020年9月20日のル・マン24時間レースの決勝前にGRスーパースポーツの走行を初披露。カムフラージュされているが、ボディラインはコンセプトカーのまま

 新型コロナウィルスの影響で、毎年恒例のフランスの伝統的な耐久レースであるル・マン24時間レースは、6月から遅れて9月に開催された。これに参戦したトヨタは、3連覇を果たした。

 トヨタエンジンがル・マンに参戦したのは1975年まで記録は遡るが、トヨタのマシンでの参戦は10年後の1985年からだ。ただし、これに挑戦したのはトムスというトヨタ系レーシングチームである。

 1988年から優勝を視野に本格的な参戦を続け、2012年からハイブリッドシステムを搭載しての出走となった。

2006年の十勝24時間レースに出走したGS450hは世界で初めてレースに投入された量産ハイブリッドカーとなった。ほぼ市販状態で完走

 トヨタは、1997年に世界初の量産市販ハイブリッド車プリウスを発売し、2006年に国内の十勝24時間レース(北海道)にレクサスGS450hという量産ハイブリッド車をレース用に仕立て出走し、世界初のハイブリッド車でのレース参戦で完走を果たしている。

 ここからトヨタは、モータースポーツへのハイブリッド車の投入を開始した。翌2007年には、レース専用のハイブリッドシステムを搭載するスープラHV-Rで、十勝24時間レースでの優勝を飾る。

スープラHV-RはGT500マシンをベースにハイブリッドユニットとインホイールモーターを搭載。トヨタのハイブリッドレーシングTHS-Rの原型だ

レース用ハイブリッドは市販車とは別物

 レース専用のハイブリッドシステムは、乗用車で採用されているTHSとは異なる構成だ。フロントエンジンからシャフトを通じて後輪側のトランスアクスルに駆動用モーターを装備した構成となる。

 さらに、前輪用としてインホイールモーターを左右に装備する4輪駆動としていた。これをミッドシップ用に発展させたのが、ル・マン24時間レースに参戦したハイブリッドシステムである。

トヨタのル・マンの3台のマシン。左からTS010(1991~1992年)、TS030 HYBRID(2012~2013年)GT-One TS020(1998~1999年)

 乗用車で使うシステムと機構が異なるとはいえ、ガソリンエンジンとモーターの組み合わせによるハイブリッド車という図式は、1997年から23年もの歴史を積み上げてきたトヨタの、電動化の取り組みを象徴する姿といえる。

 ところが、ル・マン24時間レースでは、競争相手のアウディやポルシェがすでに参加をやめており、世界的な大手自動車メーカーで参戦を続けるのはトヨタのみの状況が続いている。

 レース専用のプロトタイプ車両での参加は、膨大な予算を必要とし、さらに部品や制御で複雑になるハイブリッドでの出場は、プライベートレーシングチームには難しい。

 そこで、自動車メーカーはもとより、多くのチームが参加しやすい車両規則として、2021年からル・マン・ハイパーカー(LMハイパーカー)規定を設け、レース開催することになった。

LMハイパーカーは2年間で20台以上の市販義務

市販の期待が高まったが、ル・マンのGT1規定に合わせ、1台がイギリスでナンバー取得したのみで終わったトヨタGT-One

 ル・マン24時間レースは、これまで何度も状況に応じて参加車両の規定を変更してきた歴史がある。

 たとえば、1980~1990年代にかけて世界を牽引したグループC規定によるレースが衰退すると、市販GTカーを主軸とした車両規定に変更している。

 このGTカーによる参加は、プロトタイプカーによる総合優勝争いが行われてきたときにも別クラスとして設けられてきたもので、一時的な主役交代によるレース存続の手法であった。

東京オートサロン2018で世界初公開されたGRスーパースポーツのプロトタイプ。エクステリアは市販スポーツカーとは違い、そのままレーシングカー

 その後、再びプロトタイプカーによる参戦が自動車メーカーによって表明されると、これが主役となり、そのなかで、ディーゼルエンジンの参加を認めたり、ディーゼルハイブリッドとガソリンハイブリッドの競争があったりということで、今日に至っている。

 LMハイパーカーとは、エンジン車での参加も認める内容で、これによってより幅広い参加を見込むことができる。同時に、ハイブリッドでも参加でき、ただしモーター駆動は前輪のみに限定される。

 そしてエンジンもモーターも最高出力に上限が設けられる。こうして、エンジンやハイブリッドシステムの無制限な開発競争を抑え、参加費用の高騰を防ぐ目的がある。

 また、市販車があることを前提とし、2年間で20台以上市販することが求められる。いっぽう、プロトタイプとして参戦する場合に市販の義務はない。車両規定の主力は、あくまで市販を視野に入れたLMハイパーカーになる。

プロトタイプは東京オートサロン2018で初公開

 トヨタは、プロトタイプでの参戦は続けてきており、2021年からはLMハイパーカーへの参戦を決め、GRスーパースポーツの市販という話につながる。

 トヨタとしては、これまでの経験が活きる前輪モーター駆動のハイブリッド車両で出走するだろう。誰もがより参加しやすい後輪駆動のエンジン車がありながら、前輪にモーターを使うハイブリッドも加えたことは、主催者のトヨタへの配慮ともいえる。

アストンマーティンはLMハイパーカーにヴァルキリーでの参戦に意欲的だったが、急転直下、現在は凍結中で、このまま参戦を見送る可能性が高い

 ハイブリッド主体のプロトタイプから、エンジン車でも参加できる規則へ変更となり、アストンマーチンやプジョーからも参戦の声が上がった(ただしアストンマーチンはその後凍結するとしている)。

 トヨタは、2018年の東京オートサロンでさっそくGRスーパースポーツコンセプトと、そのテストカーを公開した。

 また2020年のル・マン24時間レースに際し、開発中とされるマシンでデモンストレーション走行を披露した。LMハイパーカー規定でもハイブリッド車でレース参戦を継続する意志を強く表明したといえる。

2020年9月にプジョーがトタルとコンビを組んで、2022年からLMハイパーカーに参戦することを正式表明。トヨタの最大のライバルとなるのは必至

GRスーパースポーツは次世代の競走馬

 この計画を推進するトヨタGAZOOレーシングによれば、市販車をレベルアップしてスポーツカーを作るのではなく、レースやラリーで培われたノウハウを制約のなかでいかに市販車に落とし込むかというクルマ作りを目指すとし、いよいよレーシングカーからスポーツカーをつくる挑戦が始まるのだという。それが、GRスーパースポーツだ。

レーシングカーのノウハウをスポーツカーに落とし込む。このことにGRスーパースポーツが存在する意義がある

 トヨタが先に公開したeパレットが次世代の幌馬車とするなら、GRスーパースポーツは愛馬であり、次世代の競走馬であると例える。

 豊田章男社長は、「自動車産業が大きな転換期を迎えるなか、次の100年もクルマを楽しくしていきたい」との思いを語っている。

 そして、その両車両はともに電動車だと。電動化や情報通信が進化した時代でも、クルマが単一化しないことをトヨタは示そうとし、また願っているのだろう。

 その楽しさの部分を、トヨタはル・マン24時間レースというプロフェッショナルな舞台と、GRスーパースポーツの市販による消費者との接点の両面で示そうとしている。

 さらに、トヨタが23年の実績を積み上げてきたハイブリッドの価値の存続も、このGRスーパースポーツで示そうと考えているように見える。

この後姿を街中で見たらギョッとするハズ。GRスーパースポーツのエクステリアは、何から何まで一般常識とはかけ離れている

CO2抑制からCO2ゼロへの転換

 いっぽうで、ポルシェはタイカンによってスポーツカーもEVで成立する姿を示した。

 市場では、米国カリフォルニア州をはじめ、英国やドイツ、フランスでも15~20年後にはエンジン車の販売を禁止する動きにある。排出ガスゼロが広範囲に求められるようになろうとしている。

ポルシェ初の100%EVスポーツカーのタイカンは、デビューするや否や大反響を呼んでいる。EVのスーパースポーツカー時代の到来を予感させる

 トヨタが世に示したハイブリッドという価値は、CO2排出量の抑制という意味で大きく貢献し、いまや世界の自動車メーカーが、プラグインハイブリッドとマイルドハイブリッドを含め、ハイブリッド無しでは新車を販売できない状況となった。トヨタの貢献は大きい。

 いっぽうで、これからの時代が求めるのは、CO2排出量の抑制ではなく、排出をゼロにする挑戦だ。そのことは、世界的な大規模自然災害によって一刻の猶予もならない事態となっている。

 抑制からゼロへ。この道筋こそ、大手自動車メーカーが全力で挑戦し、消費者にその姿を見せるときである。

 GRスーパースポーツがEVであるなら、しかもスポーツカーメーカーではない世界有数の大メーカーが行えば、その衝撃はより圧倒的であるはずなのだが。

TMG(トヨタモータースポーツGmbH)はEVスポーツカーのP001、P002でニュルのタイムアタック、パイクスピーク参戦でEVスポーツのノウハウを蓄積

【画像ギャラリー】東京オートサロン2021で市販モデルを公開!? トヨタ渾身のGRスーパースポーツはそのまんまレーシングカー

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

日産の「新型スポーティセダン」公開に反響多数!?「ほしい」「格好いいよね」 迫力エアロ採用の「ラティオ」後継車! VLでスポーツな「アルメーラ」比国に登場
日産の「新型スポーティセダン」公開に反響多数!?「ほしい」「格好いいよね」 迫力エアロ採用の「ラティオ」後継車! VLでスポーツな「アルメーラ」比国に登場
くるまのニュース
マナー違反?それとも法令違反? バイクでのすり抜けの法的扱いとは
マナー違反?それとも法令違反? バイクでのすり抜けの法的扱いとは
バイクのニュース
フォルクスワーゲン、2026年にEVモデル全面刷新へ エンジン車縮小と「ポロ」改良を明言
フォルクスワーゲン、2026年にEVモデル全面刷新へ エンジン車縮小と「ポロ」改良を明言
AUTOCAR JAPAN
『レンジローバー』がオーバーヒート、リコール
『レンジローバー』がオーバーヒート、リコール
レスポンス
衝撃50Gの大クラッシュも、コラピント決勝出場へ。再検査受け問題なし……マシンもなんとか修復
衝撃50Gの大クラッシュも、コラピント決勝出場へ。再検査受け問題なし……マシンもなんとか修復
motorsport.com 日本版
VW ティグアン 新型発表、米国はひと回り大きい『タイロン』ベースに…ロサンゼルスモーターショー2024
VW ティグアン 新型発表、米国はひと回り大きい『タイロン』ベースに…ロサンゼルスモーターショー2024
レスポンス
「首都高の“ETC”」利用率が98%!? それでも「料金所」に”係員“なぜ存在? 料金所スタッフの勤務実態とは
「首都高の“ETC”」利用率が98%!? それでも「料金所」に”係員“なぜ存在? 料金所スタッフの勤務実態とは
くるまのニュース
さらば50cc…手に入れるなら今!? 50cc人気3選、今はまだ買えるの?
さらば50cc…手に入れるなら今!? 50cc人気3選、今はまだ買えるの?
バイクのニュース
コメリ、オリジナルのヘッドライトコーティング剤発売 最長1年間黄ばみ・劣化から守る
コメリ、オリジナルのヘッドライトコーティング剤発売 最長1年間黄ばみ・劣化から守る
レスポンス
最後の非電動・非ターボの水平対向6気筒…ポルシェ『911 GT3 RS』をスクープ!
最後の非電動・非ターボの水平対向6気筒…ポルシェ『911 GT3 RS』をスクープ!
レスポンス
半世紀前の名車バイクの走行距離がなんと“60km”!? 極上のホンダ「CB500Four」をイタリアで発見 気になる価格とは
半世紀前の名車バイクの走行距離がなんと“60km”!? 極上のホンダ「CB500Four」をイタリアで発見 気になる価格とは
VAGUE
 専用品がない旧車や緊急時の味方!!「液体ガスケット」とは?【バイク用語辞典】
専用品がない旧車や緊急時の味方!!「液体ガスケット」とは?【バイク用語辞典】
バイクのニュース
全長3.9m! ダイハツの「コンパクトSUV」は“一文字テール”が未来的! パワフルな「1200cc×ハイブリッド」やターボ搭載した「トレック」とは!
全長3.9m! ダイハツの「コンパクトSUV」は“一文字テール”が未来的! パワフルな「1200cc×ハイブリッド」やターボ搭載した「トレック」とは!
くるまのニュース
「支払は今度で……」なんていまだ人情話もある日本の路線バスもシッカリ経営に! キャッシュレス化がもたらすメリットとは
「支払は今度で……」なんていまだ人情話もある日本の路線バスもシッカリ経営に! キャッシュレス化がもたらすメリットとは
WEB CARTOP
【KTM 990RC R発表】RC8シリーズ以来の大排気量スーパースポーツRC・公道へ再降臨!デビューは2025年春以降
【KTM 990RC R発表】RC8シリーズ以来の大排気量スーパースポーツRC・公道へ再降臨!デビューは2025年春以降
モーサイ
悔しい予選に終わったノリス。王者争いには悟りの境地「最初の6戦で決着していた」今は打倒フェラーリに集中
悔しい予選に終わったノリス。王者争いには悟りの境地「最初の6戦で決着していた」今は打倒フェラーリに集中
motorsport.com 日本版
【カブリオレ対決】BMW対メルセデス 6気筒エンジンを搭載するオープントップのM440i xDriveとCLE450のガチンコ勝負!
【カブリオレ対決】BMW対メルセデス 6気筒エンジンを搭載するオープントップのM440i xDriveとCLE450のガチンコ勝負!
AutoBild Japan
トヨタ「和製スーパーカー」がスゴイ! 約500馬力「直6」風エンジン搭載&“スケスケ”な超ロングノーズ仕様! ワイドでカッコイイ「FT-1」とは?
トヨタ「和製スーパーカー」がスゴイ! 約500馬力「直6」風エンジン搭載&“スケスケ”な超ロングノーズ仕様! ワイドでカッコイイ「FT-1」とは?
くるまのニュース

みんなのコメント

34件
  • ベストカーが読者を裏切るテキトーCG&記事しか書けない理由を知りたい
  • ジャーナリストだか評論家だか知らないが本当の意味なんかわかるわけないだろ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村