フラットノーズは世界中で盛り上がりそうな気配
2024年8月15日~17日にRMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてポルシェ「911ターボ フラットノーズ」が出品されました。同車は、新車からわずかに1万3700kmを走行したのみのアメリカ仕様で、2022年発行のポルシェ・クラシックお墨付きの1台です。
ポルシェ「930ターボ フラットノーズ」に「湾岸バンパー」を装着! わずか36台の激レア仕様をダイレクトイグニッション化して進化中です
ポルシェ935とよく似た外観が人気に
1975年に登場したポルシェ「911ターボ」(社内では930ターボと呼ばれていた)は、まさに世界のスーパーカーの序列を並べ替えるほどの圧倒的なパフォーマンスで、多くのファンにとって夢のクルマとなった。巨大なリアフェンダーとクジラの尾のようなリアデッキスポイラーを備え、その外観はまさに当時のスーパースポーツの頂点を誇るかのような造形。同時にそれはポルシェの作品であり、911のファミリーにあることがひと目で分かるフィニッシュだった。
ポルシェ911ターボはもちろん市場で非常に大きな成功を収めるが、1982年になるとポルシェのレース・スポンサーがある提案を、ポルシェのエクスクルーシブ・マニファクチャー部門(ゾンダーヴィージュとも、またはスペシャル・ウイッシュとも呼ばれていた)に持ち込んだ。
それはモータースポーツの世界で大成功を収めたポルシェ「935」のような外観を持つロードカーの製作であり、その結果誕生したボディワークは、よりエアロダイナミクスに富む935にとても良く似た外観となる。ルーバー上のフロントフェンダーはボンネットと面一に仕上げられ、ロードユースのために格納式ヘッドライトが装備された。
箱型のロッカーパネルや、リアフェンダー上のサイドストレーキ付きブレーキ冷却用エアインテーク、さらに追加のオイル冷却用電動ファンが採用されたことも、このニューモデルの大きな話題。ホイールとタイヤもよりワイドなサイズ設定に改められることになった。
911ターボ フラットノーズとも、あるいはスラントノーズやフラッハバウとも呼ばれたこのモデルには、多くのカスタマーが興味を示し、完成から数カ月も経たないうちに同様のカスタマイズを求める裕福なカスタマーからのオーダーが、ポルシェのもとへは多数寄せられるようになった。
シャシー、エンジン、ミッションはナンバーが一致
今回RMサザビーズのモントレー・オークションに出品されたのは、新車からわずかに1万3700kmを走行したのみのアメリカ仕様。同年にはアメリカに148台の911ターボ フラットノーズが輸出されているが、その中の1台であることは、シャシーナンバー、エンジンナンバー、ミッションナンバーが一致していることを、2022年発行のポルシェ・クラシック技術証明書が物語っている。
911ターボ フラットノーズの製作には、想像以上のコストが必要だった。なぜなら1度ノーマルの911ターボとして生産されたモデルをベースに、フラットノーズなどのパートをコンバージョンするプロセスで生産されたためである(フラットノーズのアメリカ向けオプション・コードはM505とされた)。
予想落札価格内におさまりハンマーが打たれた
インテリアも同様に特別な仕様を選択すれば、1度組み上げられたノーマルのシートやトリムは取り外され、新たに希望するオプションを装備する必要があった。クラシックなガーズレッドのボディカラーに、シャンパンレザーの内装を組み合わせた911ターボ フラットノーズも、その価格は相当に高価なものだったと想像できる。
2022年8月にはアウターチェーンボックスシールが、またその1年後にはエアコンが修理されるとともに、シフトボックスも交換された出品車。またオリジナルのステレオヘッドユニットは、ポルシェクラシックコミュニケーションマネジメントの、インフォテインメント&GPSシステムを搭載するものに変更されている。
RMサザビーズでは、25万ドル~30万ドル(邦貨換算約3700万円~4400万円)というエスティメート(予想落札価格)を設定。注目の落札価格は29万1000ドル(邦貨換算約4256万円)。これは予想落札価格のほぼ上限に相当する数字であった。
ちなみにポルシェは、次世代の964型911においても、ターボSをベースにトータルで76台のフラットノーズを製作している。こちらはヨーロッパ仕様、アメリカ仕様、そして日本仕様とディテールが若干異なるが、2023年12月には39台がデリバリーされたアメリカ仕様の1台が、じつに146万2500ドル(約2億1700万円)という高価格で、RMサザビーズのオークションにおいて売買が成立した。911ターボ・フラットノーズの人気は、これからまだまだ世界中で盛り上がりそうな気配である。
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