福祉機器の展示会として、いまやアジア最大規模にまで成長した国際福祉機器展は、最新の商品やサービスをいち早く体験できるのはもちろん、各分野の制度改革などを話し合う国際シンポジウムの開催やセミナーなど、福祉の分野を多角的な視点で網羅する催し。本記事では、そんなイベントに展示されていた移動の自由を高めてくれる福祉車両の最新モデルをレポート。年々充実している福祉車両のいまをお届けする。
福祉車両は、車いすでの乗車や乗り降りのサポートからスタートし、さまざまな症状や使い方に対応する多様性へと進化してきた。いまや日本の福祉車両は軽自動車から大型車に至るまで幅広く、世界でも類を見ない豊富なラインアップを誇る。近年では、福祉車両としての使い勝手はもちろんのこと、よりクルマとしての魅力を充実させたものや、ライフスタイルを豊かにしてくれるパートナーとしてつくられたモデルが登場している。その背景にあるのが、クルマそのものを企画・開発する段階から、福祉車両化を見据えた設計を行う自動車メーカーが増えていること。また、医療機関や大学といった研究機関との連携によって、より利用者の視点に立ったアイデアを持つ福祉車両が増えてきているのも近年の傾向といえる。
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トヨタブース
それでは、会場で注目を集めていた福祉車両を紹介していこう。グループ企業として、合同でブースを展開していたトヨタとダイハツでは、それぞれの強みを活かした幅広いラインアップをディスプレイ。自動車の世界では、電気自動車がひとつのトレンドとなっているが、トヨタではEV技術の活用として「歩行領域EV 車いす連結タイプ」の体験走行を実施していた。これは車いすに取り付けることで、簡易的な電動車いすにするというアイデアで、まだコンセプトモデルの段階ながら、下り坂での速度制御など、EVならではの可能性を感じられた。また、数多くのラインアップにベースモデルの特性を生かした福祉車両を設定したり、車いすそのものを開発するなど多角的なアプローチが光る。
ダイハツブース
小型車を得意とするダイハツでは、主力モデルのタントが人気。タントは、従来どおりの福祉車両に加えて、要介護レベルの低いひとのための新しいジャンルにも挑戦。それがこの「タント ウェルカムターンシート」で、乗降時の負担軽減を最小限のアイテムと費用で実現している。開発には理学療法士などの専門家に加え、実際の高齢者の方々も参加。とくに助手席だけでなく後席への乗り降りをも楽にする「ミラクルオートステップ」、車体各所につける「ラクスマグリップ」は、まさに現場からの声が反映された技アリのアイテムだ。ダイハツらしい「良品廉価」の取り組みといえる。
日産ブース
日産ブースで一際目を引いたのがコンセプトモデル「Adventure Log Cabin 」。これは、「出かける喜びを、一人でも多くの方へ」という思いによって作られており、これまでにも各展示会でお披露目されてきた。最新バージョンでは、クルマへの乗り降りをサポートする助手席スライドアップシートに加えて、車中泊やロングドライブ時の休憩にも使えるベッドキットを装備。障がいを持つひとでもキャンプを楽しめるようになっている。ベッドキットの市販化は未定とのことだが、クルマの持つ楽しさを表現した福祉車両というアイデアに共感するひとが多いのではないだろうか。また、マイナーチェンジしたばかりの新型セレナの福祉車両もお披露目。モーターだけで走行する電動化で、自動運転技術を活用したプロパイロットも搭載している。
ホンダブース
開発段階から福祉車両を見据えた構造とすることで、福祉車両としての使い勝手を高めた好例といえるのが、ホンダの「N-BOX スロープ仕様」だ。すでに多くのユーザーからも選ばれているとおり、軽自動車であることを感じさせない優れた使い勝手を実現している。ヘッドレストをつけたままで格納できるリヤシートは、介助する方にとっても嬉しいポイント。ホンダはこうした福祉車両に加えて、事故や加齢によって運転能力が衰えてしまったドライバーが安全に運転感覚をトレーニングできる簡易型四輪ドライビングシミュレーター「Honda セーフティナビ」も手がけている。また、競技用車いすの展示など、多角的な視点で移動の喜びをサポートしている。
スズキブース
シンプルなつくりで価格を抑え、多くのひとに福祉車両を届けているのがスズキ。「車いす移動車」シリーズの中心価格は100万円台後半。助手席への乗り降りをサポートする「昇降シート車」では150万円が中心価格。このように価格を抑えながらも使い勝手や快適性についてもしっかり配慮しており、たとえば最新モデルの「スペーシア 車いす移動車」では、スロープをテールゲートと一体化することで介助する方の負担を減らしている。また、衝突被害軽減ブレーキといった安全技術も搭載する。
ヤナセオートシステムズブース
自動車メーカー以外にも福祉車両の展示があった。輸入車ディーラーとして長い歴史を持つヤナセのグループ会社であるヤナセオートシステムズは、メルセデスをベースにした福祉車両2台をアピール。いずれも市販車を福祉車両に改造したもの。バリアフリーな輸入車によってクルマのある人生をもっと長く楽しみましょうという新しい提案となる。
オフィス清水ブース
日本では福祉車両というと、自動車メーカーが用意した専用モデルが一般的だが、自分のライフスタイルにマッチした福祉車両を求めるひとたちもたくさんいる。とくに車いすドライバーにとっては、既存の車両を使いやすく改造する手法が一般的だ。オフィス清水は、そうしたニーズに応え輸入車・国産車の福祉車両改造を幅広く手掛けるスペシャリスト。この日は、助手席が回転してせり出し、そのまま車いすとして移動できる商品や、一般的なヒンジドアのクルマをスライドドアに改造して車いす収納機能を持たせた車両、車いすをルーフボックスに格納するシステムなどのデモンストレーションを実施していた。
丸菱工業ブース
ありそうでなかったアイデア商品が丸菱工業株式会社の「快転シート」。普通のクルマの助手席と交換することで、助手席回転シートの機能を持たせるというもの。クルマを買い換える必要がないため経済性に優れ、後にクルマを乗り換えてもシートを移設することができる。こだわりは純正シートと座面の高さを同じとすることで違和感をなくしたこと。写真の軽自動車用に加えて、普通車用もラインアップ。自動車メーカーにシートを納入しているスペシャリストのこだわりが詰まった逸品だ。
もはや「特別なクルマ」ではなくなった! ボーダーレス化が進む福祉車両【国際福祉機器展 H.C.R.2019】はBelieve - ビリーヴ ジャパンで公開された投稿です。
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