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アウディらしい丁寧な1台──新型Q8スポーツバックe-tron試乗記

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アウディらしい丁寧な1台──新型Q8スポーツバックe-tron試乗記

大幅改良を受けたアウディの新しいピュアEV(電気自動車)である「Q8スポーツバックe-tron」は、見ても乗ってもクオリティの高い1台だった! 小川フミオがリポートする。

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EVのカジュアル化が進んでいるなか、質感の高い1台を探すならアウディのQ8スポーツバックe-tronは有力候補。プレミアムクラスにふさわしいと思える乗り味を持つクルマだ。スタイリッシュさやエレガンスを求めるひとには、とりわけ「Q8スポーツバックe-tron 55 quattro S line」がいい。

e-tron(イートロン)と名付けたピュアEVは、このセグメントの先駆けで、スムーズな加速感と、作りのいい車体と、よい仕上げのインテリアが強く印象的だった。新しいプレミアムクラスの誕生だ、と、私も感心したものだ。

2023年3月に発表され、内容の改良とともに新しい名称になって、同年秋に日本発売された際は、ハンドリング、乗り心地、動力性能もアップデート。アウディならではのキャラクターをしっかりそなえた出来映えで、私はもう一度感心してしまった。

ドイツの競合ブランドのEVは、グリルが輝いたり、インテリアのライティングやサウンドなどにやたら凝ったりしたモデルが多い。Q8スポーツバックe-tronはそれらと較べると“アンダーステーテッド”つまり演出は控え目。質感で勝負というかんじだ。

2024年3月に東京都内でドライブしたQ8スポーツバックe-tron 55 quattro S line(エスライン)は、従来と較べ大容量化した114kWh(プラス19kWh)の駆動用バッテリーを搭載。一充電あたりの走行距離も78km伸びて501kmと発表された。

今回のQ8スポーツバックe-tron 55 quattro S lineでは、電極間の隙間を出来るだけ詰めることでエネルギー密度を向上させたというのが、アウディによる説明。しかも、バッテリーセル内の化学物質の配合まで変更して、このエネルギー密度を上げたそうだ。化学の国=ドイツというイメージが、私の頭をよぎる。

しかも、バッテリーの総容量に対して駆動力などに使える正味エネルギー容量が増えているそうだ。くわえて、前後のモーターの効率を向上させるとともに、ボディの空力特性に磨きをかけることで走行距離を延ばしている。

急速充電にしても、アウディジャパンがグループ企業と展開している「プレミアムチャージングアライアンス」の150kWの高速充電に対応。e-tronは昔のままのe-tronではない、さまざまな面でアップデートされている。

変えるべきところは変え、残すべきところは残す。アウディのコンセプトはドライブフィールにおいても奏功している。先述したとおり、ドライブして感じるのは、浮ついたところが皆無であることだ。車重は2600kgあるけれど、加速において重さは意識させないいっぽう、乗り心地はしっとりした重厚感がある。

ステアリングフィールもうまく調整され、適度な重さをもちつつ、操舵は正確。ハンドリングは(こっちがパワフルなEVの加速に慣れたせいか)初代を中東で試乗したときアンダーステアに驚いたようなこともまったくなく、どんなコーナーでもスムーズに気持ちよくまわっていく。

クッションの効いたシートに身をあずけ、ユニークなデザインながら使い勝手のいいシフターや、各種ボタンなど操っていると、ひとつひとつが丁寧に味つけされているのに、改めて感心する。ジャーマンデザインにおいては、かつては、見た目だけでなく操作感が重視されていたことを、私は思い出すのだった。

Q8スポーツバックe-tronは、SUVタイプと、今回のファストバックタイプのスポーツバックが同時発売されている。荷物をたくさん運ぶひとならSUVかもしれないが、スタイルも大事という人には、スポーツバックのカッコよさは捨てがたい。エモーショナルに流れすぎず、それでいて、躍動感がうまく盛り込まれている。それがまさにアウディらしさなのだ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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