新車試乗レポート [2023.02.06 UP]
【スバル ソルテラ 4WD】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス
【トヨタ bZ4X 4WD】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
欧州や中国では、クルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も案外多いのでは?
とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか、見分けるのがまだまだ難しい。
本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。
今回フォーカスするのは、スバルがトヨタと共同開発した「ソルテラ」の4WD仕様。スバルの知見が盛り込まれたという4WD機構が搭載されたこのモデルは、どんな実力の持ち主なのだろうか?
【第36回 ボルボ XC40リチャージ】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
【第37回 ボルボ C40 リチャージ】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
【第38回 トヨタ bZ4X】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
【第39回 スバル ソルテラ】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
スバル ソルテラ(4WD)のプロフィール
ソルテラ(4WD)
トヨタとスバルが結成したプロジェクトチームの下、製品企画やデザイン、開発、実験を共同で行ったというスバル「ソルテラ」とトヨタ「bZ4X」。そうした生い立ちを持ち、生産もトヨタの工場で行われる2台は、メーカー間の垣根を超えた兄弟車の関係にある。
ここに紹介するソルテラは、bZ4Xと同様、両社のエンジニアが共同開発した“e-TNGA”というEV専用プラットフォームを採用する。ボディのスリーサイズも、全長4690mm、全幅1860mm、全高1650mmとbZ4Xと共通だ。
シャシーやパワートレインといったメカニズム面も、ソルテラとbZ4Xは大半を共用する。そのため、今回比較テストをおこなった4WD仕様の場合、トヨタのbZ4Xもスバルのテクノロジーである“X-MODE”を採用する。
また、ソルテラとbZ4Xはともに210mmという最低地上高を確保するが、これはスバル側が悪路走破性の向上のために強く主張した結果だ。同様に、2台の前後オーバーハングが短い点も、アプローチアングルとデパーチャーアングルを稼いで悪路走破性を重視すべきという、スバル側の主張が受け入れられた部分だという。
エクステリアやインテリアのデザインは、わずかながら2台の間で差別化が図られている。エクステリアでは、ヘッドライト、フロントバンパー、リアコンビネーションランプ、アルミホイールなどが異なり、インテリアでは、スバル車特有の警告音やハーマンカードン製オーディオ、発熱エリアがbZ4Xより広いシートヒーター、上級グレード向けのタンカラーのレザーシートなどがソルテラ専用となる。
違いの少ない2台だが、その中でも差が大きいのは4WD仕様の走り味だ。ソルテラの4WD仕様は、bZ4Xの4WD仕様に対して電動パワーステアリングやサスペンションのセッティング、そして、ドライブモードの切り替えを3モード(bZ4XはFWD、4WDともに2モード)から選択できる点などが異なる。
これらの違いは、ソルテラがダイレクトでシャープなハンドリングを、bZ4Xが快適さ、しなやかさ、適度なスポーティさがバランスされた走り味をねらった結果といえるだろう。
ソルテラの駆動方式はFWDと4WDとが用意されるが、今回テストしたのは4WD仕様。フロントとリアにそれぞれ最高出力109ps、最大トルク169Nmのモーターを配置したツインモーター仕様となるのはbZ4Xと同様だ。1度の満充電で走れる航続距離(WLTCモード)は、4WD仕様で最長540kmとなる。
ちなみにFWD仕様は、最高出力203.9ps、最大トルク266Nmのモーターで前輪を駆動。1度の満充電で走れる航続距離(WLTCモード)は、最長559kmとなる。
なお、bZ4Xはサブスクでのリース販売のみとなるが、ソルテラは一般的な販売方法がとられている。この点が2台の間の最も大きな違いかもしれない。
■グレード構成&価格
・「ET-SS」<FWD>(594万円)
・「ET-SS」<4WD>(638万円)
・「ET-HS」<4WD>(682万円)
■電費データ
「ET-HS」<4WD>
◎交流電力量消費率
・WLTCモード:148Wh/km
>>>市街地モード:133Wh/km
>>>郊外モード:139Wh/km
>>>高速道路モード:162Wh/km
◎一充電走行距離
・WLTCモード:487km
ソルテラ(4WD)
【高速道路】20インチのスタッドレスタイヤを装着した影響かbZ4Xより12%ほど電費に差がついた
共同開発のトヨタbZ4Xと同日テストを先月のFWDに続いて行った。
先月はbZ4Xが20インチの標準装着タイヤ、ソルテラが18インチのスタッドレスタイヤ、今回はbZ4Xが18インチの標準装着タイヤ、ソルテラが20インチのスタッドレスタイヤとなり、タイヤによって電費に影響がある。
ソルテラ4WD、20インチのスタッドレスタイヤ装着車の高速電費は、制限速度100km/h区間のその1が3.6km/kWh、その4が5.0km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が4.8km/kWh、その3が4.1km/kWhだった。
今回はその1の交通の流れが良くて、8~9割方は制限速度で走れたので、いつもよりは電費が悪めに出ているが、実用的な数値とも言える。bZ4Xの4WDは4.1km/kWhでその差は約12%。18インチと20インチではWLTC高速モード電費で約10%の違いがあり、さらにスタッドレスは一般的に10%程度悪化すると言われているので、それなりに健闘していると言える。70km/kWh制限区間では比較的スムーズに流れたその2はまずまずの電費だったが、軽い渋滞がいくつかあって加減速が多かったその3ではbZ4X 4WDにやはり12%ほどの差をつけられた。
往路の高速テストコース
往路の高速テストコース。東名高速道路 東京ICからスタート。海老名SAまでを「高速その1」、海老名SAから厚木ICから小田原厚木道路を通り小田原西ICまでを「高速その2」とした。復路の高速テストコースは小田原厚木道路の小田原西ICから東名厚木ICを経由し横浜青葉ICまで走行。途中海老名SAで充電を行った
【ワインディング】回生ブレーキによる電力の回収はFWDモデルよりも少なかった
日本有数といわれる連続登り区間のターンパイク上りでは、20インチのスタッドレスタイヤはさぞ不利かと思いきや、bZ4X 4WDの1.4km/kWhを上回る1.5km/kWhだった。誤差の範囲でほぼ同等とみることができるが、50km/h程度の低速度で一定速で走る場面ではタイヤの不利があまり出ないとも思える。
また、スタッドレスタイヤも進化していて、シリカの配合率も多くなっているので転がり抵抗は意外と低く、10%も燃費が悪化するのは過去の話なのかもしれない。
下りでは電費計からの推測で3.0kWh分を回生。bZ4X 4WDも3.25kWhだったので同程度だ。両車ともFWDよりもわずかに少ない。回生ブレーキはツインモーターのほうが有利かと思っていたので、なんだか残念な気はする。
自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した
【一般道】電費悪化要因が多かったこともあり、実電費はWLTCに対し45%という結果に
一般道の電費は3.4km/kWhで、bZ4X 4WDの4.5km/kWhに対して24%ほどの差をつけられた。WLTC市街地モードでは4WDの18インチと20インチの差が約5%。それを考えるとスタッドレスタイヤとはいえ、ちょっと差が大きい。
今回は、bZ4X 4WDもあまり電費がいいとは言えず、いつもよりストップ&ゴーが多かったのかもしれない。WLTC市街地モード電費は7.51km/kWhで達成率は45%。冬場、20インチのスタッドレスタイヤ、交通状況など電費悪化要因が多いと、ここまで落ち込むこともあるということだ。
東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した
【充電】バッテリー保護は大事だが、実用性を高める工夫も期待される
海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません
スタート時の走行可能距離は291km(エアコンオン)で、120.3km走行して復路・海老名サービスエリアに到着したときには走行可能距離168kmになっていた。
高出力タイプの90kWの急速充電器を30分使用して23.6kWhを充電し、走行可能距離は223kmまで回復した。出力は充電開始直後は25kWしか出ておらず、終了間際でも36kW、平均47.2kWと物足りなかった。トヨタのBEV実用情報を見ると、バッテリーが低温だと充電されにくくなるとあり、90kWの充電器を使った場合、外気温が10~30℃に比べて-10℃だと45%ほど充電量は減り、外気温0℃でも20%程度は減るとある。過去にまったく同じ充電器を使ってアウディRS e-tron GTは平均出力78.4kW、30分で39.2kWhが充電できたので、今回は約40%減。とすると、外気温-10℃前後のバッテリー温度と判断されて充電量が絞られていたと予測できる。ちなみにこのときの外気温は充電開始時も終了時も7℃だった。
バッテリーを傷めない処置は大切だが、実用上はもう少し改善する工夫が必要だろう。テスラはスーパーチャージャーを目的地に設定すると到着するまでにバッテリー温度を適切に上げてスムーズに急速充電がなされるようになっている。
前席とのゆとりはかなりあり、足元もフラットでかなりゆとりがある
ソルテラ(4WD)はどんなEVだった?
テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏
ソルテラはbZ4Xに比べるとダンパーの減衰力を高めに設定し、スポーツモードやパドルスイッチを装着するなど、スバルらしいドライバーズカーに仕上げて差別化を図っている。
今回はスタッドレスタイヤだっため、ダンパーの硬さがタイヤの柔らかさで相殺されてしまっている部分はあったものの、凹凸を乗り越えた後の収束が素早く、上下動が後を引かないすっきりとした乗り味になっていた。また、任意に回生強度をかえられるパドルスイッチもEVドライブの醍醐味の一つだ。メーカーやモデルによって回生強度の考え方は違っていて、任意に選べる幅が広いもの、シンプルに2段階ぐらいで止めるものなど様々だが、個人的には選べる幅が広いほうが楽しい。スバルのEVは、今後も運転の楽しさを追求してくれそうだ。
ソルテラ ET-HS<4WD>
■全長×全幅×全高:4690×1860×1650mm
■ホイールベース:2850mm
■車両重量:2050kg
■バッテリー総電力量:71.4kWh
■フロントモーター定格出力:59.0kW
■フロントモーター最高出力:80kW(109ps)/4535~1万2500rpm
■フロントモーター最大トルク:169Nm(17.2kgm)/0~4535rpm
■リアモーター定格出力:59.0kW
■リアモーター最高出力:80kW(109ps)/4535~1万2500rpm
■リアモーター最大トルク:169Nm(17.2kgm)/0~4535rpm
■サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前後:235/50R20
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