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なぜトヨタはスポーツカーを復活させた? 86/スープラ 廃止から復活の理由

掲載 更新 81
なぜトヨタはスポーツカーを復活させた? 86/スープラ 廃止から復活の理由

■トヨタがスポーツカーを増やす理由

 かつてトヨタには、さまざまなスポーツカーやセダンに高性能エンジンを搭載した「羊の革を被った狼」のようなモデルがラインナップされていましたが、一度、それらのモデルが姿を消しています。

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 しかし、最近ではトヨタのスポーツカーラインナップが拡充し始めているのです。なぜ、トヨタはスポーツカーを再び増やし始めているのでしょうか。

 トヨタには、これまで「2000GT」、「スポーツ800」、「スープラ」、「セリカ」、「MR2/MR-S」、「レビン/トレノ」といったさまざまなスポーツカーがラインナップされていました。

 しかし、そのラインアップも次第に縮小され、2007年にMR-Sが生産終了となったことでトヨタからスポーツモデルが完全に消滅しました。

 効率や業績、数字だけを追い求めていくと「スポーツカーは不要」という考え方はビジネスとしては正論でしょう。その頃、トヨタは販売台数では世界No.1になりましたが、その一方でクルマ好きからの評価は最悪で、「トヨタはつまらない」、「欲しいクルマがない」とソッポを向かれていたのも事実です。

 トヨタ社内にはそんな状況を危惧し「ちょっと待った」を掛けた人達がいました。それが当時副社長だったモリゾウこと豊田章男氏とマスタードライバーの成瀬弘氏を中心に発足した“元祖”「GAZOO Racing」です。

 トヨタのモータースポーツへの挑戦を通じて「人とクルマを鍛える」という取り組みは有名な話ですが、それと同じタイミングで商品企画部に「BRスポーツグループ」、技術部の中に「BRスポーツ車両企画室」と呼ばれる期間限定の特別組織が生まれました。

 その目的はズバリ「今後のスポーツモデルを考える」です。そこから生まれたのが、スバルと共同開発により登場したFRスポーツ「86」、そして「スポーツコンバージョンモデル」でした。

 ちなみに“元祖”GAZOO Racingの発足当初は組織というより同行会に近いレベルでしたが年を追うごとに規模は拡大、2016年に社内カンパニー制度で「TGRファクトリー」、そして2017年には「GRカンパニー」とほかのカンパニーと肩を並べる存在に成長しました。

 その後、2019年に86の兄貴分として17年ぶりに復活した「GRスープラ」はBMWと共同開発が話題となりました。なかには「トヨタはスポーツカーを作れないので他社に丸投げした」と苦言を呈する人もいますが、それは大きな間違いです。その本質は86と同じくスポーツカーをビジネスとして成立させ継続させることにありました。

 ちなみにカンパニーになったことで、ワークスチームによるモータースポーツ活動やファン作りだけでなく、商品の企画/開発/製造/販売準備に至るまで、クルマ屋としてのすべての機能が与えられました。

 つまり、レースで培った技術やノウハウを量産モデルに活かしてビジネスをおこなうというサイクルこそ、GRカンパニーに与えられた最大の使命です。

 それは「スポーツカーを出したい」という気持ちがあっても、「気持ちだけでご飯は食べられない」ということに対する、現時点での最適解でしょう。

■スポーツカーをビジネスに! 豊田社長の信念とは

 実は86の弟分となるコンパクトFRスポーツ「S-FR」の開発が進められていましたが、開発中止の理由のひとつに「ビジネスとして成立しないため」があったそうです。その後、ダイハツとの共同開発で「GRコペン」が登場しています。

 恐らくトヨタほどの規模ならば単独でスポーツカー開発をおこなう費用を捻出するのは容易いことだったと思います。しかし、世に出せてもビジネスとして成り立たなければ、いずれ生産終了となります。

 つまり、社会情勢や景気に左右されないスポーツカービジネスをおこなうためには、今までとは違ったアプローチが必要だったのです。一度消滅させてしまったスポーツカーを復活させることがいかに大変であるかを、身を持って経験してきたトヨタだからこそのアイデアでした。

 その一方、2020年夏頃に発売予定の「GRヤリス」はトヨタ独自で開発されたモデルです。「市場規模も小さいスポーツカーを継続させる」という意味では86/スープラと志は同じです。

 しかし、GRヤリスには1999年にセリカGT-FOURの生産終了以降、失っていたスポーツ4WD開発の技術/技能を取り戻すというミッションもあり、そのためには自分達の手を使ってトライする必要があったといいます。

 ただ、そこまでしてスポーツカーを作る理由はどこにあるのでしょうか。GRカンパニーの友山茂樹プレジデントはこのように語っています。

「スポーツカーはたくさん売れる物ではありません。多品種/少量生産はトヨタがもっとも苦手とする部分です。『いいスポーツカーを開発し、適切な価格で売れる力を持つ事』、実はそれができる自動車メーカーは、モノ作りの力がシッカリあると思っています」

※ ※ ※

 筆者(山本シンヤ)は以前、豊田章男社長に自身を育てた相棒であり同士である先代スープラ(A80型)と新型スープラ(A90型)に共通する味を聞いたときのことを思い出しました。

「スープラはBMWとの協力で生まれたモデル、さらに弟分の86はスバルとの協力で生まれたモデルになります。どちらも“社長”としてトヨタの工数をスポーツカーに割ることができず、結果としてこのようなクルマになりましたが、スープラ/86も『トヨタの味』になっており、そこは素直に嬉しい。つまり、成瀬さんが育てたメンバーが今もその味を受け継いでいるのです」

「ガソリン臭くて、燃費が悪くて、音がいっぱい出る……そんな野性味あふれたクルマが好き」と語る豊田社長だからこそ、「スポーツカーを継続させる」ことへのこだわりこそが、現在のトヨタのスポーツカーラインナップに表れているのです。

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みんなのコメント

81件
  • 大した車を乗っていない奴らほどケチをつける。
  • GRヤリスはかなり興味がある。
    300万円の欧州コンパクトハッチを考えていたけど、もう少し資金を貯めようかなー?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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