先日行なわれたF1モナコGPは、スタート直後に赤旗中断となったことが発端となり、ほとんどのドライバーが1セットのタイヤでほぼレース距離を走り切ることを目指した。その結果レースペースは著しく遅くなり、各方面から不満の声も上がった。
これに対処するために、レースで使えるタイヤをソフトタイヤのみにしてはどうかという提案もなされているが、F1のオフィシャルタイヤサプライヤーを務めるピレリは、ソフトタイヤのみに限定することで、エキサイティングなレースが生み出されるという考えには疑問を呈した。
■F1がF2より遅い? 超スローペースとなったF1モナコGP、現代F1との相性の悪さが浮き彫りに
2024年のモナコGP決勝は、スタート直後に大クラッシュが起きたことで早速赤旗中断。この赤旗中断時にはタイヤ交換義務を消化することが許されているため、ほとんどのマシンがここでタイヤを交換し、残りの77周を1セットのタイヤで走り切ることを目指した。
つまりノンストップで77周を走らなければならないということであり、それを達成するためにはタイヤを極度に労わる必要があった。そのため各ドライバーは、ペースを著しく落として周回を重ねることになった。通常のレースペースと比べれば、1周あたり5秒以上も遅いこともある、まさに異常事態だった。
これはモナコが抜きにくいコースであるため可能となったことではあるが、その結果コース上でのバトルが少なく、オーバーテイクも少ないというレースになり、刺激が少なかったという批判の声も数多く上がった。
この状況が再発することを防止するために、様々なアイデアが出されているが、その中でも注目されているのは、メルセデスのジョージ・ラッセルが提案した、モナコで使えるタイヤをソフトタイヤのみにするというものだ。これにより、レースをピットストップせずに走り切れるようになるのを防ごうという考え方だ。
しかしピレリのカーレースおよびF1部門責任者であるマリオ・イゾラは、ソフトタイヤのみでレースをする場合のシミュレーションデータが各チームから提供されるのは喜ばしいことだとしながらも、今回以上にタイヤをマネジメントするレースになるリスクも存在するため、劇的な変化になならないと考えている。
「確かにその提案は聞いたことがあるし、ジョージとも実際にその話をしたよ」
イゾラはそう語った。
「チームにシミュレーションを依頼して、どうなるかということを見ることはできると思う」
「しかし2018年にソフトタイヤを履いた時、私の記憶が正しければ、タイヤの本来の能力よりも8秒も遅いペースで走っていたはずだ。F2相当のペースだった」
「モナコの問題は、オーバーテイクができないことにある。だからラップタイムを2秒、3秒、4秒と落としても、誰にもオーバーテイクされない」
「私の意見では、重要なのはタイヤだけでなく、チームがピットストップするかどうかを決める理由についても考慮する必要があるということだ」
「それはタイヤのデグラデーション(性能劣化)、オーバーテイクのしやすさ、ピットストップのロスタイム……そういうモノの組み合わせなんだ。イモラがいい例だ。ピットストップで28秒もロスするなら、しない方がいいからね」
ピットストップの最小回数を、グランプリごとに設定するという案もある。しかしそうなった場合にも各チームが同じ戦略になってしまう可能性が高いため、付加価値をもたらすことはないだろうとイゾラは言う。
「何年も前に、この提案(2回のピットストップを義務付けること)があった時、我々は議論をし、チームは戦略エンジニアにシミュレーションを行なうよう依頼したのを覚えている」
「その結果、全員がほぼ同じ戦略を採ることが分かった。制約を追加しても、レースに対して異なる戦略や異なるアプローチを強制することになるわけではなく、同じ戦略に収束してしまうだけなんだ。これは、我々が望んでいることではない」
「我々が望んでいるのは、1回のピットストップと2回のピットストップに分かれ、異なるコンパウンドを使えるようになるということなんだ」
「この問題を解決するためには、すべての提案を検討し、シミュレーションを行ない、そしてどのアプローチが最善なのかを理解する必要がある」
モナコでの最善の解決策は何だと思うかと尋ねられたイゾラは、次のように語った。
「サーキットをもっと幅広くすることだ。ただ、建物を破壊することはできない」
「ここは、予期せぬことが起きない限り、基本的には土曜日の予選ですべてが決まってしまうという、独特のレースだ。しかし他のストリートコースでのレースでは、よりソフト目のタイヤを使うようにすれば、アプローチを少し変えて2ストップ戦略を選択肢のひとつにできるかもしれない」
「マイアミやラスベガスなど、新しいストリートコースでのレースについては、そう考えている。それは可能なことだ。でもモナコについては、正直に言って我々にできることはほとんどない」
ピレリは今週、ポール・リカール・サーキットで来季タイヤのテストを実施。その結果、オーバーヒートを抑えることを目的とした、新しいスリックタイヤのスペックがほぼ承認されたという。そして、ストリートサーキット専用とも言える、より柔らかいタイヤが登場する可能性もあるようだ。
「最近のF1ではストリートコースが増えており、より柔らかいタイヤが必要だ。新しいC6コンパウンド、そういうもっと柔らかいモノを投入することも検討されている」
「コンパウンドのレンジをもっと柔らかくして、オーバーヒートを軽減できるようにするつもりだ」
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みんなのコメント
例えばショートカットコースを追加して、「レース中に指定回数使う事ができる」とか、そんな突拍子もない事を考えないとレース中に抜くとは困難でしょう。