郊外や地方都市に住まうのであれば話は別だ。しかし東京あるいはそれに準ずる都市に住まう者にとって、「実用」を主たる目的にクルマを所有する意味はさほどない。
そんな状況下で「それでもあえて自家用車を所有する」というのであれば、何らかのアート作品を購入するのに近いスピリットで臨むべきだろう。
ギャラリー:可愛らしい現代版500で唯一オススメしたい、2気筒ターボのツインエア1957年に登場したNUOVA500。丸みを帯びたモノコックボディの後部に空冷2気筒479ccエンジンを搭載し、大人4人が乗ることのできるスペースも確保している。1975年まで生産された人気モデルだった。ツインエアは電動ソフトトップを備えたカブリオレの500Cにも、上級仕様のラウンジ(295万円)でラインナップする。写真は2018年に登場した限定モデルのザッフィロ。2気筒ターボの魅力を引き出すMTモデルも限定モデルなどで度々登場している。こちらは2019年に80台の限定で販売された、500Sマヌアーレ・ロッサ、5MTが組み合わせられ、価格は246万円だった。日本イタリア国交150周年を記念して、2015年に日本限定150台が販売されたジュニオ。FCAのデザイン部門であるチェントロスティーレが特別にデザイン、ダッシュボードやBピラーには現行500のデザイナー(ロベルト・ジョリート)のラフスケッチを、ホイールキャップには円周率が施されている。価格は271万7280円とされた。T.Antoine/ACE-TEAM2019年に120台の限定で販売された特別仕様がユニセックス。ポルトローナ・フラウ社製レザーシートを採用し、新車時価格は277万円であった。なお、オペラ ボルドーの外装色にはボルドー/アイボリー(50台限定)とブラウン/アイボリー(20台限定)の内装色が用意されていた。2018年の一部改良でApple CarPlay/Android Auto対応のインフォテインメントシステムを採用。日本では2011年3月から販売されているツインエア。875ccの直2ターボで、油圧式吸気バルブ制御システム(マルチエア)を採用する。Aldo Ferrero Photographer丸いヘッドレストのシートが特徴的なインテリア。(写真は欧州仕様)FIAT500すなわち明確な実益だけをそこに求めるのではなく、「己の精神に何らかの良き影響を与える」という薄ぼんやりとした、しかし大変重要な便益こそを主眼に、都会人の自家用車選びはなされるべきなのだ。
そう考えた場合におすすめしたい選択肢のひとつが、フィアット500の「ツインエア」というグレードだ。
フィアット500というクルマ自体については、決してカーマニアではないタイプのGQ読者諸兄でもある程度はよくご存じだろう。
劇画/アニメ『ルパン三世』の劇中車としてなじみ深い往年のフィアットNUOVA 500(ヌオーヴァ チンクエチェント)のデザインテイストを現代に蘇らせた、2007年からイタリアのフィアット社が製造販売している可愛らしいコンパクトカーである。
現代版フィアット500は可愛らしいがゆえに、ともすれば「女子供(おんなこども)」のためのクルマととらえられることも多い。
そして筆者もまた、心のどこかで少しだけそんな見方もしていることを、特に強くは否定しない。今どき「女子供」などというフレーズの使用が許されるかどうかは別として。
Aldo Ferrero Photographer自動車には不向きとされた2気筒エンジンに挑戦全体のデザインは少々甘ったるく、実用コンパクトのくせに居住性をシビアに突き詰めた形跡は見当たらない。そして中心的なグレードに搭載されていた1.4リッターエンジンはやや眠く、その下の1.2リッターエンジンは「遅い」。さらに言ってしまえば「デュアロジック」というセミATはどうにもこうにもギクシャクしがちなため、走っていて今ひとつ気持ちがよろしくない。
異論反論もあるとは思うが、筆者個人のフィアット500に対する印象はおおむね上記のとおりだ。つまりは「デザインだけのクルマ。まぁあのデザインがお好きなら、いいんじゃないでしょうか? 」ぐらいの感じである。
だが、今回推したい「ツインエア」というグレードだけは話が別だ。
「排気量0.9リッターの2気筒ターボ」という、自動車用エンジンとしてはちょっと変わった方式の「ツインエアエンジン」を搭載しているグレードが、ここで総称しているツインエア。そしてこのエンジンが、というかこのエンジンを搭載しているフィアット500が、とにかく素晴らしいのだ。
2気筒の4サイクルエンジンというのは構造上──マニアックで油っぽい説明は割愛するが──どうしても大きな振動を発生させる。
ツインエアエンジンの場合はバランサーという部品がその「一次振動」と呼ばれる振動を軽減させているのだが、このバランサーは「二次震動」という振動を低減させる効果はないため、稼働中のツインエアエンジンはどうしたって振動が大きい。
ギャラリー:可愛らしい現代版500で唯一オススメしたい、2気筒ターボのツインエア1957年に登場したNUOVA500。丸みを帯びたモノコックボディの後部に空冷2気筒479ccエンジンを搭載し、大人4人が乗ることのできるスペースも確保している。1975年まで生産された人気モデルだった。ツインエアは電動ソフトトップを備えたカブリオレの500Cにも、上級仕様のラウンジ(295万円)でラインナップする。写真は2018年に登場した限定モデルのザッフィロ。2気筒ターボの魅力を引き出すMTモデルも限定モデルなどで度々登場している。こちらは2019年に80台の限定で販売された、500Sマヌアーレ・ロッサ、5MTが組み合わせられ、価格は246万円だった。日本イタリア国交150周年を記念して、2015年に日本限定150台が販売されたジュニオ。FCAのデザイン部門であるチェントロスティーレが特別にデザイン、ダッシュボードやBピラーには現行500のデザイナー(ロベルト・ジョリート)のラフスケッチを、ホイールキャップには円周率が施されている。価格は271万7280円とされた。T.Antoine/ACE-TEAM2019年に120台の限定で販売された特別仕様がユニセックス。ポルトローナ・フラウ社製レザーシートを採用し、新車時価格は277万円であった。なお、オペラ ボルドーの外装色にはボルドー/アイボリー(50台限定)とブラウン/アイボリー(20台限定)の内装色が用意されていた。2018年の一部改良でApple CarPlay/Android Auto対応のインフォテインメントシステムを採用。日本では2011年3月から販売されているツインエア。875ccの直2ターボで、油圧式吸気バルブ制御システム(マルチエア)を採用する。Aldo Ferrero Photographer丸いヘッドレストのシートが特徴的なインテリア。(写真は欧州仕様)FIAT500具体的には、低回転域では「ドコドコドコドコ……」というハーレー・ダビッドソンのような感じで( ? )回り、そこから回転を上げていくと「ドコドコ……ビイイイイイイイイイイ! 」というニュアンスに変わる……と書いて伝わったかどうか不安だが、まあとにかく「昔のオートバイみたいな感じ」と思っておけばほぼ間違いない。
で、このドコドコビイイイイイイイ! の感触が妙に有機的で、大変に気持ちがよろしいのである。クルマやバイクのエンジンというのは生き物にたとえられることも多い文学的なマシナリーだが、ツインエアの場合は「なんかヘンな生き物を1匹、ボンネットの下で飼ってる感じ」とたとえられるだろうか。
そしてその「ヘンな生き物」の鼓動は決して不快ではなく、むしろ郷愁や、人間の生物としての根源みたいなものを想起させる、好ましき振動なのだ。
またフィアット500ツインエアは振動と鼓動だけが売りのクルマでは決してなく、けっこう速いクルマでもある。
いやもちろん、ターボチャージャー付きとはいえたかだか排気量0.9リッター/最高出力84psであるため、当然ながら本格スポーツカー的に速いわけではない。だが、カタログ上では最高出力100psとなっていた1.4リッターエンジン搭載グレードより──錯覚かもしれないが──84psであるツインエアのほうが圧倒的に速く感じられるものだ。
さらにいえば、前述したセミAT「デュアロジック」のギクシャク感も、ツインエアではなぜか低減されている。機構的には他グレードのデュアロジックと同じはずだが、ツインエアの車両重量が軽いからだろうか? わからないが、とにかく筆者は、ツインエアではデュアロジックのギクシャク感が気になったことは一度もない。
そのようなフィアット500ツインエアで街や高速道路を疾走するのは──その小ぶりな寸法やイタリア車ならではの良好な足回り性能と相まって──ひたすらの快感であり、快感のあまり「軽い風邪程度ならコレで治ってしまうのでは? 」と錯覚してしまうほどである。
気軽に買って気軽に乗り回すのがツインエア「らしい」フィアット500のツインエアを新車で買うとなると、「ツインエアポップ」というシンプルな仕様が車両241万円で、「ツインエアラウンジ」という上級仕様が276万円。輸入車としては手頃なプライスゆえ、これら新車を注文するのも悪くないだろう。
しかし昨今の中古車マーケットでは比較的低走行なツインエアもけっこうお安く出回っているため、個人的には中古のツインエアを気軽に買い、気軽に乗り回すほうが「らしい」とは感じている。具体的には走行2万km台までのフィアット500ツインエアが、車両98万円とか110万円ぐらいから多数見つかるはずだ。
さらに言えば、中古車マーケットにて「ツインエアの限定車」を探してほしいとも思っている。
白やら赤やらの一般的な(中古車市場の中心を占める)ボディカラーも、決して悪いとは思わないが、やや「ありがち」な気がしないでもない。
T.Antoine/ACE-TEAMだが同じツインエアの中古車でも、それをベースに作られた限定車(フィアット500には限定車がやたらと多い)、例えば「ジェニオ」というやつであればボディ色が「グレイ ポンペイ」という絶妙なメタリックグレーとなり、「ユニセックス」という限定車では「オペラボルドー」という上品なワインレッドが、ボディまたは車内のレザーシートに用いられている。
上記2モデル以外にも(その中古車がたまたまそのとき流通しているかどうかはさておき)かなりの種類があるツインエアベースの限定車を選べば、ヘンな生き物的な好ましいエンジン鼓動と同時に「シックなたたずまい」すらも得ることができる──という寸法だ。
まあ好き嫌いは分かれる存在かもしれないが、「小さくて生きのいい、それでいてしゃれてるクルマ」を探しているならば、フィアット500ツインエアのユーズドカーににぜひとも注目していただければ幸いである。
あれに乗れば、前述した冗談のように「軽い風邪なら治る」かどうかは別として、少なくとも「軽度の鬱屈」ぐらいは、たちまちのうちに解消されてしまうだろう。
文・伊達軍曹 編集・iconic
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お疲れさまです。