マクラーレンは、McLaren P1のプロダクションバージョンを発表してから10周年を迎えた。2013年にジュネーブ・モーターショーでベールを脱いで以来、高性能ハイブリッドカーの先駆け的なモデルとして広く認められている。その進化は、革新的な最新モデルのMcLaren Arturaが示すとおりだ。
「McLaren P1」10の真実
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1.McLaren P1は、静止状態から300km/h(186mph)まで、わずか16.5秒で到達。伝説のMcLaren F1の記録を5.5秒も短縮
2.McLaren P1™は、排出量ゼロの完全なEVモードで、短距離の市街地走行が可能
3.McLaren P1のレースモードでは、車高が50mm下がり、スプリング・レートが300%上昇して、2Gを超えるコーナリングが可能に
4.McLaren P1の可動リアウィングは、ボディワークからの距離が公道では最高120mm、サーキットでは最高300mm延長
5.McLaren P1は炭化ケイ素を含浸させたカーボン・セラミック・ディスクブレーキにより、100km/h(62mph)からの制動距離わずか30.2mを実現
6.McLaren P1のエグゾーストは、F1スタイルのインコネル製で、エンジンからテールに向けて最短距離をたどり、重量わずか17kg
7.McLaren P1のステアリングホイールは、マクラーレンのレーシングドライバーが使うものと同様の技術で直径を精密に計算。その開発では、マクラーレンの歴代F1チャンピオンが使ったグリップをCADシステムでモデリングし、スキャンして正確なレプリカも製作
8.McLaren P1は、82人の技術者によるチームが4段階の組立工程ですべてカスタムビルド。組立開始から完成までの所要時間は、1台につき17日
9.開発プログラムにおいて、McLaren P1がテストで走行した距離は、地球15周分を超える620,000km(385,250マイル)以上
10.車名の由来は、F1レースで先頭グリッドを指す「P1」から。またMcLaren F1が当初「プロジェクト1」あるいは「P1」と呼ばれていたという歴史的意義も
McLaren P1は、「公道とサーキットの両方で世界最高のドライバーズカー」となることを目指して誕生し、この大きな目標を実現する理想的なモデルとして、デザインと技術仕様が決められた。2013年には、名高いニュルブルクリンクのノルトシュライフェで走行するなど、一連のテストと開発作業を行い、その間に残した記録によって、性能は実証された。
3.8リッターのM838TQ型ツインターボV8エンジンは、最高出力737PS(727bhp)を誇り、軽量エレクトリック・モーターの最高出力179PS(176bhp)と合わせると、総出力は916PS(903bhp)に達する。
100km/h(62mph)加速は2.8秒、0-200km/h(124mph)加速は6.8秒、そして0-300km/h(186mph)加速は16.5秒と、伝説のMcLaren F1の記録を5秒以上も短縮した。
加えて350km/h(217mph)の最高速度もMcLaren P1の魅力と名声を高めたが、何といっても、瞬時のスロットル・レスポンスとトルクギャップを埋める効果こそ、電動化によって現代ターボ・パワートレインの強化が可能だということを証明した。
さらに、ガソリンと電気によるハイブリッド・パワートレインでベンチマークを築いただけでなく、このアルティメット・ハイパーカーは、マクラーレンの代名詞である2つの強み、軽量化と卓越したエアロダイナミクスにも支えられた。
McLaren P1のコアは、ルーフも含むカーボン・ファイバー製モノコックの「モノケージ」で、マクラーレンのスーパーカー12Cで使われた構造「モノセル」の発展形。これが重量最適化の鍵となって、最小乾燥重量1,395kg(3,075ポンド)、DIN重量1,490kg(3,285ポンド)が達成された。
軽量化の飽くなき追求は、今もマクラーレンの優先事項の1つとなっている。2023年、同じく高性能ハイブリッドのArturaは、極限を追求した限定生産ハイパーカーに比べて、より装備の充実したシリーズ生産スーパーカーでありながら、DIN重量1,498kg(3,303ポンド)を達成している。
McLaren P1のカーボン・ファイバー製ボディパネルは、1つの大きなクラムシェルを構成。一体成形のフロントパネルとリアパネルが中央のモノケージに取り付けられ、残りは リアの小型アクセス・フラップ2枚、フロント・ボンネット、そして2枚のドアとなっている。
ボディパネルの総重量はわずか90kgで、驚くほど薄いと同時に、極めて高い強度を誇る。ハイブリッド・バッテリーは、カーボン・ファイバー製モノケージ内部の低い位置に搭載され、重量わずか96kg。重量を最大限に削減するこの哲学も今日まで受け継がれ、細部にまで注意を払う同様の手法がArturaでも生かされた。
なお、McLaren P1にはフロア・カーペットが存在しない。軽量化に不利と判断されたためである。
また遮音材もない。ガラスは、軽量化のため新たに開発。ルーフの超軽量ガラスは、化学的処理による強化で、2.4mmの薄さを実現。フロントガラスは、中間層のプラスチックを含めて厚さわずか3.2mmで、12Cの4.2mmのフロントガラスに比べて、3.5kgの軽量化を成し遂げた。
そして、McLaren P1の大型リアウィングは、最適なエアロダイナミクスを実現するよう、自動で調整される。サーキットでは最大300mm、公道では120mmまで後方へ伸びる。
これはマクラーレンのF1チームと同じソフトウェアと手法を駆使して開発された。またMcLaren P1のデザインにはDRS(ドラッグ・リダクション・システム)が取り入れられ、ダウンフォースを抑えて直線スピードを高める。これを、取り外し可能なフラップを使うのではなく、リアウィングの角度によって達成した。
加えて、CFD(数値流体力学解析)による空力モデリングと、風洞で空力パフォーマンスに多くの時間を費やした結果、最高速度より大幅に低い車速でも、600kgのダウンフォースを実現した。
McLaren P1は、発表と同時に大変な人気を呼び、発表からわずか数ヶ月で限定375台すべてが完売した。この375台のMcLaren P1プロダクションモデルのうち、最初の1台はアイス・シルバーのカラーで仕上げられ、2013年9月に完成。
そしてカスタマーオーダーの最後の1台は、2015年12月に完成した。このとき使われた鮮やかなパールセントオレンジは、独特の着色工程によって作り出され、「ヴォルケーノ・オレンジ」として、他のマクラーレンモデルでも指定できるようになった。
ジュネーブ・モーターショーでの登場から10年が経ち、今年はブルース・マクラーレンが会社を設立してから60周年の節目にあたるが、McLaren P1は今も、公道とサーキットの両方で、信じられないほどエキサイティングで、完成度の高いダイナミクスを誇る名車であり続けている。
先進技術とドライバー中心の理念を生かしたマクラーレンの歴代モデルの中でも、P1はアイコニックな存在だが、そのレガシーはさらに広く長期にわたって受け継がれている。
ドライビングの一体感を電動化によって成し遂げた先駆けとして、EV技術の印象を刷新し、画期的なスーパーカーのArturaが誕生。刺激的なパフォーマンスとドライビング・ダイナミクスにEV走行能力を上乗せする、というこの優れた組み合わせは、McLaren P1が切り開いたものである。
関連情報:https://cars.mclaren.com/jp-ja
構成/土屋嘉久
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みんなのコメント
やはりフェラーリとランボルギーニが双璧。
マクラーレンは頭二つくらい下だな。