■大阪の繁華街で、一風変わったタクシーが!
自動車業界に電動化の波が押し寄せる昨今、タクシーでも電気自動車(EV)を導入するケースが増えてきています。
そんななか、大阪にはテスラ「モデル3」で営業をおこなう個人タクシーがいるようです。なぜ、モデル3をタクシーに選んだのか、ドライバーに取材しました。
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週末の夜、大阪中心部の繁華街である心斎橋には、タクシーが長い車列を作っています。
トヨタ「JPN TAXI」や「クラウン コンフォート」といった定番の車種が並ぶ中、一風変わったタクシーが目に飛び込んできました。
角の少ない、なめらかなボディラインをもつそのクルマはモデル3。アメリカのEVベンチャーであるテスラのラインナップのなかで、もっともコンパクトなセダンです。
一瞬、タクシーの車列に並んで停車している一般車かと思われましたが、ホワイトのボディの上にはたしかに「アンドン」が黄色く光り、フロント助手席側には「空車」の赤い文字が見えます。
乗車しようと、意を決して後席左側に近づくと、海外からの旅行者が必ずといっていいほど驚くという自動開閉ドアではなく、運転席に座るドライバーの男性が、一生懸命腕を伸ばしてドアを開けてくれました。
しっとりとした黒のレザー調シートに座ると、センターコンソール中央に鎮座する15インチの大型タッチスクリーンが目を引きます。
また、後部座席まで続く全面ガラスルーフによって、タクシーとは思えない空間が広がっていました。
モデル3で個人タクシーの営業をおこなうこの男性は、それまでは日産「セドリック」で営業をおこなっていたそうです。その後、2020年9月に納車されたモデル3に乗り換え、現在に至ります。
航続距離がネックとなりやすいEVの難点ですが、普段の営業で電欠に困ることはないそうです。むしろ、困ったのは「料金メーターの取付」だと男性は話します。
一般的なタクシーは、アクセサリーなどを使用するためのACC電源から給電することで料金メーターを作動させます。
しかし、モデル3にはACC電源が備わっていないため、料金メーターの取り付けをおこなう専門業者に何度か断られてしまったそうです。
その後、料金メーターについては取り付けをおこなってくれる業者を発見できたとのことですが、後部の自動開閉ドアは構造上取り付けが困難なため、前述したように手動で開閉せざるを得ないようです。
このように、タクシーでの利用を想定して作られたクルマとは異なり、少々不便もあるようですが、EVならではのシームレスな加速や、低重心の安定感のある走りは、むしろタクシー向きだと感じました。
しかし、実際にはほとんどの乗客が、テスラ、あるいはEVだと認識してはくれないそうです。この男性は「多くのお客さまが『プリウス』だと間違える」と苦笑します。
このように、さまざまな不便もあるなかで、この珍しいEVをタクシーに選んだ理由についてこの男性は「テスラが好きだから」といった後、次のように詳しく説明してくれました。
「車両代や電気代を考えると、モデル3のコストが特別安いということはありませんが、最近はタクシー専用のLPガスも安くないので、モデル3が割高とも感じません。
ただ、そうしたコスト面よりも、せっかく個人タクシーとして営業するなら、好きなクルマに乗りたいという理由の方が大きいです」
※ ※ ※
この男性によると、テスラの個人タクシーは、東京に2台と富山に1台、そしてこの男性の1台だそうです。
東京の2台は「モデルX」、富山の1台は「モデルS」であるとのことで、モデル3の個人タクシーは、「少なくとも関西では1台だけ」と胸を張ります。
また、この男性は、狭い路地の多い大阪では、幅の広いモデルSやモデルXよりも、コンパクトなモデル3が向いているといいます。
海外では、ニューヨークなどでテスラを使用したタクシーの導入が進み、また、日本でも日産「リーフ」を使用したEVタクシーを一部地域で見ることができます。
充電設備の数も徐々に増えてきていることから、今後はさらにEVによるタクシーが増えるかもしれません。
ただ、実際にはJPN TAXIのようなタクシー専用車両のほうが、耐久性も高く、架装も簡単で、なおかつ日々のメンテナンスや故障時の修理がしやすいといった、営業上のメリットが多いのも事実です。
そのため、EV、なかでもテスラをタクシーとして使用するためには、この男性のような「好きだから」といったモチベーションが必要なのかもしれません。
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