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【ヒットの法則382】初代フォルクスワーゲン ティグアンは見かけ以上にオフロード走行をこなすタフなヤツ

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【ヒットの法則382】初代フォルクスワーゲン ティグアンは見かけ以上にオフロード走行をこなすタフなヤツ

2007年秋、フランクフルトモーターショーでフォルクスワーゲン ティグアンが世界初お披露目された。フォルクスワーゲンが満を持して発表したコンパクトSUVはどんなモデルだったのか、Motor Magazine誌のドイツ大特集の中から、ドイツ本国で行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年12月号より)

「ゴルフのSUV」というよりも「トゥアレグの弟」
未知のモノを理解しやすくするために、既存のモノに喩(たと)えて表現するというのはよくあること。例えば、ここで紹介するティグアンは、その存在が明らかになってからというもの、「ゴルフのSUV」などと言われてきた。確かにこのような表現方法で、わかりやすくなり理解が深まることはあるが、事実とはかけ離れたイメージを形成してしまうこともある。今回は後者、この表現は「はずれ」だった。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

そう、実際のティグアンは「ゴルフのSUV」ではなかった。この表現から想像されるモノよりも、確実にワンランク上に位置していた。反省を踏まえつつ、懲りずにまた喩えてみれば、「トゥアレグの弟」という方が、しっくりくるし、無難と言えそうだ。

さて、欧州では今、この手のコンパクトSUVがブームなのだそうだ。日本でも一時期、トヨタRAV4やホンダCR-Vなどが流行ったが、それが徐々に欧州へ伝播して行ったようなのだ。実際、欧州でのこのブームの火付け役は、トヨタRAV4、ホンダCR-Vであるという。その後、日本ではブームが下火となり、RAV4、CR-Vともに現行モデルは、日本市場よりも欧州などの海外市場を意識した造りになっている。

この日本車2台の他には、日産エクストレイル、ランドローバー フリーランダー、現代サンタフェ、オペル アンターラ、BMW X3などが、ティグアンのライバルとなる。

オフロード走行に配慮した装備、仕様が多く見られる
最後発であるだけに、さすがにライバルをリードするところは多い。さっそく、そのプロフィールを見ていくことにしよう。まず新しいコモンレールTDIを搭載し、2009年に発効するユーロ5排出ガス規制をすでにクリアしている点に注目したい。日本市場へのディーゼル投入は当面ないと思うので、日本のユーザーに直接関係はないが、ティグアンを紹介するに当たっては、押さえておかなくてはならないポイントだ。その新TDIは140psと170psの2種類が用意されている。

ガソリンエンジンはTSIが3種用意されている。1.4Lツインチャージャーが150ps、さらに2Lターボの170psと200psがある。新登場となった150ps仕様のTSIは、トゥーランなどに搭載されている140ps仕様にプラス10psが与えられたものだ。これは車重を考慮しての対応だろう。

サスペンションは、フロントがストラットでリアが4リンク。その内容をまたまた懲りずに喩えれば「前がゴルフで、後がパサート」ということになる。駆動システムは、来年にはFFモデルを投入するそうだが、当面はフルタイム4WDである「4MOTION」のみ。これは最新世代のシステムで、反応速度の速いハルデックスクラッチにより、通常のトルク配分(フロント:90%、リア:10%)から、極端な場合には瞬時にリアへ100%近くトルクを配分することも可能だ。

組み合わされるトランスミッションは6速MTが標準で、6速ATは170psと200psの2.0TSI、140psのTDIにオプション設定されている。なぜDSGではなくATなのかというと、それは過酷なオフロード走行を想定したため。急坂の上り下りなどでトランスミッションにかかる大きなトルク変動を考慮すると、DSGよりトルコン式ATの方がよいという判断をしたわけだ。

さらにステアリングにも、オフロード走行を意識した配慮がなされている。電動パワー式であることは驚くべきことではないのだが、システムそのものはラック&ピニオンではなくボール&ナットを採用している。オフロード走行時のステアリングユニットへのキックバックに配慮したものだ。後に詳しく述べるが、ボール&ナットであるにもかかわらず、オンロード走行でのリニアなステアリングフィールが実によい。この辺は見事だ。

オフロードへのこだわりの最たるものは、2種のボディバリエーションを用意したことだろう。「トラック&フィールド」という装備バージョンには、独自のフロントバンパーが与えられている。他のバージョンのアプローチアングルが18度であるのに対し、これは28度となっている。

インテリアもオリジナリティあふれる装備が目をひく。まずはRCD510ラジオ/ナビゲーションシステムというもの。これは400MHzのパワーPCプロセッサーと専用のグラフィックプロセッサーを持ち、さらに30GBのハードディスクも備える。SDカードスロットもあり、もちろんMP3ファイルにも対応している。そして、このシステム最大の注目点はオフロードナビゲーションモードで、地図データが存在しないエリアを走行するときに、500以上のウエイポイントを保存することができる。道なき道を進んで行っても、このモードを使えば迷うことなく戻って来られるわけだ。さらに、リアビューカメラ、パークアシスト、トレーラー牽引ユニットなどもオプション設定されている。また、6つのエアバッグ、ESPは全車標準装備だ。

ここまでのプロフィール紹介でわかるように、これはまさに「トゥアレグの弟」といえる個性を持ったクルマ。そして、見かけから想像する以上に、オフロード走行をこなす高い実力を持つ「タフなヤツ」と言えそうだ。

オン、オフを問わずに期待どおりの走行フィール
さて、実際にクルマを目の前にすると、明らかにゴルフより大きいことがわかる。おおよそ22cm長く、5cm幅広く、20cm高い。しかし、それはトゥアレグに比べると、33cm短く、12cm狭く、4cm低いということでもあり、なかなか手頃なサイズであると思わせる。RAV4、CR-Vとほぼ同サイズであると言えば、大きさについてのイメージは、さらに鮮明になるだろう。

ドライバーズシートに座って、インパネまわりを見渡すと、そのデザインがゴルフプラスと同じであることがわかる。そう、インパネデザインがゴルフプラスと共通であることは事前にわかっていたため、それがティグアンは「ゴルフのSUV」であるという誤解を生んだ1つの原因でもある。しかし、実物を目の前にすると、その質感の高さは相当なレベルにあると感心させられる。もちろん、素材の違いもあるのだが、同じデザインながら、ゴルフプラスとはずいぶんと印象が異なる。

試乗会に用意されていたのは、TSIの150ps仕様と、TDIの140ps仕様、いずれも6速MTだった。日本へは来年の後半に200psの2.0TSIの6速ATを導入するそうだが、その仕様はまだなかった。欧州でもこれが投入されるのは11月になるようだ。

まず、ステアリングを握ったのはTSI。試乗会の出発地点である空港近くの駐車場から、高速道路へ向かう。乗り心地は非常によく上質感がある。路面の小さな凹凸は軽くいなしてしまい、室内はしっとりとした空気に包まれる。かと言って、ステアリングフィールに曖昧さがあるわけではなく、しっかりとした手応えがある。ボール&ナットの電動パワーステアリングは、オンロードでも実によいフィーリングを提供してくれる。コーナーでもサスペンションはしなやかだし、SUV特有の腰高感もなく安定している。

ドイツ車は全般に、デビューしてからも公にアナウンスをしない改良を進めて熟成していくものだが、このティグアンは「いきなり熟成」しているような印象だ。ゴルフVやパサートで得たノウハウが活きているのだろう。

150psのTSIエンジンは、過給器が装着されているという感じがしない、滑らかな吹き上がりを見せる。ただ、さすがにボディが大きく、また4MOTIONであるため重い(ゴルフの140psTSIより約290kg重い)ので「軽快な加速感」とはいかない。それでも、6速MTを操って平坦な道を走っている分には、何ら不自由を感じることはない。

次いで140psのTDIにも乗ってみたが、これは非常に楽しかった。低回転で適度なトルクに乗って走る気持ち良さがある。ディーゼルとMTの組み合わせには、ガソリンとATとの組み合わせにはないドライビングプレジャーがあることがよくわかった。

オフロードコースを走る機会にも恵まれたが、予想どおりの高い走破性を見せた。秀逸なのは「トラック&フィールド」に装着されている「オフロードスイッチ」で、これをオンにすると、自動的にアクセルコントロールが行われ、7km/hで走り続けられる。下りの坂道に来れば、ヒルディセントコントロールも効く。

さて総合的な評価だが、まず言えるのは「ゴルフのような、しっかりとして、なおかつしなやかな走行フィーリング」が好きな人にはお勧めだ。そういう意味ではこのクルマ、トゥアレグよりゴルフに近い。適度な大きさで、十二分にスポーティな走行ができる。

また、今回、試乗できたのは、150psのTSIと140psのTDI、どちらもMTだったが、日本へ導入される予定の200psの2.0TSI、ATはかなり期待できそうだ。これならば非力と感じる場面はなくなるだろうし、より一層、ティグアンの持つスポーツ性が引き立ってくるに違いないと思うからだ。DSGでなく、トルコン式ATにしたということも、このクルマには正解だと思う。

サイズもRAV4やCR-Vと同レベルなのだから言うことなし。ただ気になるのは価格だ。200psの2.0TSIで、4MOTIONだからそれなりのレベルになる。パサートヴァリアントの2.0Tが384万円で、V6の4MOTIONが459万円だから、この間の価格設定になるのではないだろうか。装備内容にもよるが400万円前後か。

実はこの価格帯、3シリーズや、Cクラス、A4など、Dセグメント強豪のベーシックグレードが狙えるところでもある。フォルクスワーゲンとしては、これら強豪に直球のパサートで真っ向勝負するだけでなく、ちょっとした変化球が持てるわけだから、その点は心強いに違いない。2008年、この価格帯は激戦になりそうだ。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2007年12月号より)



フォルクスワーゲン ティグアン 150ps 主要諸元
●全長×全幅×全高:4427×1809×1683mm
●ホイールベース:2604mm
●車両重量:1546kg(EU)
●エンジン:直4DOHCツインチャージャー
●排気量:1390cc
●最高出力:150ps/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1750-4000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速MT
●最高速:192km/h
●0→100km/h加速:9.6秒
※欧州仕様

[ アルバム : 初代フォルクスワーゲン ティグアン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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  • トヨタのSUV買うならコレの中古安く買った方がイイのは間違い無い。
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