2019年7月17日午前10時30分。千葉県・市川市の村越祐民(むらこしひろたみ)市長は、公用車としてテスラ製の電気自動車を導入した問題に関して、説明をはじめました。
しかし、おこなわれた場所は市川市内のゴミ処理場。なぜ、村越市長はゴミ処理場を記者会見の場に選んだのでしょうか。
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なぜ新車価格1000万円超の公用車が導入されたのか「えっ、本当にここでやるんですか」
記者会見に先立ち、撮影の場所取りを始めたキー局のテレビカメラマンたちは驚きを隠し切れませんでした。
なぜなら、記者会見は市川市クリーンセンター(ゴミ処理場)の、焼却炉に向かってゴミ収集車がゴミをはき出すためのスペースでおこなわれたからです。
事前の資料で市川市クリーンセンターを指定されたことは知っていても、施設内の会議室などを想定していたマスコミ関係者がほとんどで、この状況はまったくの想定外でした。
会見中も、ゴミ収集車が頻繁に場内へ入るため、マイクを使って喋る市長の声が時々聞こえにくくなったほど。そんな状況が約1時間続きました。 会見の内容を紹介する前に、一連のテスラ騒動を簡単に振り返ってみましょう。
メディアが最初に大きく取り上げたのは、2019年6月末。
市川市議会の定例会で、新車価格が1000万円を超えるテスラ製の電気自動車導入が議題となり決議され、反対21:賛成20と、反対が1票上回るという結果になったことです。
ただし、すでにテスラ導入の予算は確定しており、議決には拘束力はありませんでした。
そして7月2日午後、村越市長は新しい街づくり政策である「いちかわ未来創造会議」に関する記者会見を開き、その後に副市長用として導入した公用車のテスラ「モデルX」の納車式をおこないました。
その際、テスラ導入に対するメディアへの説明が不十分だとして、テレビやネットで市川市テスラ騒動が勃発したのです。
今回おこなわれた記者会見の冒頭、村越市長は「公用車としてテスラ車を導入することは施政方針に基づいていますが、テスラ車が公用車として高額過ぎるという批判は受け止める」として、ふたつのことを実施するとしました。
ひとつ目は、現在の公用車とテスラ車とのリース費用の差額を、市長の給与から市に返納することです。具体的には、テスラの月額リース料14万5000円から現公用車の同6万円を引いた、8万5000円分となります。9月の市議会で条例をつくることで対応する方針です。
ふたつ目は、副市長用のモデルXに次いで、市長用の「モデルS」を8月末に納車予定としていましたが、これを「ペンディング、棚上げします」ということです。
このように、方針の変更を決めた理由について、次のようにいいます。
「7月2日の会見以降、テスラ車の車両価格のみに話題が集約してしまいました。本来は、街の将来像などと合わせて議論してほしかったのですが、私の説明のつたなさがあったと思います。そうしたなかで、新しい街のあり方という本来の議論を取り戻すため、方針変更を決めました」
ゴミ処理場で会見をおこなった理由とは 次に村越市長が説明したのが、なぜ市川市クリーンセンターを会見場所に選んだか、ということです。
千葉県・市川市 村越市長がおこなった会見の様子 その理由は、公用車としてのテスラ車導入が、市川市の環境政策の一環であることを強調したかったから、ということです。
市川市クリーンセンターは、ゴミを中間処理する施設として1994年に建設費250億円をかけて開設されましたが、焼却炉の老朽化が進み、近い将来に建て替えが必要です。
新設の費用には新たに250億円を見込み、市としては30億円の基金を積み立ててきました。ところが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの影響などで、昨今は建築資材や人件費が高騰し、現状での試算は400億円近くになります。
こうした費用を圧縮するための方法として、ゴミの収集回数を減らすなど、市民に向けたゴミを減らす運動を進めると同時に、生ゴミからのバイオ発電をおこなうなど、新しい技術の導入を検討しているそうです。
バイオ発電によって、最終的に新設するクリーンセンターの焼却炉を小さくすることで、全体の経費を少なくすることが可能となり、さらにバイオ発電を公用車のテスラ車を含めた電気自動車に活用する循環型社会を目指すとしています。
こうした社会のあり方を肌感覚でメディアに理解してほしいと考えた結果、極めて稀な記者会見の場となったのです。
気になるゴミの臭いですが、もちろんそれなりにありましたが、1時間の会見中に筆者を含めた取材陣が顔をしかめるほどの異臭ではなかったと思います。
また、テスラ車導入の意図としては当然、市川市が目指す新しい街づくり政策のひとつである「いちかわ未来創造会議」にも深く関係します。「テスラは同会議の正式な一員です」とのことで、今後は市内への充電インフラ整備をテスラ主導でおこなうなど、テスラと市川市との連携が具体化していくとのことです。
市川市のテスラ騒動。今後は、市川市から概算でも構わないので、数値目標を明確化したEV政策の説明が求められます。
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