昨年の東京オートサロンでのプロトタイプの発表と同時に始まったファーストエディションの予約開始など、鳴り物入りで登場したトヨタGRヤリスの発売と、筆者が即予約したファーストエディションを自分のものにしてから約1年が経った。
そんなタイミングもあり、ここでは筆者がGRヤリスを約1年&1万km乗った総括に加えて、GRヤリスはWRCをはじめとした国際ラリー参戦ベース車のため、一部で噂となっているホモロゲーション取得の真偽をお伝えする。
条件として「ベース車となるモデルが連続した12カ月間に2500台以上、車種全体で2万5000台以上という生産台数」が必要だが、今はどうなっているの!?
文/永田恵一
写真/中里慎一郎
[gallink]
■筆者のGRヤリス総括
筆者のGRヤリスは1.6Lターボ+4WDでトップグレードとなるRZハイパフォーマンスファーストエディションに先行車追従型のアダプィブクルーズコントロール(以下ACC)や自動ブレーキなどから構成される予防安全パッケージ、シート&ステアリングヒーター、寒冷地仕様といったメーカーオプションを付けたフルオプションに近い仕様で、ボディカラーはプラチナホワイトパールマイカだ。
筆者のGRヤリスはフルオプション仕様に近く、予防安全パッケージも付いているという
このGRヤリスに1年間乗った印象を部分ごとに見ていく。
■炸裂するような加速! 慣らし後は街中での扱いやすさも光る
●走り
1.6Lターボで272ps、リッターあたり170psというハイチューンなエンジンは、納車したばかりの頃は「1500rpm以上をキープしたい」という若干の低速トルクの細さも感じたが、慣らし運転がすんだ2000km以降はそんなこともなくなり、扱いにくさは皆無だ。
もちろん、公道で滅多に使うことはないが、アクセルを深く踏めば「ホントに1.6Lかよ」に感じるくらいの炸裂するような加速や3気筒エンジンながら振動のない6気筒エンジンのような重厚なサウンドも楽しめる。
ハンドリングは強化されたボディ剛性によるプレシジョン(操作に対する正確性)、ワインディングロードでは軽さ、ボディの小ささによりクルマがキビキビと動く適度なシャープさ、高速道路ではスピード違反が怖いほどの速度感の低さも含めたスタビリティ(安定性)の高さを味わえる。
スポーツ走行に関しては、筆者は氷上だけだが、4WDなのでノーズの入れ方にコツはいるものの、それさえ掴めばガンガンドリフトが決まるコントロール性の素晴らしさが確認でき、この日は走りまくっていた。また、VSCのトラックモード(スポーツ走行用)の賢さも感動モノだった。
●快適性
ロードノイズを含めたクルージング中の静粛性はスポーツモデルとしては及第点といったところだ。また、筆者のGRヤリスはACC付のためクルージングは楽チンなのに加え、4WDなので全天候型というのもあり、筆者のGRヤリスは筆者のGTカーでもある。
ただ、クルマ全体にダンパーだけが追いついていないようで、乗り心地は高速道路のつなぎ目のような小さな凹凸ではまずまずだが、荒れた路面では乗り心地や路面への追従の悪さを感じることもしばしばあり、近々ダンパーに手を加えるつもりだ。
走りと快適性に関してまとめると、GRヤリスの1.6Lターボ+4WDは初代86のコンプリートカーとなるGRMNのプレシジョン、マークX GRMNのコントロール性、80スープラのGT性能といった、トヨタのスポーツモデルの美点を集めたモデルという印象で、初期モデルから完成度が高い点にも感心している。
■ラゲッジはスペースは決して広い訳ではないが、実用性は充分
●実用性&インテリア
GRヤリスのリアシートはボディ後方に行くに従ってルーフが下がるデザインなので、頭上空間こそ狭いが、この点以外は2人が充分乗れ、実用的だ。
ラゲッジスペースはGRヤリスの1.6Lターボ+4WDはリアにバッテリーを積むこともあり、174Lと狭く、筆者がクルマに常備しているモノを積むと、それで3分の1程度を占めてしまう。それでも大きめのスポーツバッグひとつは積め、さらにリアシートを倒せばリアシート部分に自車のタイヤ4本が積めるのも確認しており、充分だ。
実用性をまとめると、単身者の筆者には申し分なく、取り回しを含めジャストサイズといえる。
インテリアで不満なのはメーター内に液晶で表示される油温計が小さくて見えない点だ。この点はGRヤリスには競技ベースのRC以外DA(ディスプレイオーディオ)というモニターが装備されるのだから、DAのなかにターボのブーストも含めた走行情報、特に水温、油温は数字で表示される機能が欲しく、そういったアップデートがあれば嬉しい。
●燃費
GRヤリスの実用燃費はアイドリングストップオフで乗って、市街地9~10km/L、郊外12~13km/L、総合すると12km/Lといったところだ。この燃費は筆者が自分のものにしたことがあるスポーツモデルと比べると初代86前期型の5%落ち、2.4LNAの現行BRZと同等で、性能を考えたら不満はない。
■不満はあるが、買ってよかった!
●そのほかの不満、総括
ここまでで挙げた以外の不満は何度か書いている着座位置の高さと、法規の厳しさもあり3000rpm以下のエンジン音&排気音が小さいことが原因と思われる、普通に乗っている時の楽しさ、ワクワク感が薄いことだけだ。
このあたりはシートとマフラーの交換で対応できそうなので、総合すると筆者のGRヤリスは40歳のメモリアルとして覚悟を決めた買ったクルマだったのもあり大満足で、「買ってよかった!」と断言するし、欲しいなら自分のものにすることを大いに薦める。
■GRヤリスの販売状況
まず、GRヤリスは日本で発売から今年9月までに約1万台が販売され、その内訳は、
・パワートレーン 1.6Lターボ+4WD 70%:1.5LNA+CVTのRS 30%
RSも意外に売れているようだ。
・人気ボディカラー プラチナホワイトパールマイカ
・人気メーカーオプション 予防安全パッケージ
ここにグレードはRZハイパフォーマンスが一番人気という要素を加えると、前述した筆者のGRヤリスはド真ん中のGRヤリスである。
続いて、9月までのグローバルでの販売台数は
日本 約1万台
欧州 約9500台
豪州 約2100台
その他 約1100台
合計 約2万2700台
グローバルでの販売台数を見ると、やはりこういった本格的なスポーツモデルを欲しい人は世界中にそれなりにいて、GRヤリスはそういった人たちに向けに充分売れていると言える。
■ホモロゲーション取得の真偽は!?
GRヤリスは国際ラリー参戦ベース車という生い立ちもあり、冒頭に書いたホモロゲーション取得は非常に重要である。GRヤリスは一部で「ホモロゲーションを取得した」という情報もあるが、そのわりにはそういった発表はない。
このあたりに関してトヨタGR広報部に確認してみたところ、「今年10月でホモロゲーション取得に必要な2万5000台の生産はクリアしており、それに伴い現在FIAに申請中です」とのことで、めでたい。また、購入という形でホモロゲーション取得に微かには貢献している筆者も、オーナーとして大変嬉しい。
ただ、「WRCで現在WRカーとなっているトップカテゴリーの規定が2022年からラリー1という市販車との関係がほとんどなくなっているのに加え、ハイブリッドカーとなるので、ホモロゲーション取得の意味は?」と感じる人もいるだろう。
また、「WRCのトップカテゴリーが2022年から前述の新規定になるため、そもそもGRヤリスの現行のWRカー規定で走れる可能性があったのは今シーズン後半だけだった。それがなくなったのに加え、今年のラリージャパン開催も見送られたのを見ると、GRヤリスは悲運だ」と思う人がいるのもわかる。
■それでもホモロゲ取得はGRヤリスに必要
ラリー参戦がプロモーションや市販車の開発にも役立ち、GRヤリスの存在意義はさらに際立つ
しかし、筆者はホモロゲーション取得により「そんなことはない」と断言する。なぜなら、WRカー規定の終了や今年のラリージャパン開催見送りの件は確かだが、ホモロゲーション取得によってGRヤリスもフォードフィエスタのように、実際のところはともかくとしても国際ラリー参戦に参戦しているラリー1以外のラリー2(旧R5、1.6Lターボ4WD)から入門カテゴリーとなるラリー5までいろいろなカテゴリーのラリーカーを作れる資格が得られるのだから。
また、このことによりGRヤリスが空力やボディ剛性強化のためいくらかの犠牲も払って3ドアボディとしたのも生きるのに加え、GRヤリスはかつてWRカーだけでなく市販車に近いグループNカテゴリーでも大活躍したインプレッサやランエボといった偉大な先輩の現代版的存在にもなれる。
その際にはラリー参戦がプロモーションや市販車の開発にも役立ち、GRヤリスの存在意義はさらに際立ち、青写真どおりとなるだろう。
というわけで、オーナーでもある筆者は今後、GRヤリスがモータースポーツでさらに活躍し、市販車もインプレッサやランエボのようにドンドン改良されることを願う。
同時に既存のGRヤリスにも盛り込める改良は、初代86&BRZの厚みのあるボルトや水野和敏さんが手がけていた時代のGT-Rのアップデートキットのように後からのインストールにも対応することにも大いに期待したい。
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みんなのコメント
んで、あれだけのパフォーマンスがあって燃費が10超えるってのは地味に凄い。
走りの面でも燃費の面でも軽さが生きてるんだろうけど、今の時代ハイパワーターボの四駆で、車重1200kg台ってのもまたすごい。
なので車外から聞くと迫力はイマイチ
近所迷惑にならないのは良い点ではあるが人工的なサウンドと分かってしまうとどことなく残念な気持ちになる