3.3L化したフルチューン2JZを搭載するイチヨン前期!
2JZスワップのルーツは生まれ故郷であるタイの流儀
「シンプル&クリーンを極めた漆黒のS14シルビア前期」2JZエンジン仕様のストリートファイター
シルビア/180SXの北米仕様である240SXは、彼の地でも走り屋グルマとして人気が高い。しかし、北米仕様が積むエンジンはKA24DEで、排気量こそ日本仕様が積むSR20に勝るが、とてもスポーティなエンジンとは言い難いスペックだった。
そこでアメリカの240SX乗り達は、こぞって日本からSR20DETを取り寄せてスワップを行い、パワーを追求。最近はコルベット等に搭載されているLS系のV8エンジンへ換えるのもポピュラーで、240SXは日本同様ドリフトやサーキット系ユーザーから熱い注目を集めるベース車両となっている。
この240SXのオーナーであるエディ(右)は、16歳の時にタイから移住してきたタイ系アメリカ人。最初の愛車はインテグラだったが、アメリカで開催されたD1グランプリを見たことですっかり影響され、240SXを購入。しばらくはノーマルで乗っていたが、すぐにカスタムプロジェクトをスタートさせた。
すでにアメリカでもSR20DETスワップは定番化している作業だったが、エディはあえて6気筒の2JZ-GTEをチョイス。これは『車種が何であれ2JZを積んでイジる』という彼の生まれ故郷であるタイのチューニング手法に倣ったものだ。
「タイではベンツでもBMWでも、何でも2JZに載せ換えるんだ」と言っていたが、実際タイでは2JZチューンが非常にポピュラーで、今でも現役のエンジンとしてドラッグマシン等に数多く採用されている。
そんなタイ流の手法を採り入れつつ、トータルでのチューン&カスタムは北米流なのがこのクルマのポイント。US製パーツと日本製パーツを上手く組み合わせ、ハイパフォーマンスカーらしく仕立てているほか、魅せるポイントの作り込みもショーカーレベルで行っている。
余計なハーネス類などが露出していない美しいエンジンルーム作りは、アメリカにおいてはもはやお約束だ。エクステリアはブラックトーンで統一しているが、エンジンルームはあえてゴールドにペイント。これはエディが「日本のトップシークレットをリスペクトしているから」だそうだ。
2JZ本体は3.3L化されており、腰下にもしっかり手を入れて780psを発揮。タービンはターボネティックスのGTK650、ECUは近年ユーザーが拡大中のメガスカートだ。
エクステリアはストリートカーらしい「シンプル&クリーン」がテーマなので、ブラックトーンで統一して派手なエアロパーツは一切排除。ブラックのボディにカーボンパーツの組み合わせで、黒い中にもトーンの変化を付けている。トランクに付く車名エンブレムを“240JZ”にアレンジして、静かにエンジンスワップをアピールしている。
ホイールはニューテックの鍛造モデル。トラディショナルな5スポークにステップリップのデザインだが、S14にはワイドなサイズをセットし、叩き出しフェンダーで対応している。実はホイールのカラーフィニッシュを左右で変えていたりもする。
ウィルウッドキャリパーとR1コンセプトローターを組み合わせたブレーキも、アメリカのチューニングカーらしいパートだ
。
インテリアメイクも凄まじい。ダッシュ周りの樹脂パーツの大半をカーボン地に変更。一部は赤ステッチのスウェード張りにアレンジされ、レーシーさと高級感を併せ持つ空間を作り上げた。バケットシート、ハーネス、ステアリングは全てOMPで、あえてJDMブランドをチョイスしていない。
後席は外され、パイオニアのアンプとウーファーをセット。こうしたオーディオ類もきっちりとパネルを製作した上でハメ込んでいるので、ただのドンガラ内装とは違う纏まりの良さを見せている。
エディ的にはこの240SXを「あくまでストリートカー」とするが、「シンプル&クリーンで、ディテールに拘る」ことを追求した結果、ショーカーとしても一級品レベルに到達。2012年のSEMAショーに出展した他、数多くのカーショーで“ベスト”のトロフィーを獲得。総数にして12本のトロフィーをこの240SXで手にしている。
日本車が世界中で売られるようになった昨今、日本車ファンもまた、世界中に存在している。そして世界中でチューン&カスタムが行われ、この世界は日々進化。この240SXは、タイ、アメリカ、日本のテイストが見事にミックスされた、その最前線を行く1台と言えるだろう。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Takayoshi SUZUKI
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