「M2」はBMWの高性能モデルを担うBMW M社で開発された最もコンパクトなスポーツモデルだ。
<レポート:繁 浩太郎>
最もコンパクトと言っても、3.0L直列6気筒DOHC ツインパワー・ターボ・エンジンを搭載し、その最高出力は272kW(370ps)、最大トルクは465Nm(47.4kgw)、さらにオーバーブースト機能により、一時的に500Nm(51.0kgm)まで引き上げられ、0-100km/h加速はわずか 4.3秒という高加速性能。
BMWでは、このM2をサーキット走行だけでなく日常走行にも優れていることを目指して開発したと発表している。BMW M社が誇る様々な技術のもと、またコンパクトFR構造により、日常走行でもその走り曲がる止る性能はもちろんデザインまで全て「歓喜モノ」で、まさに「駆け抜ける歓び」を具現化したものだ。早速、試乗結果をレポートしたい。
■M2の走り
その走りは、アクセルを踏み込むと当然のように0-100km/hまで一気に行ってしまう怒涛の加速。その間のクワンという加速音がサーキットでのレーシングカーを思い出させ、まずはひと踏みで官能の極致だ。
しかしその後、気持ちを落ち着けて高速道路の定速走行に入ると、最初に感じるのは「クルマが走りたがっている」。次に「タイヤが丸い」。なんだか当たり前の話のようだが、駆動系のストレスが全く無い感じ、とかよく転がる感じ、と言えば良いのか、とにかくアクセルは一定なのに、スゥーっと行きたがるフィールなのだ。こういうフィールというのは、ドライバーが感じる味というかまさに感覚で、絶対的な性能より達成が難しい部分とである。
次に、ゆっくりとレーンチェンジ。
実は直進状態からゆっくりとステアリングを切ると、M2のステアフィールの良さがよくわかる。結果は、ハンドルを切る量と重さの感覚と車体の動きが全くのリニアフィールになり、ドライバーとクルマとが一体になる。
一般的なスポーツカーでは、その性能を主張するかのように、切れすぎるモノが多くドライバーよりクルマが先にいってしまう感じになるものが多いのが現状だ。本当にドライバーとクルマとが一体になるという感覚はこういうことなのだと思う。
さらに、高速出口のランプウェイでハンドルを切り足していく走行でM2は真価を発揮する。ハンドルの切り始めから深く切り足していくその間、ハンドルの切り角と車体の動きが全くのリニアフィールでカーブのRに正対している。つまり、極端に言うとカーブのRの接線とクルマの向きが同じなのである。
一般的なクルマでは、カーブのRにクルマが正対せず、頭が外側へ突っ込むような感じになり、それをカバーすべく無理にタイヤで切ったりするので、フィールの良いコーナリングにならない。高性能なだけでなく、この一体感フィールがあるから、一般的な走行はもちろん、サーキットでの過激な走行でも操れ、それが「駆け抜ける歓び」につながるのだ。
さらにフィールと言えば、この直6 Mツインパワー・ターボ・エンジンは、高馬力、高トルクが目立つが、実はBMW伝統の「シルキーシックス」という言葉を思い出させてくれる非常に滑らかに回るエンジンなのだ。
最近のBMWの4気筒や3気筒は非常に滑らかに回るようになって感心していたが、この直6はただ滑らかに回るだけではなく、独特のまさに絹のような「ツルっとした」回転・加速フィールは唯一無二、たまりません。
ブレーキにいたっては、レース使用や高速まで考えてあるのでその制動性能の高さとまとわりつくようなフィールなどの全てを味わえるのだ。
このようにM2にはM2でしか味わえない高性能とフィールがあり、日本の道路でも十分に「駆け抜ける歓び」を愉しめるのだ。
■M2の走りを具現化するハード
M2には、その高度な走りを具現化するために様々な技術が投入されている。専用のピストン、クランク、ベアリング、プラグ。さらにサーキット走行前提の冷却システム、オイルシステム、トランスミッションオイルクーラー・・・。M2専用の軽量サス、変速ショックを殆ど感じない怒涛の加速を実現する7速DCT、アクティブ・デフとMコンパウンド・ブレーキシステム。などなど。
やはり、しっかりとしたハードの仕込みがあってはじめてアウトプットとしての性能が得られるということだ。また、クルマの大きさもスポーツ性能には大きく影響する。M2の場合は2シリーズクーペのトレッドを広げたものとなっており、そもそもスポーツカーに重要な軽さやコンパクトさをもったモデルとなっているのだ。
■デザイン
そのデザインは、2シリーズクーペを基本としているがシッカリした下半身骨格のスポーツカーデザインに生まれ変わっている。その中で特に「顔」は精悍だ。エアロダイナミクス・テクノロジーにより、一種レーシングカーのような造形で、堀が深く精悍な顔となっている。まさに、このM2の性能が伝わってくる「やる気な顔」だ。さらに、オリジナルの2シリーズクーペから大幅に広げられた前後トレッドに合わせて、前後のフェンダーは大きく張り出し、安定感があり、まさに走り性能を象徴するデザインとなっている。
簡単に言うと、「ドエライ迫力」。
また、リヤフェンダーの張り出したボディ表面には前輪タイヤで跳ね上げる小石があたり(チッピング)、髭面のようになり錆に至るのを防ぐ目的で、チヨット見た目ではわからないが、大きな透明シールが貼ってある。こうした、細かい部分まで考えられて作られているのには感心する
考えて造られていると言えば、歴代のBMW M車はラインアップの中で専用ボディカラーが与えられ、BMWとは異なる存在感を演出してきた。
今回試乗車の「ロングビーチ・ブルー・メタリック」も、鮮やかで綺麗なブルー色で、M2のインディビジュアル(individual)性を際立たせている。スポーツカーは特別なクルマだけに、そのクルマを象徴するカラーは大切だ。
■最後に
サーキットでの究極性能と日常走行での高い実用性の両立を目指して開発されたというM2は、日本の道路環境では当然全ての性能を味わえないものの、クルマとしてのポテンシャルの高さ、フィール関係は十分に味わえるものだった。
BMWはボディの大型化の流れの中で、コンパクトな2シリーズクーペをベースにしたM2の存在は、硬派なMとして存在できる。BMWの「駆け抜ける歓び」というスローガンを思い出させてくれる最高の1台が追加された。
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