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【マツダCX-30 オフロード試乗】新機能「OTA」とは 4WD車でSUVの真骨頂を評価 CX-5/8と比較

掲載 更新 12
【マツダCX-30 オフロード試乗】新機能「OTA」とは 4WD車でSUVの真骨頂を評価 CX-5/8と比較

秘密兵器は「OTA」

他のSUVに比べるとマツダ車は2WD比率が高めと聞いて、何となく納得してしまう。

【画像】マツダCX-30、CX-5、CX-8 オフロード走行【比較】 全81枚

理由の1つは「魂動デザイン」。個人的にはロングノーズ/ショートデッキの大排気量FRスポーツをモチーフとした流麗さが基本と捉えている。その感覚は陸上競技や競泳の選手を思わせる肉体美に近い。

もう1つはオンロードでのファン・トゥ・ドライブを軸とした「人馬一体」。この2面はクルマ趣味においてはとても魅力的だが、泥臭いタフネスとは対照的だ。

で、CX-30から採用された4WDの新機能の「オフロード・トラクション・アシスト(OTA)」である。4WD制御により悪路踏破性を向上させて走行性能面からラフ&オフロード適性を高め、アウトドアレジャー用途向けSUV市場対応力の強化を図った。

OTAはデフとブレーキを用いたトルク分配機能とトラクション・コントロール機能を融合させたもので、電子制御LSDあるいはスリップコントロールシステムと理解すればいい。

四輪の統合制御とは?

過大な駆動力を掛けた時に、接地路面の滑りやすさやタイヤ接地圧が4輪で著しく異なると、最も滑りやすい状態の車輪から空転を始める。

デフの差動作用があるため、一輪が空転すると他の車輪に伝わる駆動力も空転輪と同じになってしまう。例えば、一輪が宙に浮いた状態になれば路面に伝わる駆動力は0。エンジンパワーはすべて空転輪に流れて、接地輪には伝わらなくなってしまう。

そこで、中に浮いた空転輪にブレーキを掛けて、接地輪への駆動力を伝達するのが電子制御LSD。接地輪への伝達トルクは空転輪に掛けた制動トルクに比例する。同時に過大なトルクを抑制するためにトラクション・コントロールも介入する。

オンロード向けのプラットフォームや駆動系を採用するSUVのオフロード対応では定番の制御機能であり、OTAの狙いや基本制御もそれに準じている。

SUV 3モデル(AWD車)比較

試乗コースは、ラフ&オフロードでは定番の富士ヶ嶺オフロード。路面環境は整備された林道相応からトライアルステージ相応まで設定されている。

試乗車はCX-30、CX-5、CX-8の3モデルで、CX-30が林道相応のコースと公道、CX-5が急登降坂を含む荒れた林道相応、CX-8がトライアル志向のモーグルとすり鉢という組み合わせである。

CX-30と林道の組み合わせは「なんちゃってSUV」でなければ難なくこなせるレベル。

シャシー設定や電子制御LSDで悪路対応した2WD・SUVでも踏破が可能と思えるが、FFで踏破するには悪路走行の基礎知識が必要であり、相応の苦労もする。

CX-30 最低地上高175mm

4WDでも慎重さは必要だが、そんな状況でも安心して走れるのが悪路対応したSUVの強味。そのとおりCX-30も困難なく走行。OTAのスイッチもオフのままである。

CX-30の実質的な前身モデルとなるCX-3なら、このくらいの路面環境でも慎重な走行が必要だ。CX-3の最低地上高は160mmでしかない。

一般的な乗用車が150mmくらいなので、雪路などの轍跨ぎでもぎりぎり。

CX-30もSUVとしては余裕があるわけではないが175mmを確保。悪路での腹打ち頻度はかなり減少する。キャビンスペースの拡大と合わせて一段高まったアウトドアレジャー用途適性を確認できた。

CX-5 ヒルディセントの有無について

CX-5に用意されたコースはスタックの危険はないもののけっこうハード。オフロードコースとしては中級レベルであり、急登降坂だけでなく、岩・しゃくれで所々に左右段差も見受けられる。

CX-5の最低地上高は本格オフローダー並みの210mmなので腹打ちの心配はないが、SUVでは小さなアプローチアングルとオンロード向けサスチューンのため、慎重なライン取りで進める。アクセルやブレーキを用いて鼻先を持ち上げたり、ちょっとした運転小技も必要になる。多少空転する状況もあったが、ここもOTAオフで走破できた。

ここで気になったのは降坂制御。最近のSUVでは定番のヒルディセント・コントロール(HDC)がマツダSUVには設定されていない。HDCの機能は急降坂時、ブレーキペダル操作なしの低速維持。急降坂低速限定のクルコンみたいなものだが、速度安定と方向安定でかなり役立つ。

最近ではアクセルやブレーキの上書き操作やそれによる維持速度設定ができるものもあり、運転ストレス低減や扱い易さ向上の要点機能の1つとなっている。ローモード(超低速ギア)のないSUVほど有用性が増す。

滑り始めると減速困難、という程の勾配と路面μではないので、時としてABSを作動させながらさしたる不安もなく走り終えたが、HDCがないのはマツダSUVの課題の1つだ。

CX-8 対角線スタックせず

最後は最もスタックしやすいモーグル&すり鉢ルートのCX-8。

同車はハードウェア面ではCX-5のキャビン延長仕様だが、少し低くなって最低地上高は200mm。

230mm延長されたホイールベースによりランプブレークオーバーアングルも減少。腹打ちの可能性は高くなるが、段差に対する車両傾斜が減少するのでモーグル路には多少有利である。

モーグル路はOTAの効果が発揮しやすい状況。だが、最も厳しい状況でもある。

鼻打ち腹打ちを避けるためにゆっくりと進入する。左右逆位相で大きく変化する傾斜をなぞるように進める。負担重量の大きな前輪は路面をトレースしていく。片側の前輪が窪みに入ると対角上の後輪が完全に浮いてしまう。

通常モードでの走行では浮いた後輪にパワーが逃げて推進力を失ってしまう。

オフロード・トラクション・アシストON

まったく推進力が無くなるわけではないが、下がった鼻先を持ち上げるだけの駆動力はない。

OTAをオンにする。空転輪の空回りを抑制するとともに接地輪に駆動力が伝わり、ゆっくりと前進し始める。謳い文句のとおりである。

ただ、スリップコントロールの度合いは緩め。クルマによっては宙に浮いた車輪の空転を止めるほど強くブレーキを掛けるが、OTAは空転を少し抑えるくらいの制御。

さらに厳しい状況で強引に脱出を試み続けるとフェイルセーフが作動し、2WD(FF)に固定。これは発熱によるリアデフのリングギア保護のための措置。OTAの空転抑制が他の同様システムに比べて緩い理由はデフ容量の問題と考えていいだろう。

ラフ&オフロード対応力は向上したが、あくまでも現行マツダSUV相対であり、元設計から悪路用途を前提としたモデルと比較するとやはりオンロード志向が強い設計なのだ。

マツダはOTAについて悪路からの脱出が困難な状況においてトラクション性能を最大限に引き出すシステムと解説している。つまりスタックしそうな状況で作動させるものなのだ。踏破性を誇るでもなく自身を冷静に評価している。

「買い」か?

個人的な決め事で恐縮だが、パートタイム4WDの本格オフローダーで単独行で林道に入る場合は2WDを基本としている。

2WDで厳しくなったら4WD、4WDで厳しくなったらデフロックという具合に踏破性能レベルを上げて、最も踏破性能が高い設定を使うことになったら引き返す。帰還できなくなるリスクを最小限に抑えるためである。

OTAの踏破性能はラフ&オフロード視点で見ればそれほど高く評価できない。しかし、帰還するための最後の手段を備えたことは大いに評価できる。

トライアル競技でもなければ、何処まで行けたかよりも無事に帰還できることがSUVにとって重要であり、絶対性能はともかくとしてアウトドアレジャー向けSUVの資質は大きく高まった。

流麗なデザインやオンロードにおけるファントゥドライブが基本なのは変わらないが、SUVのカテゴリーコンセプトに目を向けたのは好感が持てる。これはCX-30がアピールする居住性やユーティリティにも当てはまる。

アウトドアレジャーを軸にした用途でマツダSUVを有力候補として挙げることは難しいが、スタイルやオンロードの走りに惚れてマツダSUVを選ぶなら4WD仕様を勧めたい。全開加速性能や燃費を除けばオンロードの走りでもFF車以上。そこにアウトドアレジャー用途の楽しみも加わって一石二鳥である。

マツダCX-30 XD Lパッケージ スペック

価格:330万5500円
全長:4395mm
全幅:1795mm
全高:1540mm
ホイールベース:2655mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:18.4km/L(WLTCモード)
CO2排出量:-
車両重量:1530kg
パワートレイン:1756cc直4ディーゼル・ターボ
使用燃料:軽油
最高出力:116ps/4000rpm
最大トルク:27.5kg-m/1600-2600rpm
ギアボックス:6速オートマティック

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