マクラーレン エルバ、デビュー3年目にしてオークションに出品
2024年6月28~30日、名門「ボナムズ・オークション」社がスイス西端のリゾート、シェゼレックスで開催した「THE BONMONT SALE」オークションでは、クラシックカーや近代スーパーカーなどが数多く出品されました。その公式ポスターやパンフレットの表紙、あるいはウェブ広告などでメインビジュアルとされたのは、マクラーレンが初めて開発・限定生産したオープン・ハイパーカー「エルバ」でした。
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「セナ」に近い性能を持つオープントップハイパーカー
2019年にアラブ首長国連邦ドバイにて世界初公開されたマクラーレン「エルバ」は、マクラーレン初のフルオープントップの公道向けスポーツカー。この新型車の名前は、1950~1960年代の英国で名を馳せたレーシングカーコンストラクター、フランク・ニコルズの「エルバ」社に由来する。
エルバは、マクラーレンの創始者であるブルース・マクラーレンが、彼のレーシング・プロトタイプ「M1」シリーズのカスタマーバージョンの製造を請け負ったもので、その最初のモデルは1964年ごろに製作された。ちなみにニコルズは、「彼女が行く」という意味のフランス語「elle va」に似ていることからこの名前を選んだといわれている。
エルバは、伝説的な「F1」、「P1」、「セナ」、「スピードテール」に続く「マクラーレン・アルティメット・シリーズ」の5番目のエクスクルーシブモデル。アメリカでのベース価格は169万ドルとされ、マクラーレンの「MSO」部門によって399台が製造される予定だったそうだが、のちに249台に下方修正。さらに最終的には149台に縮小された。
鋼管スペースフレームシャシーとグラスファイバー製ボディワークを採用したオリジナルのマクラーレン エルバとは異なり、21世紀版エルバは主にセナから流用したカーボンファイバー製で、シャシーとドア、シートはすべてこの軽量素材で成型されている。セナのブレーキキャリパーにチタン製を採用することでさらなる軽量化を図った。
エルバの最高出力は815馬力
そのかたわら、おなじみのドライサンプ式4L V8ツインターボエンジンは基本的にセナと共通ながら、セナの800psに対して、エルバは815psにアップデート。ハイブリッドモデル以外ではもっともパワフルなマクラーレンとなった。また、7速DCTとマルチモード電動油圧式の「プロアクティブ・シャシー・コントロール・サスペンション」システムもセナと同じ。ただしインコネルとチタンで作られ、3Dプリントされたチタン製フィニッシャーが際立つ、4本出しのエキゾーストシステムが新たに採用された。
くわえて時速25マイル(約40km/h)以上で作動する「マクラーレン・アクティブ・エア・マネージメント・システム(AAMS)」は、乗員が許容できないレベルの爆風を受けないように、ノーズからコックピット周辺に空気を送る(サイドウインドウや実際のウインドスクリーンはないが、必要であれば工場が無料で取り付けてくれる)。膝で操作するボタンでシステムのオン/オフが切り替えられる。
またコクピット内には、独立したHMIスクリーン、アルミニウム製エアベント、改良されたナビゲーションスクリーン、特徴的なインストルメントポッドとセンターコンソールが組み込まれているほか、シートは新素材のウルトラファブリック「合成皮革」でトリミングされており、見た目も感触も本物そっくりだが、耐摩耗性に優れているという。
中東で過ごしてきたエルバは、新車価格に及ばず
このほどボナムズ・オークション社が「THE BONMONT SALE」の目玉商品として出品したマクラーレン エルバは2020年9月20日に「マクラーレン・マスカット」を通じて、中東オマーン国内に新車で納車された個体である。
カーボンファイバー製のボディは、光沢のある「ブリティッシュ・レーシング・グリーン」×「アタカマ・イエロー」×「アニヴァーサリー・ホワイト」のクラシカルな「M1A」カラーで仕上げられ、同じくアニヴァーサリー・ホワイトのサークルに、ピュアブラックのゼッケン「9」が描き込まれている。
いっぽう、インテリアでありながらフルオープンゆえにエクステリアとしても視界に入るシートは「アタカマ・イエロー」に「ヴィンテージ・タン」のステッチが施され、コンソールはグロス仕上げのブリティッシュ・レーシング・グリーンにブラシ加工アルミニウムのトリムで仕上げ。むき出しのカーボンファイバータブと、コントラストをなしている。
そのほかの特徴としては、エアコンディショナーやマクラーレン純正の8スピーカー・オーディオシステム、路面の段差のためにノーズを数cm上げる「ビークルリフト」、カーボンファイバー製のエアダクト、バンパーのエクステンション、ステルス塗装のエグゾースト・フレーム、光沢のあるアタカマ・イエローにマクラーレンのロゴをあしらったブレーキキャリパーなどが挙げられる。
ホイールは、ステルスカット仕上げの施された5本スポークのノンダイヤモンドカットで、「ピレリPゼロ・コルサ」タイヤを装着する。
新車価格よりもリーズナブルに落札
くわえて今回の販売に際しては、ペアの専用ゴーグル、キー2本、専用ボディカバーにルーフカバー、専用の充電器、バッテリーコネクターが添付される。また、付属書類としてはオーナーズマニュアルやマクラーレン社発行のパンフレット、2021年8月30日付の税金納付書と購入時のインボイス、納品書、各サービスの請求書、2024年2月5日付のオマーン車両輸出証明書、オマーン交通当局発行の登録書類のコピーなどが含まれる。
そしてボナムズ社は、この個体に70万~120万スイスフラン(約1億1886万円~2億377万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定。迎えた競売では、エスティメートの想定に収まる92万スイスフラン、日本円に換算すると約1億5600万円というハンマープライスで落札されることになった。
マクラーレン エルバが「ジャパン・インターナショナル・ボートショー2021」にて国内発表された際に、日本市場での予定販売価格は「およそ2億円」と伝えられていた。また、日本国内のユーズドカー専門サイトを確認しても、張り出し価格2億円でFor Saleとなっている事例を見ても、今回のオークションでは比較的リーズナブルと言えそうな取引が成立したと思われるのだ。
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