走りだけで見るならばRFが大本命
ロードスターを買うならこれしかない! ロードスターRFのオートマティックトランスミッション(AT)に乗り、数分で感じたことだ。
今回ロードスターRFのAT車とマニュアルトランスミッション(MT)車に乗ることができた。MTはビルシュタイン社製サスペンションやブレンボ社製ブレーキなどを装着するRSグレードだ。そのあたりの差も含めてリポートしたい。
まず概要から説明すると、新型(ND型)ロードスターは先代(NC型)の2リッターからダウンサイジングした1.5リッター自然吸気(NA)エンジンを搭載し、手動開閉のソフトトップをもつモデルだ。対してRFは電動開閉のハードトップとなり、さらにエンジンは2リッターNAを搭載している。
さて、話を戻そう。いや、ファンからすればロードスターの本質は、純粋なオープンスポーツにあるのかもしれない。そういった意味ではすでに電動開閉式ハードトップ(タルガトップ)をもつRFは「失格」なのだろう。だが、素直にクルマとして、スポーツモデルとして走りを見ると、明らかにRFのほうがいいのだから仕方ない。
エンジンを掛けると「懐かしい」感じがする。編集部でNC型ロードスターを所有し長らく乗っていたので、始動時からのエンジン音がまさにNCのそれなのだ。Dレンジにシフトレバーを操作し、動き出すと明らかに1.5リッター自然吸気のロードスターとは異なる。
排気量が2リッターになった効果は大きく、エンジントルク、出力ともゆとりがある。街中の信号からの発進ひとつとっても違いがわかるのだ。
コーナリングで見せたソフトトップとは違う落ち着いたキャラクター
さらにクルマを進め、路面が継ぎ目だらけで荒れていて、カーブが連続する首都高、さらに高速も試す。もはやソフトトップのロードスターとは別のクルマのようだ。ボディ自体もしっかりとし、タイヤから入り、ドライバーへと伝わってくる路面からの突き上げなどもひとクラス上のクルマに乗っているような上質ないなしだ。
コーナリング中に継ぎ目から「ガツッ」と入力があっても車体の乱れも少なく、安心感も高い。正直ここまで変わるか、と思うほどフィーリングは違った。ただしソフトトップの新型ロードスターがもつヒラヒラ感は薄れている。
これはロードスターRFが切り返しで遅れる、といった類いのものではないので、私はソフトトップが持つヒラヒラ感を「軽快さ」とは表現したくないが、そのフィーリングこそロードスターだ、と思う人にはRFは向かないだろう。
もうひとつ、ATが2リッターエンジンとの相性がよく、スポーティな走りに向いている。別段シフトスピードが早いわけではないが、フィーリングはダイレクト感があり、シフトダウンはマージンを少なめにして、ダウン時にかなりエンジンが高回転になる領域でもギヤが落ちる。
トータルしてみると、このトルコンATは、完成度の高いデュアルクラッチ車というよりもMT的なトランスミッションのような感覚だといえばいいだろう。
また、高速域まで試した結果では、1.5リッタ−エンジンならではの使い切れる感もありかと思っていたが、やはり2リッターを経験してしまうとこれこそが本命だと思える。
少なくとも日本の公道で乗っている限り、1.5リッターで感じた不足感はない。もちろん全域で出力はアップしているが、とくに中間加速ではプラス500ccの恩恵が存分に感じられる。やはりロードスターはスポーツカーだ、と思わせてくれる。
操作が苦でない人ならぜひMTで乗ってほしい
続いてMTに乗り換える。こちらはMTというだけでなくRSグレードゆえ、ビルシュタイン社製ダンパーが採用されている。さらに試乗車はブレンボ社製ブレーキ+BBS社製アルミホイールのセットオプションも装着されていた。
試乗コースは同様に市街地と首都高、高速なので、最初にいっておくとブレンボ社製ブレーキに関しては評価できなかった。公道の日常使用領域ではノーマルのブレーキと差違は感じられない。
ATはロードスターRFに合っていると伝えた後だが、やはりMTは楽しい。ソフトトップに比べてトルクがあること、ソフトトップのロードスターよりも落ち着きのある挙動も含めて、MT操作を楽しむ余裕も生まれる。
シフトは過度にショートストロークにせず、乗り出してすぐに手の感触だけで選択しているギヤがわかる点もいい。操作フィールはもっと剛性感があればなおよしだが、決して不満なレベルではない。
さて、ビルシュタイン社製の足だが、標準のダンパーよりもコチラのほうがいい。それはスポーティに走らせるシーンでの挙動だけでなく、路面の継ぎ目などのギャップを乗り越えた際の質感も優れているのだ。
ただし、全体としてやや硬めの印象を受けるため、このスポーツカーにもコンフォート性を求める人がいるなら、比較検討することをオススメしたい。というのは、ビルシュタイン社製ダンパーは明らかに乗り心地が悪くなるような硬さではなく、人によって好みがわかれるような違いだと感じたためだ。
気になったのはペダル配置だ。もちろん運転に不適切な靴で乗っているわけではないのだが、ロードスターも最近の他のMT車同様にヒール&トゥがやりづらい。
踏み間違えの防止等、安全面での要件からブレーキとアクセルに段差が大きいのだろうが、こうした運転することに主眼を置いたスポーツモデルでは、もう少し操作性を追求してもいいのではないかと思う。
さて、ロードスターRFは、ソフトトップのロードスターに比べて走りの面で高い満足度を与えてくれた。冒頭にも述べたとおり、ND型ロードスターを買うならこれしかない、と思えるほどだ。
しかし、タルガトップゆえ、電動開閉のルーフを開けてもソフトトップほどの開放感が得られないのは事実。オープンカーを所有していてもほぼ開けない私のようなドライバーはいいが、真のオープン派には悩ましい選択となるだろう。
【ロードスターRF 画像ギャラリー】
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