一世代で日本を代表するFRスポーツカーに成長したトヨタとスバルのコラボレーションモデル「トヨタ86」と「スバルBRZ」は、2020年で生産を終了。開発中という情報こそ、キャッチしていたものの、具体的な次期型の姿が見えてこず、新情報が待ち望まれていた。
その沈黙を破ったのは、なんと海を越えた向こうにある「スバル オブ アメリカ」。第2世代となる「BRZ」を2020年11月18日9時(日本時間:同日23時)に、オンライン発表会を行い、新型のワールドプレミアを実施した。それでは世界初公開となる米国仕様の新型BRZの詳細を見ていこう。
文/大音安弘
写真/SUBARU
【画像ギャラリー】全部見せます! 初公開された新型BRZ全写真&旧型86/BRZを写真で比較
従来型を発展進化させた新型BRZ
新型BRZ。全体のフォルムは従来型継承ながらフロントマスクは厚みが増し、存在感も高まった印象
新型BRZは、現行型の面影を強く残したスタイリングを採用。ファンが直感的にBRZと理解できるものに仕上げてきた。
ただ、これは保守的なスタンスからではなく、BRZが86と共に築いた日本生まれのコンパクトFRスポーツカーを育てていき、世界にブランドとして認知させる狙いもあるのだろう。旧車を中心に日本車ファンが増えているタイミングということもあり、クレバーな選択だ。
もちろん、各部には大きくブラッシュアップが図られている。最も印象的なのは、よりワイド&ローのフォルムを強調することで力強さを感じられるようになったことだ。
具体的に見ていくと、フロントマスクはヘキサゴングリルを大型化。より低く配置し、前に押し出したデザインとすることで、視覚的にもパフォーマンスの向上を訴える。
ボンネットにも2本のキャラクターラインが加わり、パワードームを形成。ボンネットの内部に秘められた新エンジンのパワフルさを演出する。現行型の特徴のひとつであった涙目のヘッドライトは、鋭い眼力を持つシャープなデザインへと変更されている。
新型BRZのサイドシルエット。FRらしいロングノーズ・ショートデッキスタイルもそのままだ
サイドシルエットは、現行型とよく似ているが、より前後フェンダーの膨らみを強調したグラマラスなボディへと進化。フロントフェンダーにはWRXのようなエアダクトが、サイドシルには一体となるスポイラーが追加されているが、これは視覚的だけでなく、空力性能の向上にも大きく貢献するものだという。
コンパクトなボディサイズを維持しながら車体を強化
リアスタイルもボリュームを増した印象に
リアスタイルは、左右に大口径のマフラーエンドを備えるディフューザーと短いトランクリッドが現行型と重なるが、視覚的な安定感を生むボリューミーなデザインに変更。特にトランクリッドはダックテールとなるリアスポイラー内蔵デザインとなったのが印象的だ。
気になるボディサイズだが、全長4265mm×全幅1775mm×全高1311mmと現行型と同等。ホイールベースも2576mmとわずかな差だ(※公表されたインチサイズを換算)。コンパクトなFRという価値は、しっかりと継承されていることが分かる。
プラットフォームは、現行型のキャリーオーバーとなるが、SGP(スバルグローバルプラットフォーム)開発のノウハウが活用されており、インナーフレーム構造や構造接着剤などの採用。その結果、フロント横曲げ剛性を約60%、ねじり剛性を約50%も強化されているという。
また、軽量化のために、ルーフ、フロントフェンダー、ボンネットをアルミ化している。これは重量増の抑制に加え、前後左右の重量バランスの最適化を狙ったものだ。その成果は、ステアリングの応答性を高め、より軽快な動きを実現。さらに旋回時のトランクション性能も向上されているというから楽しみだ。
注目の心臓部は2.4Lの水平対向エンジンに刷新
従来型BRZの2L水平対向エンジン。新型は排気量が大きい2.4L水平対向エンジンを搭載。直噴とポート噴射を併用する燃料噴射システムTOYOTA D-4Sを引き続き採用される
注目のパワートレインは、待望の出力アップを狙い、新型の2.4L水平対向4気筒DOHCエンジンを搭載。徹底した吸排気性能の強化とフリクションの低減により、トルクが約15%も増しているという。また、レスポンスに優れ、高回転まで気持ちよく吹け上がるエンジンに仕上げられているようだ。
その性能は、最高出力228hp、最大トルク184lb-ft(約250Nm)と劇的な差ではないものの、より扱いやすさと加速性能が高まっていることが予想できる。
トランスミッションは、現行型同様に、6速MTと6速ATの2タイプを設定。どのような仕様となるかは不明だが、唯一の情報としてATのSPORTモードの制御が進化していることが判明。
コンピューターがスポーツ走行状態にあると判断すると、シフト操作の最適化を図るという。ATでも楽しいスポーツカーとして磨きをかけている。
内装もシンプルかつ質感を高めてブラッシュアップ
新型BRZの内装。現状、まだ多くの写真が公開されたわけではないが、それでも水平基調で意匠が変わったインパネの様子がわかる
インテリアは、より質感が高まった様子。ダッシュボードは、最新スバルデザインを取り入れたシンプルかつ水平基調のものに進化する。もちろん、スバル車の特徴である視界の良さをしっかりと継承されている。
メーターパネルは、なんとデジタル化。7インチTFT液晶パネルとセグメント液晶パネルの2枚を組み合わせたものとなる。ただ仕様により、アナログ式が継承される可能性もあるだろう。
シートは、ホールド性の高いスポーツシートを継承するが、デザインと仕様が見直され、より包み込み感を増し、インフォメーションがより感じられるようになっているようだ。
インフォメーションシステムとして、8インチタッチスクリーンを備える「SUBARU STARLINKマルチメディアインフォテイメントシステム」を採用し、Apple Carplayやandroid Autoにも対応する。日本仕様にも採用される可能性はあるが、現行型同様に市販ナビに対応できるシステムも組み込まれるはずだ。
歴代初となるアイサイトを導入
MT主体となるスポーツカーということもあってか従来型では設定されなかったアイサイトも、新型ではAT車に初搭載
安全面では、ついにスバルが得意する先進安全運転支援機能「アイサイト」をBRZにも採用。米国仕様では、AT車に標準装備。現時点では、全ての機能が明かされていないものの、衝突被害軽減ブレーキと全車速追従機能付クルーズコントロールが装備されることを明言。
MT仕様については言及されていないが、世界的にも衝突被害軽減ブレーキの標準化が進んでおり、機能を絞るなどして先進の運転支援機能も搭載されるだろう。
米国仕様では、17インチ仕様の「リミテッド」と18インチ仕様の「プレミアム」が用意。具体的な仕様と価格については現時点では非公表だ。18インチ仕様のタイヤには、ミシュランパイロットスポーツ4を奢られるが、これは現行型STIスポーツと同様だ。
注目のトヨタ版新型86はどうなる?
新型BRZ公開となれば気になるのは86の動向。今後どういった動きがあるのかにも注目(写真は従来型BRZと86)
いよいよ新型登場の具体的な一歩が踏み出されたBRZ。米国を世界初の舞台と選んだのは、意外にも思えるが、それだけ米国市場での注目度が高いともいえる。
いうまでもなく米国市場は、世界最大級の自動車市場であり、ここで成功を収められれば、第2世代となるBRZや86の未来も明るくなるため、日本のファンとしては寂しさも覚えるだろうが、この展開は歓迎すべきだろう。
BRZが発表されれば、当然、86の姿も見えてくるわけで、現時点でも、新型BRZがトヨタと共同開発であることもしっかりと謳われている。
第1世代でも86とBRZが持つそれぞれの個性で楽しませてくれたが、ポテンシャルが向上された新型では、どんな違いが生まれるのか、想像するだけでワクワクしてしまう。
ベストカーWebでは、BRZと86の最新情報を入手次第、お伝えしていくので続報をお楽しみに……。
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