この記事をまとめると
■ヨコハマタイヤのオールテレーンタイヤ「ジオランダー」に新製品が追加された
【試乗】極悪路こそが生息地! それでいてオンロードも快適! 三菱トライトンが開拓する新たな世界を堪能
■「A/T G015」の後継モデルとして「ジオランダーA/T4」が設定された
■オンロードから悪路まで安定したパフォーマンスを発揮した
人気のジオランダーがフルモデルチェンジ
砂利道シロート。泥濘路シロート。オフロードなんてほとんど走ることのない男にオールテレーンタイヤのインプレッションを任せようだなんて、度胸あるよなぁ。……なんて他人事のような体でいたのだけど、いざ試乗を終えてみて、なるほどそういう意図があったのか、と腑に落ちた。シロートにもわかるできのよさ。あわよくばそういうセリフを引き出せるかも、と考えたのだろう。
その狙いは見事にビンゴ! だった。横浜ゴムの新しいオールテレーンタイヤ「ジオランダーA/T4」は、僕のようなオフロードのシロートにも「おっ!?」と感じ取れるくらいのパフォーマンスを示してくれたのだ。
ご存じのとおりジオランダーは、横浜ゴムのクロスオーバー/SUV/ピックアップトラック用タイヤのシリーズで、オンロード用からガチのラフロード用、コンフォート系からスポーツ系と幅の広いラインアップを誇っている。そのなかにあってA/T4は、バランス型といえる立ち位置にある。タイヤに求められる性能で円グラフを作ろうとしたら、比較的綺麗なマルが描かれるタイプのタイヤだ。これまでそのポジションを守ってきた「A/T G015」の後継にあたるという。
新型であるA/T4は、いったいどこが違うのか。
もっとも大きな違いは、ルックスだ。タイヤの顔というべきトレッド、そしてサイドウォールに、いかにもオフローダー用に見えるヘビィデューティなデザインが施されている。SUVやピックアップをタフな雰囲気で乗りたいファッショニスタには、気もちがピクッと動かされる存在感の強さだ。
もちろんこのデザインは、単なるデザインのためのデザインなんかじゃなく、ちゃんとオールテレーンタイヤとしての性能向上も狙ってる。トレッド部の真ん中の3列に関していえば、もっとも中心となる列に同じデザインのブロックを背面合わせにして斜めに配置し、その両側を2種類のブロックの連なりで挟み込む構成とすることで、オフロードでのトラクション性能を稼ぎつつ、カットやチッピングへの耐性を引き上げている。さらにその両脇のショルダーブロックは同じ形状のシングルピッチとし、パターンノイズを低減させつつ乗り心地を向上させている。
それらブロック間の溝は結構なジグザグ模様を描いていて、これもオフロードでのトラクション性能やウエット路でのグリップ性能を高めるのに貢献している。トレッド上には3Dのサイプがウェーブ型に深めに刻まれ、雪道やウエット路など滑りやすい路面でのトラクションを向上させる。ショルダー部の溝は深く広く掘られ、水や雪、土などの排出性を確保。トレッド部の接地形状もよりスクエアになり、それもオフロードでのパフォーマンスと偏摩耗への耐性を高めている。
まったくの新開発ゆえ、それ以外にも数え切れないくらいの新しい技術や考え方が導入されていて、世代がガラリと切り替わった感じだ。いうまでもないことだが、メーカー基準のM+S(マッド&スノー)マークはもちろんのこと、公的に冬用タイヤとしての性能をもつことが認証された証であるスノーフレークマークも刻まれていて、冬用タイヤ規制のなかでも走行することが可能だ。
とまぁ理屈は説明してもらってなんとなく理解できたわけだが、冒頭でもお伝えしたとおり、僕は砂利道シロートにして泥濘路シロートのオフロード門外漢。「はたして今回のオフロードコースを走ってなにが感じ取れるのだ?」と内心ちょっとばかりオドオドした気分になっていたら、最初の試乗はオンロードだった。試乗車はサスペンションなどがチューンアップされたヤル気仕様のスズキ・ジムニーと、ノーマルの現行トヨタ RAV4だった。
まずはチューンド・ジムニーで走り出す。会場となった軽井沢のアサマレースウェイ周辺の一般道は、路面の表情が穏やかなところもあるにはあるけれど、降雪多めの土地柄ゆえ肌が荒れてたりワダチやウネリがあったりと、スムースではない箇所も多い。試乗車のチューンド・ジムニーはサスペンションなどに手が入っていることもあって、見た目以上にタフな乗り心地。荒れた箇所ではそれなり以上に突き上げ感のある印象だったのだが、タイヤが路面の粗を上手くいなしていく。
RAV4に乗り換えてみるとその印象はもっと強く感じられて、ほとんど快適といっていい領域にあるように思えた。マフラーが変わってて勇ましいサウンドを聞かせるジムニーのときには気づかなかったが、静粛性の高いRAV4では若干ながらロードノイズを意識させられた。ただし、その音量、音質ともに耳障りというほどではなく、すぐに慣れて気にならなくなった。
一般的な速度域でしか走ることができなかったものの、ジムニーとRAV4の双方で感じられたのは、スムースにステアリング操舵していくときにはタイヤがとても素直に追従してくれること。わざと急にこじるような操作をしたときにはほんの一瞬だけ反応の遅れを感じたこともあったが、道に合わせて一般的な速度域で普通に走っているかぎり、ヘビィデューティなデザインが施されたオールテレーンタイヤであることをさほど意識させられない。完全なオンロード用タイヤと同等とまではいかないものの、街乗りメインの普段履きタイヤとしても十分に納得できる出来ばえ、といえる。
過酷な悪路もラクラク走破!
次に走ったのは、アサマレースウェイのなかのショートコースだ。ストレート区間が短く、基本、中速コーナーと低速コーナーが続くテクニカルなレイアウトだ。試乗会の当日は、前日に降った雨が地面のところどころをぬかるみへと変えた、おあつらえ向きといえるコンディションだ──こうした道が好きな人にとっては。そして試乗車は、ここでもトヨタRAV4だった。
こういう道はホントにシロートもいいところだという自覚はあるので、最初はスピード抑えめ、はまってしまいそうな部分を避けて走ってたのだけど、当たり前ながらなんの危なげもない。なので少しずつペースを上げていき、ちょっとずつ危なそうなところにも足を踏み入れていき、仕舞いには御機嫌な気分でペダルを踏んでステアリングを切って結構いいペースで走ることができた。
そんなふうに走れたのは、途中からある程度以上、自信がもてたからだ。加速するときも減速するときも、しっかりとしたグリップ感を与えてくれる。ステアリングを切り込んでいくときのフィーリングは、むしろオンロードを走ったときよりクッキリしてるかのようで、レスポンスも良好。ドライバーがヘマをしないかぎり、すんなり素直に曲がってくれる。
グチョグチョのぬかるみとワダチが連続するようなところでも、いきなりグリップが抜けたりトラクションの状態が大きく変化したりもしないし、コーナリングのライン上で内側のタイヤが深いぬかるみを踏みしめるような場所でも大きく姿勢を崩すことなく曲がっていける。もちろんRAV4そのものが持ってる安定感の高さと4WDの制御の巧みさあってこそだとは思うのだけど、ひと言でいうなら、僕のようなシロートにもわかりやすくて扱いやすいタイヤなんだな、と強く感じた。
最後のステージとなる1周3kmほどのロングコースでも、好印象であることに変わりはなかった。ここでの試乗車はトヨタ・ハイラックスと三菱トライトン。このコースはスピードレンジがショートコースとは段違いに高いストレート区間があって、そのままの勢いでワダチにはまったりコブのようなところを乗り越えたりしても、反応はしなやかにして穏やか。片側はほぼドライで片側は深めのぬかるみといったところでも──もちろんクルマの基本性能が優れてるからということもあるけど──急激に挙動を乱したりはしない。
ちゃんとグリップし、ちゃんと凹凸をいなし、ちゃんと素直に曲がり、駆動の状況がしっかり伝わってきて、扱いやすく、快適といえる乗り味。しかも、だ。コースを走り終わってトレッド面を何となしに見てみたら、ブロックとブロックの間の溝のなかには、ぬかるみのドロドロも粘度のような火山灰質の土も、ほとんど残っていなかった。排土性もかなり高いのだ。さらに、どちらかといえばマイルドなハイラックスにどちらかといえばシャープなトライトンという、キャラクターの異なるピックアップトラックのどちらにもいい具合にマッチしてるように感じられたから、クルマを選ばないタイヤということもできるだろう。
開発陣が「迷ったらジオランダーA/T4」といってるのを耳にしたけれど、まさしくそれ。シリーズのなかではバランス型であるのはたしかだが、そのバランスの円グラフの輪は全体的に大きいのだ。ハードコアなラフロードに行くのが趣味ということなら同じジオランダー・シリーズのそれ用のタイヤを選ぶのがいいと思うが、そうでなければ積極的にこのタイヤを選ぶのが間違いないんじゃないか? とまで感じてしまった。編集部の思惑にバクッとはまっちゃったみたいでちょっと悔しいけれど、うん、このタイヤのできのよさは間違いなくシロートにもわかる……というか、わかった。
個人的なことだけど、おそらく今後も悪路を走ることはほとんどないと思われるものの、いずれジムニー欲しいな……なんて思ってるところがある。そうなったら選ぶタイヤはこれだな、なんて考えてる。だってカッコいい上に基本性能がしっかりしてて、いうことないじゃん。そんなふうに考えちゃってるくらいなのだから。
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