11月21日(月)から26日(土)にかけて、タイ・カンボジア両国で開催されたアジアクロスカントリーラリー(英名/Asia Cross Country Rally、総称/アジアンラリー/AXCR)。総走行距離1524km、競技区間だけでも637kmというこの過酷なイベントに「チーム三菱ラリーアート」が初めて挑み、なんと総合優勝を果たした! その激戦の模様をお伝えしよう。
文/ベストカーWeb編集部、写真/三菱自動車
三菱黄金期到来!! アジア戴冠で見えた!! 新制ラリーアートの全貌と期待
参戦マシンは堅牢さとハンドリングが武器の「トライトン」
三菱トライトン ラリーカー。2.4リッターディーゼルターボを積み市販車と同じスーパーセレクト4WD IIを採用する
アジアクロスカントリーラリーとは、1996年に始まった国際ラリーイベント。山岳地帯やジャングル、海岸など東南アジアの気候風土を生かしたコース設定を特長とし、その注目度は年を追って高まっている。コロナ禍によって2020年と2021年は中止となったものの、今年は3年ぶりの復活。タイ東北部とカンボジア北西部を舞台に、再び激戦の幕が開くことになった。
そのエントリーリストに名を連ねたのが、「チーム三菱ラリーアート」。かつてパリ・ダカールラリーや世界ラリー選手権を席巻した伝統のチームの復活だ。総監督を務めるのはパリ・ダカで2連覇を達成したレジェンド増岡浩氏。今回は増岡氏を始めとするスタッフが地元タイのコンストラクター「タントスポーツ」を完全サポートするスタイルでチームが編成された。
参戦マシンに選ばれたのは、三菱が地元タイで生産するピックアップトラック「トライトン」。堅牢なシャシーフレーム構造でありながら優れたハンドリング性能を持ち合わせている点が特長で、今回は改造クロスカントリー車両部門となるT1クラスに3台が投入された。6月から現地での耐久テストも行いセットアップや対策を確認、仕上がりも万全だ。
いきなり1台を失うも衰えない戦闘力!
6月から現地での耐久テストを行い万全の態勢でラリーに臨んだ
11月21日、公式車検を経てセレモニアルスタートが行われ、翌22日から5日間に渡る本格的な戦いが始まった。ところが三菱ラリーアートを早くもアクシデントが襲う。119号車を駆るサクチャイ・ハーントラクーン選手がSS1の後に体調不調を訴え、コロナ陽性が判明。119号車はリタイヤが決まり、チームは残る105号車と118号車でラリーを戦うことになった。
しかしチームの戦闘力は揺るがない。105号車をドライブするチャヤポン・ヨーター選手が見事な走りを見せ、チームを引っ張り始めたのだ。LEG1のSS2(コンブリ~ノンボンの203.5km)でベストタイムをたたき出して総合首位に立つと、以降LEG3、4とタイム差を広げ、LEG4終了時点で2位のトヨタ・ハイラックスRevoに8分以上の差をつける快走を演じた。
もう1台、リファット・サンガー選手が駆る118号車は、LEG1のガレ場でパンクし、タイヤ交換せずに走ったことが裏目に出てブレーキまでダメージを追う痛手を受ける。ところがサービスエリアで足回り一式を交換すると以降は追い上げに転じ、LEG1終了時の8位からLEG2終了時には5位までポジションを上げる気迫を見せた。
あらゆる三菱車に流れる戦いの遺伝子
ゴール後の記念撮影に収まるチーム三菱ラリーアート
こうして迎えた最終日。世界遺産アンコールワットの玄関口でもあるシュムリアップを舞台としたラリーでも、三菱ラリーアートは安定した走りを見せる。首位のチャヤポン選手はクロスカントリーラリーに求められる「クルマを壊さない走り」を意識しながらも、アグレッシブさを失わない攻めのラリーを披露。結果8時間22分42秒という総合タイムをたたき出し、2022年アジアクロスカントリーラリーの総合優勝をもぎ取った。
リファット選手のドライブする118号車も、トラブル後は安定した走りをみせ、総合5位でゴール。アクシデントも耐え抜くトライトンのタフさを証明することとなった。
ゴール後、増岡浩総監督は今回の勝利について「素晴らしい走りを見せてくれたドライバー、ラリー車を毎日完璧に仕上げてくれたエンジニア、サポートしてくれたスタッフすべての素晴らしいパフォーマンスがあったからこその結果、そして三菱自動車が長年培ってきたノウハウによる賜物」と述べた。
過酷なクロスカントリーラリーを初参戦で制するという偉業は、まさに長年培ってきたノウハウがあったからこそできた奇跡だ。今回のアジアクロスカントリーラリーは三菱ラリーアートの大金星であると同時に、あらゆる三菱車の中に流れる戦いの遺伝子を再認識するラリーでもあったといえよう。
【AXCR2022四輪部門総合成績】
1位 チャヤポン・ヨーター(三菱トライトン) 8時間22分42秒
2位 ジャラス・ジェンカモルクルチャイ(トヨタ・ハイラックスRevo) 8時間28分29秒
3位 塙郁夫(トヨタ・フォーチュナー) 8時間28分34秒
4位 青木拓磨(トヨタ・フォーチュナー) 8時間38分26秒
5位 リファット・サンガー(三菱トライトン) 8時間39分56秒
6位 タウィー・ネワンナ(いすゞD-Max) 8時間51分24秒
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