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一度味わったらやめられない!? 新型アクアにワンペダルの「快感ペダル」新装備! 利点と注意点とは

掲載 更新 72
一度味わったらやめられない!? 新型アクアにワンペダルの「快感ペダル」新装備! 利点と注意点とは

 新型アクアがアクセルペダルだけで加減速が行えるワンペダル車(快感ペダル)を設定しました。すでに日産リーフやe-POWER搭載車をはじめ、ホンダe、BMW i シリーズ、メルセデス・ベンツEQC、プジョーe208などがワンペダルを採用しています。

 そこで、改めてワンペダルの走行感覚と魅力を紹介するとともに、利点や注意点をモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説!

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文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ、日産、ホンダ

■ワンペダルのどこがいいのか? 危なくはないのか?

一部のHVとEVに設定させることが増えてきたアクセルペダルの1ペダルで加減速ができる機能。メリットとデメリットはあるのだろうか?

 電気自動車やハイブリッドなど、モーター駆動を使ったクルマでは「ワンペダルドライブ」を行える走行モードを設定することがある。このモードを選ぶと、アクセルペダルを戻すと同時に、強い減速力が生じる。従来のエンジン車でいえば、MT車の2速や3速で走っているような感覚だ。

 ワンペダルドライブが設定された背景には、モーター駆動ならではの制御がある。モーター駆動では、アクセルペダルを戻した時に、駆動用モーターが発電して、電気を駆動用電池に蓄えることが可能だ。ワンペダルドライブは、ハイブリッドなどの種類によってはその効率を高めるから、重要な機能とされている。

 今の一般的なハイブリッドでは、ATレバーをDレンジに入れてノーマルモードの状態で走っても、ブレーキペダルを踏むと自動的に回生力が強まる。ドライバーは従来のエンジン車と同じようにブレーキを作動させているつもりでも、実際にはディスク/ドラムブレーキは作動せず、回生による充電量を増やすことで速度を下げていることもある。

先代ノートはワンペダルのe-POWER追加で2018年度乗用車ブランド別新車販売台数(軽自動車を除く)No.1を獲得した。これが日産がe-POWER主体の販売戦略に舵を切るきっかけになったといえるだろう

 ところが日産のe-POWERは、機能をシンプルにしてコストを抑えるため、ブレーキとの協調回生制御を省いた。他社のハイブリッドと違って、ブレーキペダルを踏んでも回生による充電効率は向上せず、ディスク/ドラムブレーキが作動して、減速エネルギーを熱に変換して大気に放出してしまう。

 e-POWERで回生力を高めるには、エコ、あるいはSモードを選び、ワンペダルドライブを行う必要があるのだ。多くのユーザーがワンペダルドライブをせずにノーマルモードで走ったら、実用燃費が悪化して「e-POWERは燃費が悪い」と判断されてしまう。

 そこでe-POWERでは、回生力を増やすエコ/Sモードを強くアピールして、多くのユーザーに使ってもらう必要が生じた。そのための訴求方法がワンペダルドライブだ。CMでは「誰もがひと踏みで惚れる気持ち良さ」などと表現され、エコやSモードを使うワンペダルドライブの定着を図った。

 日産の訴求からは、ワンペダルドライブは運転をしやすく、楽しくするための機能と受け取られたが、実際は違う。エコ/Sモードの使用を促進させるための手段だった。

 かつてセレナe-POWERのCMには「電気自動車の新しいカタチを充電いらずで。さらに自動運転も」という凄いナレーションが入っていた。ハイブリッドのe-POWERは「充電の不要な電気自動車の新しいカタチ」であり、運転支援機能のプロパイロットは「自動運転」だ。「ワンペダルドライブ」の訴求も、上記の過剰な宣伝と根底では繋がっている。

 この背景にある根本的な理由は、日産が日本の自動車メーカーなのに、国内市場を軽視したことだ。商品開発から宣伝まで、さまざまな点において日本では予算が足りない。少ないコストでハイブリッドを開発して、なおかつ優れた宣伝効果を得なければならない。

 そこでe-POWERは、リーフが搭載する電気自動車の機能を基本に、ハイブリッドを開発した。リーフの駆動用リチウムイオン電池と充電システムを、エンジン/発電機/燃料タンクに置き換えて、モーターに電気を供給する。

 ちなみにホンダのe:HEVも基本的にはエンジンを発電のために使って駆動はモーターが担当するが、高速域の巡航では、エンジンがホイールを直接駆動することもある。

 そのほうが効率が優れているためだ。この点についてe-POWERの開発者は、「e-POWERではコスト低減のために直接駆動の機能は装着していない」という。先に述べたブレーキ操作の協調制御を採用しないのと同じ理由だ。

 以上のように「ワンペダルドライブ」は苦肉の策だったが、CM効果は高く、新しい運転スタイルとして予想以上に定着した。「e-POWERはワンペダルドライブができるからイイよね」という感じになった。

リーフ、ノートe-POWERに搭載されているワンペダル、e-PEDALの説明(出典:日産)

■新型アクアのワンペダル「快感ペダル」

2021年7月19日に発売された新型アクア。アクセルペダル1つで加減速を可能にする「快感ペダル」をトヨタ車初採用。Z、G、Xに標準装備

ドライブモードスイッチで「POWER+」モードを選択すれば、加速の力強さが増すとともに、アクセルオフの減速度が強くなり、アクセルペダルの操作だけで速度を調整しやすくなる

ペダルの踏み替え頻度を減らし、快適な走りが楽しめるほか、降坂時にもレスポンス良くしっかりと減速感が得られるため、車速の増加を抑制し安心して走行できる

 新型アクアは、トヨタでは初めて「快感ペダル」を採用した。アクアにはノーマル/エコドライブ/パワー/パワー+という4つの走行モードがあり、POWER+モードを選ぶと快感ペダルが作動する。

 快感ペダルはe-POWERのワンペダルドライブに近いもので、アクセルペダルを戻した時、ノーマルモードに比べると、最大で約2倍の減速度が発生する。そのためにアクセルペダルによる速度調節の幅が広がった。

 ただしアクアはe-POWERと違って、ブレーキペダルとの協調制御を行う。そのために快感ペダルを作動させないノーマルモードを選び、ブレーキペダルを使って減速しても、協調制御によって同様の回生充電効果を得られる。

 従って快感ペダルは、e-POWERのエコ/Sモードとは異なり燃費を節約するための必須条件ではない。それでも敢えてアクアで初採用したのは、e-POWERの宣伝効果により、ワンペダルドライブへの対応を迫られたからだ。

 過去を振り返ると。e-POWER以外の大半のハイブリッドは、ブレーキとの協調制御を行っていたからワンペダルドライブを訴求する必要はなかった。その流れを苦肉の策で始めたe-POWERの宣伝が変えた。

■ワンペダルの利点と注意点は?

ノートe-POWERのe-PEDALは現行=(旧型)から新型になり加減速が滑らかになった(出典:日産)

 ノートe-POWERは、あれだけワンペダルドライブを宣伝したのに、すべてのユーザーがエコ/Sモードで走るわけではない。約20%のユーザーは、燃費を悪化させるノーマルモードを使っている。開発者は「お客様によっては、走りがギクシャクするために、エコやSモードを使わない」という。

 これこそがワンペダルドライブの最も大きな欠点だ。ブレーキペダルに踏み換える必要はないが、アクセルペダルだけで速度を幅広く調節するため、アクセルペダルを戻す操作をデリケートに行わねばならない。

 ドライバーによっては、踏む操作は得意でも、戻しが苦手な場合もある。滑らかな運転の極意は、ステアリングホイールもペダルも、戻す操作をていねいに行うことだが苦手な人もいる。このようなユーザーは、ワンペダルドライブでは滑らかに走りにくいため、ノーマルモードを使うわけだ。

 この問題に対処するため、現行ノート(ノートオーラを含む)のe-POWERは、先代型に比べてエコ/Sモードを含めた減速制御を見直した。先代型ではアクセルペダルの戻し方によっては減速力が唐突に強まり、乗員に不快感を与えることがあったからだ。現行型では速度の下がり方を穏やかに改めている。

 また先代型では、信号の手前で停車する時など、路面に引かれた停止線のかなり手前で止まることもあった。先代型のe-POWERは減速の度合いが分かりにくく、しかも従来のATに見られるようなクリーピング(アクセルペダルを完全に戻しても徐行する現象)も生じなかったからだ。

 そこで現行型では、速度の下がり方が分かりやすく改善され、なおかつクリーピングも生じるように改めたから、停車位置の調節も容易になった。先代ノートe-POWERに比べると、現行型では運転中の違和感が大幅に薄れている。

 それでも完全に解消されたわけではない。先に述べたアクセルペダルを戻す操作が苦手なドライバーは、やはりノーマルモードでないと滑らかに運転しにくい。街中の走りで、ワンペダルドライブによるデリケートなアクセルペダル操作を長時間にわたって続けると、右足首が疲れるドライバーもいる。

 そしてさらに注意を要するのは、自分のクルマで毎日ワンペダルドライブをしているドライバーが、稀に通常のAT車に乗り替えた時だ。通常のAT車では、アクセルペダルを戻しても強い減速力は生じないから、先行車に急接近して、慌ててブレーキペダルに踏み換えることも想定される。このような瞬間に、先行車が強くブレーキを作動させたりすると、追突する危険が高まる。

 いろいろなメカニズムや運転感覚を選べることは、ユーザーに楽しさを与えて、クルマの多様な進化も促進させる。優れた効果をもたらすが、そのバリエーションが基本的な運転操作までおよぶと危険が生じてしまう。

 身近な例では、輸入車の方向指示機とワイパースイッチの位置関係だ。日本車では方向指示機は右側、ワイパーは左側だが、輸入車は逆になる。右左折時に右手でワイパーを動かしてしまい、「あっ、間違えた」と左手で方向指示機を操作し直す。方向指示機の作動タイミングが遅れ、ドライバーが慌てた時に飛び出しなどが重なると、通常に比べて対処の仕方が悪化する。

 ワンペダルドライブは否定すべきものではないが、ほかのクルマに乗り替えた時は、アクセルペダルを戻しただけでは十分な減速力が得られないから十分に注意して欲しい。

 またワンペダルドライブを試して使いにくいと感じたら、無理は禁物だ。思い通りに操作できず、クルマの動きがギクシャクすれば、周囲の車両が自車の動きを予測しにくくなる。そこも含めて危険が増すから、ノーマルモードで走るようにしたい。

 こういった点を踏まえると、e-POWERには、ほかの車種と同じくブレーキとの協調回生制御が必要だ。開発者は「協調回生を行うとコストと価格が高まる。その金額をほかの機能に使ったほうが、お客様の利益になる」と説明するが、安全に影響を与えるとなれば話は別だ。

【画像ギャラリー】アクセルペダル1つで加速! 減速!! 新型アクア登場で注目を集めるワンペダルとは?

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みんなのコメント

72件
  • 完全に日産否定の記事ですね
  • 一度運転してみれば「癖」は理解出来るだろうけど、うまく理解出来なかったり 咄嗟の時に「直感的」に操作出来ないと事故の原因に成りうると思います。プリウスのシフトも最初は意味が分からなかった(苦笑)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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