マツダのミドルサイズSUV「CX-5」が今年も一部改良を受けました。昨年9月に後継車と目される「CX-60」が登場した後もアップデートを重ねるCX-5。その最新モデルの紹介と試乗インプレッションを自動車評論家の萩原文博さんのリポートでお届けしましょう。
初代の成功を見事に引き継いだ現行CX-5
生産中止はもったいない!最後のCX-8は買いだ!!(編集長緊急寄稿)
2012年2月に登場したミドルサイズSUVの初代マツダCX-5は、高い燃焼効率を実現した「SKYACTIV」エンジンをはじめ、優れた操縦安定性を実現した軽量・高剛性の「SKYACTIVボディ」そして上質な乗り心地を実現する「SKYACTIVシャシー」という当時のマツダの新世代技術である「SKYACTIV TECHNOLIGY」をすべて搭載したマツダの新世代商品群の第一弾モデルでした
そして2代目となる現行モデルは2017年に登場。ボディサイズは先代モデルと比較すると、全長で+5mm、全高は−15mmとワイド&ローのフォルムになっています。ホイールベースも2,700mmと変更はないですが、左右のタイヤ設置面の中心間の距離であるトレッドをフロントで10mm、リアはタイヤサイズによって先代より5~10mm拡大し、より走行安定性を向上させているのが特徴です。
外観デザインは先代モデルの躍動感に満ちた個性を成長させ、精悍かつ堂々とした佇まいを創出しています。運転席前のAピラーを約35mm後退させることで、強い前進感を演出。シンプルな造形の中に美しい映り込みをつくり込んだフォルムなどにより、艶めきのある精悍な外観が特徴です。
インテリアは、SUVらしい剛性感と上質さを感じられるフォルムと精緻な仕立てが感じられる質感の高さを感じられます。ドライバーを中心に操作機器や計器類を左右対称に配置し、ドライバーとの一体感を高めるコクピット。そして、ワイド感を感じられる水平基調のインストルメントパネルにより運転に集中できる心地良い空間を演出しています。
リアのラゲッジスペースは5人乗車時で505Lを確保。床下収納はトランクボードの厚さを9mm薄くするとともに工具類の収納レイアウトを変更することにより30Lまで拡大し利便性を向上させています。
改良を重ねるごとにキャラの立ったグレード展開に
2017年に登場したCX-5ですが、毎年のように改良が加えられています。2022年9月に後継モデルと言っていいCX-60が登場した後の2022年10月、そして今回2023年9月にも一部改良が行われ、その進化は止まりません。
今回の一部改良のメニューは特別仕様車の追加・グレード整理と装備の変更、新色の追加、そしてメーカーセットオプションの変更となっています。
ナッパレザーやBOSEサウンドシステムを装備するエクスクルーシブ
CX-5は改良のたびに新しいグレードを追加してきました。ボディ同色パーツとナッパレザーシート、ボーズサウンドシステムなど豪華装備自慢の最上級グレード「Exclusive Mode(エクスクルーシブモード)」、ブラックパーツを内外装に追加したスポーティな「Black Tone Edition(ブラックトーンエディション)」&「Sports Appearance(スポーツアピアランス)」、そしてタフギア感を打ち出した「Field Journey(フィールドジャーニー)」。
上級グレード、中間グレード、下位グレードというこれまでの単純に価格と装備内容が比例するタイプのものでなく、独自の世界観を持つキャラの立ったグレード展開へと変化してきているのです。
新しい特別仕様車はスポーティにレトロモダンをプラス
今回追加されたのはレトロモダンの世界観をテーマにスポーティーさを融合した特別仕様車「Retro Sports Edition(レトロスポーツエディション)」。ブラックトーンエディションをベースに、インテリアをレトロな雰囲気を醸し出すテラコッタカラーとスポーティーさを際立たせるブラックでコーディネート。
各所にテラコッタカラーのステッチを施すとともにスエード調生地をシート中心部に採用しています。ちなみにこのレトロスポーツエディションはCX-30とMAZDA3にも同時に設定されました。
一方でプロアクティブ、Lパッケージ、25Sエクルクルーシブモード、そして6速MT搭載車がこの一部改良で廃止されました。
今回の一部改良で各グレードの装備も以下の変更を受けています。
エクスクルーシブモード
洗練された上質さをより感じられる内外装デザインの変更として、フロントグリルの変更、高輝度ダーク塗装の19インチアルミホイールの採用。
スポーツアピアランス
スポーティ×ラグジュアリーをさらに強化するためにフロントグリルを変更。運転席&助手席にベンチレーション機能を追加し、快適装備を強化。
フィールドジャーニー
外観はフロントグリルの変更。内装ではパーフォレーション加工を施した合成皮革をシート座面に採用。シートにはライトグレーのパイピングとステッチを追加。エアコンルーバーベゼルはサテンクロームメッキに変更。
ボディカラーには全グレードにCX-8などに採用され人気の高いプラチナクォーツメタリックを追加しています。
異彩を放つフィールドジャーニーを試す!
今回試乗したのは新色のプラチナクォーツメタリックを纏った2.2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載したXD フィールドジャーニーの4WD車です。フィールドジャーニーは2021年11月に行った大幅改良時に特別仕様車として設定されたグレード。家族や仲間と日常生活とアウトドアライフを楽しみ都会と自然を行き来するユーザーに向けたタフギア感を強めています。
特徴としてはタイヤに悪路走破性を考慮したオールシーズンタイヤを標準装備していること。そしてオンオフ問わずマツダらしい人馬一体感を高めるマツダインテリジェントドライブセレクト(Mi-DRIVE)にアウトドア走行に最適なオフロードモードを唯一設定しています。試乗車の車両本体価格は383万9000円で、オプション装備として8万8000円の電動スライドガラスサンルーフと8万2500円のボーズサウンドシステムを装着し合計400万9500円です。
アヴァンギャルドなイメージの強いSUVのCX-5の中で、最もアウトドア色を強めたフィールドジャーニーは異彩を放っています。これまで試乗したCX-5はいずれも一般的なラジアルタイヤでしたが、今回のフィールドジャーニーはオールシーズンタイヤを装着しています。これがスポーティなCX-5の走りにどのような影響を及ぼすのかがポイントです。
CX-5のベストな選択
結論を先に言ってしまうと、これがベストバランスのCX-5だと思いました。CX-5らしい高いハンドリング性能と走行性能は全くスポイルされていません。ネガティブはわずかにロードノイズが大きくなったかなということぐらい。装着されている17インチのオールシーズンタイヤは個人的には19インチ仕様よりも乗り心地がソフトで好みでした。
高い走破性が特徴のフィールドジャーニーですが、新色のプラチナクォーツメタリックを纏うとそのキャラクターが薄まり、都市とアウトドアを行き来するモデルとしてピッタリです。またインテリアにパーフォレーション加工を施した合成皮革をシートに採用したこともあり質感も向上しています。
CX-60ではなくCX-5を選ぶ理由がある
マツダのミドルサイズSUVには2022年9月に登場したCX-60もあります。縦置きエンジン+後輪駆動という新しいプラットフォームを採用したCX-60は全長4740mm。CX-5が全長4575mmなのでCX-60は一回り大きいのですが実はこの2台の室内空間の寸法はそれほど変わりません。高級車の証とも言える縦置きエンジン+後輪駆動の分、全長が大きくなっているのです。
上がCX-5、左がCX-60。比べるとCX-60のエンジンルームの長さがわかる
全幅もCX-60は1890mm、CX-5は立体駐車場のサイズ制限ギリギリの1845mmに収めています。ただしエンジンを縦置きにするCX-60はハンドルの切れ角が大きく確保できるため最小回転半径が5.4mと、CX-5の5.5mよりも優れています。とはいえ、絶対的な大きさでCX-60とCX-5はかなり違います。
CX-60は新しいエンジンやシャシーを採用し、そのポテンシャルは大いに上がりました。内外装、特に内装はさらにラグジュアリーさを感じさせる上質な仕立てです。一方で、その走りにはまだ荒削りな部分が散見されます。その点、改良を重ねたCX-5の走りは円熟の域に達しつつ一線級を維持しています。気の利いた追加グレードとCX-60より割安な価格でまだまだ魅力的です。
兄弟モデル(ベースは異なりますが)だった3列シートSUV、CX-8が生産終了となりましたが、登場してから6年が経過しつつも熟成が進んだ現行型CX-5の実力は、身内はもちろん他社のライバルと比べても色褪せていません。
※記事の内容は2023年11月時点の情報で制作しています。
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みんなのコメント
CX-5もデカいけど、『狭い道で運転したくねぇ…』とまで思う大きさでない。
あと2.2リッターのターボで十分な馬力もあるし、直6はあこがれるけど自動車税諸々を考えると、CX-5がいいかなって思ってしまう。
アメリカの90が売れてるのは開発チームが違うからだよね。