私がかねてからあこがれているのは「クルマで出かける音楽祭」です。まあ、これはクルマのイベントではないのかもしれませんが、今回はそんなことに対するあこがれをつづってみようと思います。
夏、今年は情緒的に受け止めることができないほど暑かったですね。それでも、少し高原に行くと青々とした木々が、「夏も短し、満喫せよ!!」そう私たちに説くようです。そんな森の中をクルマで走り抜け、その先で名演奏に出会えたら、こんなに素敵なことはないとは思いませんか?
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行く前からはやる心、コンサートの前というのは気持ちが踊りますね。この演奏、絶対にいいだろうな。そんな予感がしたら、コンサートに向かう道すがら、景色のすべてがきらめいて見えるのではないでしょうか。そして素敵な演奏を楽しんだ後は帰る道すら、余韻が瞬く星や、テンポよく後ろにさっ、さっと流れていくナトリウムランプの街路灯がセッションを聞かせてくれるかのようです。
出かける途中も、帰り路もすべてが音楽になる。そんな風に言えるのではないでしょうか。マチネよりは遅く、しかしそんな遅くはない時間からスタートし、走ってきた道のりをもかみしめられるような演奏が披露される、そんなコンサート、小さな音楽祭のようなものをしたら、楽しいのではないかなあ。実は昔からずっとあこがれるのです。
曲目はドイツの歌曲などいいでしょうか。もちろんオペラのアリアもいいでしょう。しかしオペラの抜粋であるアリアって、それだけを抜き出すと不完全ではないでしょうか。歌曲は歌ですべての表現をします。歌手の力量が問われますが、それでいいのです。クルマのイベント、という題目に対してのコンサートではありますが、メインはクルマで、だからと言って有名な旋律がちりばめられていればなんでもいいだろう、というような「お茶を濁す」感じは無用です。この手の話、お茶を濁すくらいならやらない方がましなのです。クルマで、という条件がメインだからこそ、ストレスがない最高の音楽がいいのです。
つい好きなもので、声楽、オペラなどの話題になりましたが、ピアノや弦楽のソロリサイタルもいいでしょう。もっと大掛かりなオーケストラも、できれば言うことはありません。しかしまあ費用が、絶対的に高額になりますので、実現の可能性がおのずと低くなるでしょうから。
「そんなところで開催したら誰が来るのか?」というところでも、クルマで行く前提だからいいのです。むしろ、クルマがなくても気軽に行けることが多すぎるのです。クルマを愛し、クルマと共鳴しあえる音楽に触れ、クルマで出かけたから極上の音楽に出会えた。そんなクルマユーザーにアドバンテージがある体験、そんなことがあってもいいのではないでしょうか。
クルマがないことに対して、解決策を提示しすぎるからクルマから遠ざかるのではないでしょうか。なければ乗せてもらいなさい、借りなさい。極上の音楽に合わせて、あの途中の道自分で走ってみたいから、今度は自分で来られるように免許を取ろう、クルマを買おう。というところまでムーブメントが広がれば言うことはありませんが。
その点、九州を訪れると、霧島音楽祭とか、とてもいい企画だなあ、と感心したものです。もちろんクルマでないといけない、を謳っているわけではありません、けれども霧島は個人的には箱根に勝るとも劣らないドライブコースだと思うもので。
世の中、クルマがあることが足かせ、非効率、時代錯誤という論調に引っ張られすぎていますが、クルマは単なる機械ではありません。文化的な意味合いの、もともと非常に強いものだと思っています。クルマがあることは当然のたしなみ。はいいすぎかもしれませんが、クルマを楽しむ人が楽しまない人よりもより豊かな体験ができる。そういうことはあってもいいのではないでしょうか。
[ライター・画像/中込健太郎]
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