これまであまり情報がなかったウーブン・シティ(Woven City)の進捗が米国ラスベガスで開催されているCES2025で発表された。2020年のCESでその構想が発表されて以来、ウーブン・シティの果たす役割についてトヨタ自動車の豊田章男会長が語った
文/写真:ベストカーWeb編集部
ウーブン・シティが今秋から本格始動!! 豊田章男会長が語った未来都市のスゴい中身
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■「未来の当たり前」を発明する、ウーブン・シティ
豊田章男会長のAIらしい(笑)
2020年のCESで構想を発表して5年、ウーブン・シティのフェーズ1の建築が完了した。そのタイミングでCES2025のプレスカンファレンスに登場した豊田章男会長は5年前と同じネクタイを締め、多くのカメラに撮影され、テイラー・スウィフトになった気分だと笑わせたあとスピーチが始まった。
「ウーブン・シティでは4つの領域の研究をイノベーションに注力していきます。つまり、ヒト、モノ、情報、そしてエネルギーのモビリティです。ウーブン・シティをテストコースとして、我々が抱えている課題の解決策を開発していきます。
例えば車イスレースカーのようなパーソナルロボットや夜安全に帰宅の案内をしてくれるドローンや高齢者に寄り添うペットロボットなどです。そしてウーブン・シティから東京までひとっ飛びの空飛ぶクルマJoby(ジョビー)もあります。
ウーブン・シティでは日常生活をサポートしてくれる在宅ロボットの開発も進めています。このロボットは搭載したカメラで人間の動作を観察し、洗濯物をたたむことができます。さらにAIを活用し、バーチャルの「豊田章男」を作ろうとしています(笑)。
ウーブン・シティはウーブン・バイ・トヨタがサポートし、そのメンバーが作っていきます。世界中60以上の国と地域から集まった2200人がウーブン・バイ・トヨタのメンバーです。
ウーブン・バイ・トヨタのミッションはヒト中心のテクノロジーを作り、モビリティを拡張し、幸せを量産することです。クルマの新しいオペレーティングシステムであるArene(アリーン)やデジタルツインのプラットフォームも開発しています。
Jobyで東京まではあっという間のフライトだ(写真:トヨタ)
ウーブン・シティはトヨタに収益をもたらすのだろうか? と考えていらっしゃるかもしれません。きっとそうはならないでしょう。それでいいんです。グローバルな企業市民として未来に投資し、トヨタが培ってきた知見や技術をほかの人たちと共有し、地球の人々に幸せをもたらすアイデアを支援する責任があると考えています。
新しいアイデアで人々を幸せにする、それがウーブン・シティを作った理由です。一社や一人では創り出せない新しい価値や新しいプロダクト、そして新しいサービスを創り出せると信じています。これを「掛け算による発明」と考えています。(中略)
ウーブン・シティはコラボレーションがすべてです。多様な視点や才能、能力をひとつの布に織り込み、私たちの未来の当たり前を創るチャンスです。その未来で、ヒトだけでなく、心も動かしたいと考えています。今日私の話を聞いて未来をよりよくしたい、変化を起こしたい、価値のあるものにしたいと感じた皆さん、ウーブン・シティに参加する招待状を受け取ってください」
スピーチが終わると会場は大きな拍手に包まれた。
■6000件以上の問い合わせからまずは5社と実証をスタート
フェーズ1の建物は延べ42万4000人、工事日数620日、労働時間340万時間をかけて完成した(写真・トヨタ)
豊田章男会長の長男でウーブン・シティのトップを務める豊田大輔さんがウーブン・シティの今とこれからを説明してくれた。
モビリティというと「クルマ」のイメージが強いが、ヒト、モノ、情報、そしてエネルギーの4つに分けることで、「モビリティの拡張」が可能になり、新しいプロダクトやサービスが生まれていくという。
例えばクルマは動いているのはほんの5%で残りの95%は動いておらず、その時間をどう活用して価値を生み出すかといったことも、ヒト、モノ、情報、そしてエネルギーに分けて考えることで新しい見方が生まれ、さまざまな可能性が考えられるという。
モビリティがヒトや社会のためにできることを増やす、そんな実証を進めるのがウーブン・シティだという。また実証はリアルとデジタルを融合させることで、さまざまな「化学反応」が期待できるという。
ではどんなふうに運営されていくのだろうか。ウーブン・シティではインベンターズ(Inventors)と呼ばれる発明家が活躍する場所になる。インベンターズはトヨタやトヨタのグループ会社だけでなく、スタートアップや同じ志を持つ企業、そして個人も含まれ、トヨタが培ってきた「ものづくりの知見」やウーブン・シティを運営するウーブン・バイ・トヨタの持つ「ソフトウエアのスキルを活かしたツールやサービスの仕組み」を提供することで、新しい価値を生んでもらおうというわけだ。
そのインベンターズには6000件の問い合わせがあったなか、まずダイキン工業、ダイドー・ドリンコ、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングの5社がウーブン・シティで実証実験を開始する。なおスタートアップや起業家、大学などの教育機関からの応募は今夏を予定しているという。
インベンターズの実証に協力する住民やビジターをウーブン・シティではウィ―バーズ(Weavers)と呼び、インベンターズにフィードバックを行っていく。そのウィーバーズの第一弾がトヨタとウーブン・バイ・トヨタの関係者とその家族100名弱が今秋から入居し、具体的な実証実験を始めていく。
なお、居酒屋やコンビニといった暮らしの上で欠かせないサービスについても実証したいテーマと要望があれば検討していきたいというから、実証のテーマの幅は大きくなっていきそうだ。
「未来を紡(つむ)ぐ」ウーブン・シティがいよいよ始動する。その可能性を考えると興味は尽きない。
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