スタイリングはドイツ人 設計拠点はスウェーデン
初めて耳にされる方も多いであろう、自動車メーカーのジーカー。中国へ拠点を置く、新興のバッテリーEVブランドだ。しかし、スタイリングを手掛けたのはドイツ人で、設計拠点はスウェーデン。シャシーチューニングは、欧州で煮詰められたという。
【画像】開発は多国籍 残る中国感 ジーカーX ロングレンジRWD 競合サイズのバッテリーEVは? 全124枚
この例に限らず、自動車メーカーは無国籍化が進んでいる。実際、ジープは北米のブランドではあるものの、アベンジャーは欧州で開発・生産されていたりする。
それでも中国メーカーの場合、好印象なモデルであっても、ある種の未完成感が残っていることが通例だった。ここに、ブランドや拠点市場の経験値が表れていたといえる。果たして、新しいXの仕上がりはいかがだろうか。
このXは、写真の通りコンパクトなクロスオーバー。全長4432mm、全幅1836mm、全高1566mmで、フォルクスワーゲンID.4よりひと回り小さく、ボルボC40とほぼ同じ。
電動パワートレインは2種類から選べ、シングルモーターは272psの後輪駆動。ツインモーターは、428psの四輪駆動となる。駆動用バッテリーの容量は69kWhだ。
スウェーデンとオランダ(ネザーランド)から販売が順次始まり、時期は未定だが英国へも上陸することは間違いないようだ。価格も明らかになっていないが、換算すると3万9000ポンド(約706万円)ほどになる。
まとまりの良いスタイリング 高級感のある車内
基礎骨格となるプラットフォームは、親会社のジーリー・ホールディングスによるSEA EV。最近発表された、ひと回りサイズの小さい新型ボルボEX30も利用している。
AUTOCARでは、EX30への試乗も近日に予定している。ブランドによる違いがどの程度与えられているのか、非常に興味深い。
スタイリングは、新興ブランドのモデルとしてはまとまりが良い。BYDアット3より、洗練された印象を受ける。充分な個性があり、すぐに古びて感じることはないだろう。
ボリューミーなボディだが、適度な引き締まり感がある。ジーリー・ホールディングス傘下のブランドの1つ、リンク&コーとの繋がりも観察できる。
内装には合成皮革がふんだんに用いられ、高級感を演出している。硬質なプラスティックが露出しているより、雰囲気は良いだろう。この辺りは、BYDの処理にも近い。加飾的で、新鮮味が薄れるのはスタイリングより早いかもしれない。
ダッシュボードのアンビエントライトや、カップホルダーとシャッターの付いたセンターコンソールの処理など、独自性も意識されている。実際に押せるハードスイッチは殆どなく、14.6インチのタッチモニターが主なインターフェースになる。
リアシート側の空間は、中国のモデルとしてはゆとりがある。荷室容量は362Lと、クラスとしては充分。装備は充実しており、高効率なヒートポンプ式エアコンも標準で付いてくる。
柔らかい足まわりと一致しない操舵感
インフォテインメント・システムは、テスラのソフトウェアに影響を受けている様子。ただし、反応は素早いが、メニュー構造が論理的とはいえないだろう。うれしいことに、アップル・カープレイとアンドロイド・オートへ対応する。
シートはクッションがソフトで、体を優しく包む。運転姿勢は背筋を少し伸ばした格好で、目線は高めで、クロスオーバーらしい。腰を支えるランバーサポートは、張りが強く感じた。
今回の試乗車は、シングルモーターのRWD。272psをどのように展開するのか、期待を抱きながら発進してみる。
グリップ力は不足なく、トラクション・コントロールの介入も自然。リアタイヤへ強い負荷をかけても、スキール音が出るようなことはない。後輪駆動らしく、アンダーステアを抑えつつ、パワーを掛けながらコーナーを脱出できる。
サスペンションは柔らかく、カーブへ意欲的に侵入するとロールが大きい。加減速時にも、ピッチが小さくない。それでいてパワーは豊かで、モーターボートに乗っているように感じるかもしれない。
ステアリングホイールへ伝わる感触は希薄。ステアリングホイールは小さめで、切り始めから反応が鋭い。柔らかい足まわりと、一致しない設定といえる。
サスペンションは、減衰力が足りていないのか、強めの衝撃に対応しきれない。橋桁の継ぎ目などを越えると、ドシドシとノイズも立てる。高速走行時には、風切り音やタイヤの転がり音も目立っていた。
価格価値では有利 荒削り感は残る
ジーカーは、プレゼンテーションでXの優れた動的特性を主張していたものの、それに見合う仕上がりとはいえなさそうだ。運転支援システムも実装されるが、まだ開発段階ということで、オフになっていた。
航続距離は、シングルモーターで445kmが主張される。ツインモーターでは、421kmへ短くなるという。今回は、過ごしやすい気温のスウェーデンでの試乗となったが、電費は6.2km/kWhと良好だった。
欧州ブランドの競合クラスと比べた場合、完成度で並ぶとはいえない。しかし、一般的なユーザーにとっては、大きな不満を感じる差はないともいえる。価格価値という点では確かに有利かもしれない。
中国のクルマだとは感じなかったか、と聞かれると、答えはいいえ。ボルボと近い関係にある強みは表れているし、BYDより品質は高いかもしれない。それでも、ボルボやプジョーの量産車には存在しない、荒削り感は残っているようだった。
◯:特徴的なインテリアデザイン 競争力のある航続距離 訴求力のある価格
△:走行時の外界との隔離性 旋回時や加減速時の姿勢制御
ジーカーX ロングレンジRWD(欧州仕様)のスペック
英国価格:3万9000ポンド(約706万円/予想)
全長:4432mm
全幅:1836mm
全高:1566mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.6秒
航続距離:445km
電費:6.1km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1855kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:69kWh
急速充電能力:−kW
最高出力:272ps
最大トルク:34.9kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)
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みんなのコメント
似て非なるものが多すぎる
製品は沢山の部品の集合体 その部品一つ一つの制度が僅かだけど精度に欠く
それが集まるもんだから機能しなくなるんだよ
分解したら日本製と中国製の違いがほんとにわかります。
表からの見た目は中国製も本当に素晴らしいです。