2020年1~12月における国内販売ランキング ベスト5車は、1位:ホンダN-BOX(19万5984台)、2位:トヨタ ヤリス(15万1766台)、3位:スズキ スペーシア(13万9851台)、4位:ダイハツ タント(12万9680台)、5位:トヨタ ライズ(12万6038台)であった。
N-BOXは2017年以来、4年間連続して国内販売の1位になっている。注目されるのは、登録車の1位にヤリスが入ったことだ。
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この数年間を振り返ると、登録車の1位は、2015年:トヨタ アクア、2016~2017年:トヨタ プリウス(αとPHVを含む)、2018年:日産 ノート、2019年:プリウスであった。
それが2020年は、プリウスの登録台数が前年と比べて46%のマイナスになり、アクアの売れ行きはさらに低くヴォクシーをも下まわった。この2車種は順位を大幅に後退させ、ヤリスが1位に浮上している。
ヤリスの前身はヴィッツだが、登録車の年間登録台数で1位になったことはない。2015年以前を振り返ると、2001年まではカローラシリーズがほぼ一貫して1位だった。この後も2002年と2008年のフィットを除くと、1位はカローラシリーズであった。
そして、2009年に先代プリウスが1位になった後はプリウス&アクアの時代が続く。従って近年の登録車1位には、ヴィッツを含めて、ほかの車種が入り込む余地はほとんどなかった。強いて挙げてもフィットが2回だけ1位を獲得したに過ぎない。ヤリスの1位は異変ともいえるだろう。
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、池之平昌信、奥隅圭之、平野学
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ヤリス1位に3つの理由 ヤリスクロスの好調も追い風に
2020年8月31日に発売開始したトヨタ ヤリスクロス。9月~12月までに3万2810台を登録しており、ヤリスクロスの占める割合は大きい
ヤリスが登録車の1位になった背景には3つの理由がある。
まず、ヤリスの登録台数が「ヤリス+GRヤリス+ヤリスクロス」の合計になることだ。トヨタに2020年の内訳を尋ねると、ヤリス:11万5300台、GRヤリス:3670台、ヤリスクロス:3万2810台であった(冒頭の日本自動車販売協会連合会による数値とは合計台数が少し異なる)。
このうち、ヤリスクロスの発売は2020年8月末だ。販売期間は9月以降の4か月だが、3万2810台を登録している。特に11月は1万台、12月も9000台以上を登録したから、ヤリスクロスの占める割合は大きい。
要はヤリス+ヤリスクロスを合計したことで売れ行きが伸びたのだが、両車はエンジンやプラットフォームを共通化したものの、ボディの造りは大幅に異なる。ユーザーから見れば異なる車種だから、登録台数も別々に集計すべきだ。そうしないとユーザーにとって購入時の参考にならない。
トヨタの全店全車販売で「人気格差」顕著に
2020年5月から、全国のトヨタ系全店でトヨタ車全車を扱う体制に移行した。移行後、ヤリスが全店で取り扱うことになり、売れ行きを伸ばしている
2つ目の理由は、2020年5月から、全国のトヨタ系全店が全車を扱う体制に移行したことだ。東京地区はトヨタの直営販売会社が中心だから、2019年に直営店をトヨタモビリティ東京に統合した。
ほかの地域はメーカーから資本が独立した販売会社も多く、大半の地域で従来の4系列を残すが、取り扱い車種の区別はなくなった。そのためにヤリスも全店が扱うようになり、ネッツトヨタ店の専売だった時代に比べて売れ行きを伸ばしている。
ヤリスのように多くのユーザーが欲しがる人気車は、全店の取り扱いになると、当然ながらさらに売れるようになる。
逆に人気が下降している車種は、ますます下がってしまう。前年に比べて半減したプリウス、アクア、ヴェルファイアはその典型だ。
特にヴェルファイアは興味深い。12月(単月)の登録台数は、ヴェルファイアが1017台、姉妹車のアルファードは7962台で、約8倍の差が開いた。
販売店統合により、アルファードとヴェルファイアの売れ行きにも影響が出た。2020年4月から、アルファードの販売が好調になり、年間では90,748台(5位)の販売台数を誇った
現行型が発売された時点では、ヴェルファイアの登録台数が多かったが、マイナーチェンジでフロントマスクを変更すると順位が入れ替わった。この販売格差は、全店が全車を扱う体制に移行して一層拡大した。
今では従来アルファード&ヴェルファイアを販売していなかったトヨタ店やトヨタカローラ店でも、アルファードが好調に売れている。
さらにヴェルファイアの専売だったネッツトヨタ店でも、従来型のヴェルファイアからアルファードに乗り替えるユーザーが見られるようになった。
その結果、販売格差が決定的になっている。全店が全車を扱うと、各車種の売れ行きにも大きな影響を与えるわけだ。
3つ目の理由はヴィッツから大幅進化した車の「質」
初代から3代目まではヴィッツ、2020年のフルモデルチェンジ後にヤリスへと名称変更した。(ヴィッツとしての販売期間:1999年~2020年)
ヤリスとヤリスクロスが売れ行きを伸ばした3つ目の理由は、商品力が優れ、国内市場との相性も良いことだ。
コンパクトカーのヤリスは、リーマンショックの経済不況によってコスト低減を余儀なくされた以前のヴィッツに比べると、内外装の質が高い。プラットフォームも刷新されて、走行安定性と乗り心地も向上した。
直列3気筒1.5Lエンジンは、ハイブリッドを含めて新開発され、動力性能と燃費が優れている。特にハイブリッドのWLTCモード燃費は35.4~36km/Lだから、日本車の中で最も優れた数値を達成した。
衝突被害軽減ブレーキも先進的で、自転車の検知も可能だ。自車が右左折する時も、直進車両や横断中の歩行者を認識して、衝突被害軽減ブレーキを作動させる。
ヴィッツと同様の1Lと1.5Lのエンジンが用意された。1Lエンジン車は法人向けに開発されたが、個人で購入している人が多いという(ハイブリット車:199万円~229万円/ガソリン車:139万円~192万円)
グレード構成にも注目したい。従来のヴィッツと同様の直列3気筒1Lエンジンも用意され、1.5Lと価格を比べると、同グレードの比較で約15万円安い。法人などを対象にした「X・Bパッケージ」は139万5000円で、今では140万円以下のコンパクトカーは珍しい。
販売店では「1Lエンジン車は法人のお客様を対象に開発されたが、実際には個人のお客様も購入されている。今は1L車の自動車税が2万5000円に下がり、街中の走りが中心のお客様は1Lの『G』を選ぶことも多い」という。
いっぽうヤリスクロスは、人気カテゴリーとされるコンパクトなSUVだ。最上級のハイブリッド2WD「Z」は、価格が258万4000円だから、ライバル車の日産 キックス「X」(275万9900円)、ホンダ ヴェゼルハイブリッド2WD「Zホンダセンシング」(276万186円)に比べて約18万円安い。
ヤリスクロスはライバル2車に比べて後席が狭かったりするが、内外装はSUVらしくカッコ良く、上質で割安な印象もある。そこで売れ行きが伸びた。
このようにヤリスとヤリスクロスは、両車とも国内市場に合った商品開発と価格設定で人気を高めた。しかもヤリスが2020年2月に登場して、コロナ禍の影響を受けながらも販売が活発化した時期に、ヤリスクロスも投入されている。
このタイミングも良く、相乗効果で好調に売れている。ヤリスとヤリスクロスに見られる周到な計算は、国内販売を急増させた1980年代から1990年代のトヨタを思い出させる。
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みんなのコメント
そのうちフィットベゼルとかフィットフリードとか名前替えで合算されちゃうかもよ?
だから両社目の敵にしているプリウスには
とても辛辣に当たり散らす。