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オンロード×四輪駆動:アウディUrクワトロ キッカケは全速力の逃亡:オペル・モンツァ FF (1)

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オンロード×四輪駆動:アウディUrクワトロ キッカケは全速力の逃亡:オペル・モンツァ FF (1)

冷戦と関わりを持つ2台の四駆クーペ

熾烈な競争が、技術的な飛躍や発明をもたらすことは間違いない。戦争へ進展し、凶暴な戦車や化学兵器の誕生へ至る場合もあるが。まだ東と西にドイツが別れていた時代に勃発した「冷戦」は、今回ご紹介する有能な2台を導き出した。

【画像】オンロード×四輪駆動 アウディ・クワトロ オペル・モンツァ FF ヤリスからレヴエルトまで:現代の四駆スポーツ 全113枚

四輪駆動の先駆者、ジープも、設計のキッカケは第二次世界大戦。現在のSUVブームへ繋がるとは、当時は誰も想像しなかったはず。

英国のトラクターで成功したハリー・ファーガソン氏率いる技術者、フレディ・ディクソン氏とトニー・ロルト氏による四輪駆動システムを採用したのが、1969年のジェンセンFF。オフローダーではない初の四輪駆動モデルとして、熱い支持者を生み出した。

しかし、1970年代後半にジェンセン・モーターズは倒産。四輪駆動システムの販売権利は、英国の技術企業、GKN社が買収し、その後、1980年発売のAMCイーグルへ採用された。

一方、ロルトはファーガソン・フォーミュラ(FF)・デベロップメント社を創業。少量生産の権利を保持した。

オペル・モンツァ FF誕生を導いたのは、BRIXMISと呼ばれる、冷戦時代の英国の使節団。東ドイツでソ連軍のスパイ活動を実行した部隊は、オフロードでのカーチェイスを頻繁に繰り広げていた。

1946年から東ドイツ・ポツダムに駐留し、表向きには、ソ連の占領状態を監督する任務を負っていた。ところが実際は、軍事産業に関する情報も収集されていた。BRIXMISの不審な動きに対し、ソ連側は武力で対応。全速力での逃亡が、常套手段だった。

大改造なしに四輪駆動化できたモンツァ

部隊は当初、ランドローバー・レンジローバーを利用していたが、ジェンセンFFの技術へ注目。1970年代に入り、オペルの4ドアサルーン、アドミラルの四輪駆動版が特注された。

1980年には、オペル・セネターを四輪駆動化。セネター FFとして、合計67台が作られている。いずれもレンジローバーより信頼性が高く、燃費に優れ、市街地の景色へ簡単に紛れることができた。オフロードの走破性も、充分といえた。

その結果として、1978年発売の2ドアクーペ、オペル・モンツァにも四輪駆動版が作られた。「自然な流れでしょうね」。とトニーの息子で、1980年代のFFデベロップメント社を率いたスチュアート・ロルト氏は振り返る。

「モンツァの方がセクシーなクルマだという意見は、少なくありませんでした。父はセネターに乗っていましたが、私はモンツァ。個人ユーザーにとって、よりカッコいいクルマに映っていたでしょう」

今回ご登場願った、XOW 5Vのナンバーで登録されたモンツァ FFは、当時のデモ車両。スチュアート本人が乗っていた車両、そのものだ。

モンツァのサスペンションは、セネターと同じく、フロントがマクファーソン・ストラット式で、リアがセミトレーリングアーム式。大きな改造なしにフロントデフを追加でき、四輪駆動化が可能だった。

予想より立ち上がりが鋭い四輪駆動の効果

四輪駆動システム自体は、ジェンセンFFの設計へ近い。改良版のビスカス・カップリングがトランスミッションの後方へ固定され、前後に駆動力を伝達。フロントのドライブシャフトは、エンジン下部のオイルパンを貫いている。

フロント・サブフレームとフロアパンは専用品。ブレーキサーボも、アンチロック機能に対応する独自アイテムへ交換された。

車重は、通常のモンツァから121kg増えている。ところが、動力性能に目立った悪影響はなかった。3速ATは緩やかに加速させる特性を持ち、違いを和らげていたようだ。

かくして、四輪駆動の効果は明らか。滑りやすそうな濡れた砂利道でも、予想より立ち上がりは鋭い。FRのモンツァでは、限界領域でオーバーステアへ転じるが、モンツァ FFでは巧みに抑えられている。

最高出力は182psで、前後のトルク分配率は36:64。リア側が主体のためFRのような感覚も伴うが、安定性はより高い。

FFデベロップメント社によるアンチロック・ブレーキの印象は、若干不自然。1980年代後半から普及した、ボッシュ社のシステムほど洗練されていない。効果としては同等といえるが、完全にロックを防ぐことはできない。

ブレーキペダルの感触は、フルードが不足した状態のようにスポンジー。とはいえ、濡れた路面でも不満ない制動力を生み出す。ぬかるんだ路面でペダルを踏み込むと、圧力が調整されている様子を足裏越しに感じ取れる。

イルティスで完成していたVWのシステム

対して、アウディ・(Ur)クワトロが誕生したいきさつは、もっと平和的。ご存知の読者も多いだろう。

アウディで実験的なパワートレイン開発を担っていた、技術者のヨルグ・ベンジンガー氏は、高性能モデルの四輪駆動化へ強い関心を寄せていた。フォルクスワーゲン・グループによる四輪駆動システムは、フォルクスワーゲン・イルティスで完成していた。

ドイツ連邦軍からの要請で、フォルクスワーゲンは軽量・安価なオフローダーを開発。
1978年のイルティスは、同社キューベルワーゲンの精神を受け継いでいた。

実質的に開発を担当したのはアウディ。NSU時代からの特徴といえる、縦置きエンジン・フロントドライブのレイアウトは、四輪駆動化にも向いていた。

クワトロの発売は、1980年11月。シャープなボディは、同年の春に発売されていたアウディ80 クーペと共有し、ターボチャージャーで過給される2144cc 5気筒エンジンも同社の200で実績を積んでいた。

最高出力は200ps。インタークーラーと改良されたエンジン・マネージメントで、高出力化を叶えた。

モンツァ FFとの四輪駆動の技術的な違いは、トルクの分配方法にある。ロック可能なセンターデフを備え、前後の分配率は50:50と均等。厳しい路面で、強みを発揮する設定といえる。2台とも最低地上高が限られ、オフロード性能に長けるわけではないが。

オンロードでは、シンプルなシステムのおかげで快活。車重はモンツァ FFより200kg以上軽く、グリップ限界も高い。

この続きは、アウディ・クワトロ オペル・モンツァ FF(2)にて。

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