なんと欲張りなモデルだろうか。多くの荷物とともに快適に長距離移動をこなし、いざとなればサーキットも走れる。さらにサイズ感もほど良い。そんな2台だが、両車の成り立ちはまったくと言っていいほど異なる。その似て非なる2台の味比べをしてみた。(MotorMagazine2024年10月号より再構成/文:大谷達也/写真:永元秀和)
試乗車解説:メルセデスAMG CLA45 S 4MATIC+ シューティングブレーク
2019年8月27日、フルモデルチェンジしたばかりの2代目CLAにハイスペックなメルセデスAMG CLA45 S 4マティック+が追加設定されたのは、およそ3カ月後の11月12日でした。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
この時、シューティングブレークにも同じパワートレーンが設定されています。421ps/500Nmというクラス最強のパワーを発生する2L 直4ターボ「M139」エンジンを搭載する。最大過給圧2.1barによる大パワーを発生するターボエンジンながら、レブリミッドを7200rpmという高回転域に設定されています。
クーペよりもわずかに長いとはいえ、全長4695×全幅1855×全高1415mmというディメンションは日本の道路環境にもマッチしやすいものでした。
今回、試乗したモデルは23年9月に以下の改良が施された仕様となります。
●スポーティなエクステリアデザインを採用
●安全性や快適性を高めるアダプティブハイビームアシストを標準装備
●Burmester®サラウンドサウンドシステムをオプション設定
●CLA 180とメルセデスAMG CLA 35 4MATICに48V電気システムとBSGを採用
●スポーティな新デザインに刷新したアルミホイールを採用
メルセデスAMG CLA45 S 4マティック+ シューティングブレーク 主要諸元
●全長×全幅×全高:4695×1855×1415mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1690kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1991cc
●最高出力:310kW(421ps)/5000-5250rpm
●最大トルク:500Nm/5000-5250rpm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・51L
●WLTCモード燃費:11.1km/L
●タイヤサイズ:255/35R19
●車両価格(税込):1053万円
試乗車解説:アウディRS 4 アバント
日本デビューは2019年1月。翌2020年10月には一部改良を受けて、アウディクワトロをほうふつさせるフロントグリル部のスリットのほか、前後バンパーやエアインレット、サイドシルなどを専用デザインとすることで、精悍さを向上させています。インテリアでは10.1インチタッチパネルモニターを採用した最新のMMIが搭載されました。
搭載される2.9L V6 ツインターボは450ps/600Nmを発揮。最大トルクは1900rpmから得られる一方で、最高出力発生回転域は5700~6700rpmとトップエンドまでしっかりパワーを乗せるタイプです。
セルフロッキングセンターデファレンシャルを搭載したクワトロシステム4WDは通常時に前40、後60の駆動伝達となり、駆動状況やドライブモード設定に応じて最大で前に70%、後に85%の駆動力を配分します。
ボディサイズは全長4780×全幅1865×全高1435mmとCLA45 Sよりもやや大きめです。
なお日本市場向けには、2023年9月に限定車として「RSコンペティション」が導入されています。欧州市場向けとしては2024年5月には、誕生25周年を記念した限定車「RS 4 アバントエディション25 イヤーズ」が設定されました。(ここまでWebモーターマガジン編集部)
アウディ RS 4 アバント 主要諸元
●全長×全幅×全高:4780×1865×1435mm
●ホイールベース:2825mm
●車両重量:1810kg
●エンジン:V6 DOHCツインターボ
●総排気量:2893cc
●最高出力:331kW(450ps)/5700-6700rpm
●最大トルク:600Nm/1900-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD(クワトロ)
●燃料・タンク容量:プレミアム・58L
●WLTCモード燃費:9.7km/L
●タイヤサイズ:275/30R20
●車両価格(税込):1316万円
セグメントは異なるものの、好敵手であることは確かだ
メルセデスAMG CLA45 S 4MATIC+シューティングブレーク(以下、CLA45 S)とアウディRS 4 アバント(以下、RS 4)の直接対決なんて、ひと昔前だったら思いつかなかった企画だろう。
なにしろ、CLA45 Sはエンジンを横置きしたCセグメントなのに対し、RS 4はエンジン縦置きのDセグメントと、本来属しているクラスが大きく異なっているからだ。
けれども、最近はセグメント分け自体があいまいになってきて、CLA45 SとRS 4の場合も全長の違いは8.5cmに過ぎない。エンジンの最高出力にしてもRS 4の450ps に対してCLA45 Sは421ps と、十分に比肩しうる範囲内。
駆動方式はどちらも4WDだが、本来、後輪駆動主体のメルセデス(AMG)が横置きで、どちらかといえば前輪駆動主体のアウディが縦置きという「逆転現象」が起きているのも興味深いところ。さらにいえば、実際に乗り比べても好敵手という印象だったし、本来であれば格下(失礼!)のCLA45 Sがずいぶんと健闘したことも事実である。
そんな話を始める前に、本特集のテーマであるドイツワゴンについて、私の思うところを少し記しておきたい。皆さんご存知のとおり、ドイツ車といえば質実剛健な作りが魅力的だが、同じ価値観はステーションワゴンにも貫かれている。
スタイリングよりも機能性、実用性を重視し、やや武骨ともいえるデザインのボディにたっぷりとした容量のラゲッジスペースを確保。しかも、セダン譲りの安心感溢れる走りを実現しているというのが、私自身が抱く「ドイツワゴン像」である。
どちらも「スタイリングと機能性の両立」に注意深く取り組んでいる
そうしたもともとの出自を考えると、CLA45 SもRS 4もスタイル優先の「クーペライクなワゴン」と位置づけられていると言えなくもない。
とりわけCLA45 Sは「シューティングブレーク」と銘打ってスタイリング重視のワゴンであることをはっきりと打ち出しているし、アウディがいうところのアバントには「スタイリッシュなワゴン」という意味が明確に込められている。
一方で、どちらも「スタイリングと機能性の両立」に注意深く取り組んでいる点は特筆すべきだろう。
たとえばボディサイドを見たとき、CLA45 Sはルーフがなだからに下降するクーペライクなスタイリングに仕上げられているように思えるけれど、実際に下降しているのはウインドウグラフィックスだけで、ルーフそのものはある程度の高さを保ちながらテールゲートまで伸びきっている。
このため、後席のヘッドルームは日本人男性の平均身長を少し超える私が着座した状態で拳ひとつ半と、Cセグメントのハッチバックを大きく凌ぐ広さを実現している。
スタイリッシュなスタイリングと室内スペースの確保に関して優れた評価を確立しているRS 4も後席ヘッドルームは拳ひとつ分と、こちらも十分な広さ。荷室容量にしても、CLA45 S:505L、RS 4:495Lとワゴンの名に恥じないスペースを確保している(いずれも後席シートバックを立てた5名乗車仕様での状態)。
ヘッドルーム、荷室容量ともにCLA45 SがRS 4を微妙に上回っているのは、前者がスペース効率の点で有利なエンジン横置きレイアウトを採用しているからだろう。
いずれにせよ、2台とも「デザイン上の格好良さ」が実用性を損なっていないわけで、その点でもドイツワゴンの良き伝統は受け継がれているというべきだ。
非なるようで通じる部分もあるCLA45 SとRS4
では、2台を走らせたときの印象はどうだったのか?
まずはRS 4で一般道を走る。低速域でさえゴツゴツした印象を与えず、ソフトな当たりの乗り心地に仕上げられているのはアウディRSモデルの伝統というべきもの。私は個人的に同じ世代のA4アバント 35 TDI アドバンスドを所有しているが、当たりのソフトさだけでいえばRS4のコンフォートモードのほうが、はるかに快適なくらいだ。
もっとも、その代償としてフラット感が薄いのはやむを得ないところ。とりわけ高速道路ではピッチング方向の動きがわずらわしく感じられるほどになる。ただし、そんなときはオートモードに切り替えれば、タイヤの当たりをソフトなレベルに保ったまま、アウディらしい快適なフラットライドを味わえるようになる。
こうした傾向は、ワインディングロードではさらに顕著になるようで、積極的なコーナリングを楽しもうとすると、オートモードでもピッチングは過大で、ダイナミックモードを選択したくなる。
こう書くと、なんだか消去法的にダイナミックモードを選択しているように思えるかもしれないが、ワインディングロードでの走りは目が覚めるほどに素晴らしい。操舵初期のレスポンスが鋭すぎず、ドライバーの自然な感覚にマッチした反応を示してくれるのは、いかにもアウディらしいところ。
しかも、わだちなどで路面が荒れていても進路は乱されないため、ハンドルを1度切ったら、その舵角を保ったままでコーナーをクリアできる理想的なハンドリングを示してくれる。ロールが小さく抑えられていて、ロードホールディング性能がバツグンに優れていることを含め、この種のスポーツモデルとしては120点を献上したくなるほどの完成度である。
全般的なスタビリティ感には、明確な「差」が
かたやCLA45 Sはというと、オプションのAMGパフォーマンスパッケージが装着されていなかった関係でサスペンションのモード切り替えはなく、1種類のセッティングですべての状況をカバーしなければならなかったが、その割には上手く作り込まれていると感じた。
一般道や高速道路ではややソリッドな乗り心地に感じるのはやむを得ないものの、それも十分に許容できる範囲。それでいて、ハードコーナリングでも不安定な姿勢に陥ることなく、RS4に迫るペースでワインディングロードを駆け抜けていけるのだから大したモノだ。
ただし、細かく観察していくと、コーナリング中に路面のギャップに乗り上げると、コーナーの外側に向かって斜め上方にボディが上下する傾向が見られたほか、外乱の影響を受けやすいためか、状況によってはコーナリング中に修正舵が必要なこともあった。
つまり、全般的なスタビリティ感についてはRS 4がCLA45 Sを確実に凌いでいたのである。
走るとスペックだけではわからない違いが見える
絶対的な動力性能に関していえば、2台とも不満を覚えなかった。低速域でも十分なトルクを発生してくれるうえ、トップエンドでのパンチ力は2台とも甲乙つけがたいレベルだ。
ただし、エンジンのスムーズさは大きな差があった。CLA45 Sはエンジン始動時からハンドルに微振動が伝わり続けるのに対して、RS4はバイブレーションフリーといっていいほど洗練されている。トップエンドまで回した際のスムーズさや官能性も、RS 4が1枚どころか2枚も3枚も上手。この辺は直4かV6かに加え、エンジンの搭載方法が大きく影響しているはずだ。
つまり、性能的にも室内空間の面でも2台はほぼ互角だが、質感や洗練度合いではRS 4がCLA45 Sを大きく凌いでいたことになる。別の言い方をすれば、それだけCLA45 Sはスポーティな印象が強いとも言える。派手な色合いのインテリアも、そうした雰囲気にマッチしたものだ。
一方、極めて洗練度の高いRS 4はお値段もそれなりで、車両価格はCLA45 Sよりも260万円ほど高い。言い換えれば、2台の洗練度合いと価格の違いは、セグメントの差をそのまま反映したものと言っていいだろう。
[ アルバム : 特集 比べるワゴン─ジャーマンプレミアム編 (3) はオリジナルサイトでご覧ください ]
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