BMWが今年12月に開幕するフォーミュラEのシーズン5からワークス参戦することを発表した。
2013年にサブブランド「i」を立ち上げるなど、早くから自動車の電動化に熱心だったBMWだけに、世界初の電動フォーミュラカーレース・シリーズであるフォーミュラEに挑戦するのは自然な流れといえる。
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もっとも、それだったらフォーミュラEが立ち上がった2014年から参戦していてもおかしくないが、実はルールの都合上、これまではレース中にマシンを乗り換えなければいけなかった。これはバッテリー容量が足りなかったために取られた措置だが、いかにも電気自動車の航続距離が不足していることを証明しているようでみっともない。
BMWがそう考えたかどうかはともかくとして、今回ドイツ・ミュンヘンのBMW本社で行なわれた発表会でも「今年からマシンの乗り換えが不要になったことがワークス参戦を開始する決め手となった」と言明していた。
そう、間もなく始まるシーズン5からフォーミュラEはマシンを一新、大容量バッテリーを搭載してスタートからフィニッシュまで一気に走りきれるようになる。おかげで、これまでよりレースがシンプルでわかりやすくなり、より多くのファンを惹きつけることが期待されている。
BMWのフォーミュラEで注目したいポイントはふたつ。ひとつはデザイン、もうひとつはテクノロジーだ。
BMW iFE.18のカラーリングはなかなか斬新だ。BMWモータースポーツの基本カラーである白とブルーを基調としながらも、それらがブロック状に切り分けられていて、一見したところ連続性があまりないようにも思える。
ところがこのデザインは、フォーミュラEのレースを研究し尽くした結果、生まれたものだとBMWモータースポーツでチーフデザイナーを務めるミハエル・スカリーは説明する。「フォーミュラEのレースは都市部の狭いサーキットで行なわれます。このため観客は、普通のレースよりもやや高めの近い位置からレースを望むことになります」 。
そこでスカリーらは、一般的なレーシングカーではあまり重視されない上方から見下ろした際のデザインを中心に検討。各スポンサーのロゴは上から見てもしっかり認識できるように工夫したという。
このデザインでもうひとつ特徴的なのは、前述した白とブルーがどんな角度から見ても適切なコントラストを生み出すようにレイアウトされていること。これこそカラーリングがブロック状に切り分けられた理由でもあるのだが、デザインに際しては狭い市街地サーキットで観客の目にマシーンがどう映るかを検証したほか、観客席とは異なる位置から撮影するテレビカメラのことも考慮されたようだ。
いっぽうでコクピット周辺は黒もしくはグレーで統一し、太陽の光を反射してドライバーが眩しく感じることのないように配慮されている。
実車を目の前にすると、クルマ全体がマットカラーで仕上げられていることがわかり、なかなかインパクトが強い。レーシングカーのカラーリングも自動車メーカーのデザイナーが手がけるとここまで質感が向上するものかと驚くばかりだった。
今回発表されたBMW iFE.18のもうひとつの注目点がそのテクノロジー。とりわけ電気自動車の心臓部といえるモーターとその制御ユニットには、BMW iで培ったノウハウがフルに生かされているという。
まあ、自動車メーカーがモータースポーツ活動に取り組むとき、「サーキットで培った技術を量産車にもフィードバックする」というのはよく使いたくなるキャッチコピーだが、現実はそれほど甘くない。なぜなら、量産車とレーシングカーでは使用される技術がまったく異なるからだ。
ところがBMWは、BMW i部門で量産車の開発に当たっているエンジニアがiFE.18のモーターと制御ユニットを手がけたという。それもひとりやふたりではなく、BMW フォーミュラEの駆動系開発に関わった全員が、普段はBMW iの量産開発に携わっているメンバーなのである。実際のところ、フォーミュラE用のモーターは1~2カ月で開発が完了するため、専任スタッフを置くまでもないようだ。
彼らが生み出したフォーミュラE用モーターは超高回転設計とすることで小型化、軽量化、そして高効率化を達成。たとえばBMW i3用のモーターと比較すると、iFE.18用モーターはパフォーマンスが2倍なのに容積は1/3で、重量は半分に過ぎない。また、制御ユニットの半導体には最新のシリコンカーバイドを採用。これはスイッチングロスが小さいために伝導効率が高く、ユニット全体を小型軽量に仕上げることができるそうだ。
BMWはアメリカの名門チーム「アンドレッティ」とタッグを組み、ドライバーにはシーズン1から参戦するアントニオ・フェリックス・ダ・コスタとルーキーのアレクサンダー・スミスを起用する。開幕戦は12月15日にサウジアラビアのディルイーヤで開催される。
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