2台のMIRAIが表彰台を獲得
静岡県にある富士スピードウェイで、JEVRA(全日本電気自動車グランプリ)シリーズの第4戦が開催された。富士スピードウェイのコースは、後半のダンロップコーナーから最終コーナーまでが延々と登りとなるため、EVにとって厳しいコースである。今回このJEVRAシリーズ第4戦は、この富士のコース(全長4563km)を11周で争うこととなる。
【公道初試乗】ホンダ・クラリティとトヨタ・ミライを超速攻で公道比較
今回、5クラス合計17台がこれに参戦する。前回に続き、燃料電池車のEV-FクラスにトヨタMIRAIとホンダ・クラリティFuel Cellが登場。再び燃料電池車同士のガチンコ対決が行われるのだ。そして、なんと今回は4台ものFCVが参戦した。
そのうちの一台は、元F1ドライバー、TEAM UKYO代表の片山右京選手(#4 TOYOTA MIRAI)がハンドルを握るのだ。
午前中に行なわれたその予選は、これまでもレースを常に引っ張ってきている最強コンバートEVともいえる#39 ウェルマー☆ビルズ☆FT86EV(金沢秀好選手)が、出力を抑えながらも2分18秒611でポールポジションを獲得。
2番手から5番手に、LEAF3台とコンバートEVが続き、FCVのトップとなったのは#72 チームNATS・日本自動車大学校・ミライの金井亮忠選手(2分29秒944)で6番手に入った。
片山選手の予選タイムは2分36秒482で、予選順位は13番手。予選終了後、このJEVRA戦に初めて参戦となった片山選手は、「MIRAIには乗ったことはありますよ。あくまで取材としてのもので一般道を走行して、の取材でした。失礼な話ですが、こういった新しいクルマですが、実用性は問題ないんだなというところまでの認識でした。まさかその車でレースに出るとは思いもしませんでした。こんなクルマでのレースですから、もともとのイニシャル設定スピードが違うわけで、いろいろと問題はありますよね。予選は、コースインして全開で行ったらそのインラップで制御が入ってしまって……。アクセルを踏んじゃいけないっていうのは、ほんとにドライバー殺しのレースですね」とコメントしてくれた。
片山選手のMIRAIは完全ノーマルのままで出走予定だったが、「1.8トンの車重で、このタイヤだとブロックが動いちゃって、レースというシチュエーションと、この車重とタイヤではマッチしていない。たかだが11周とも思うんですが、少しでも何とかしたいということで、(同じMIRAIで参戦している)国沢さんの中古タイヤを貸してもらいました」ということで、決勝レースではタイヤをノーマルのBSエコピアからポテンザRE-71に変えての出走となった。
この日の天候は晴れ。時折黒い雲が頭上を覆い、午後には雨が降るのでは、と危惧されたが天候はもちこたえ、夕方4時35分EVレースはスタートした。いったんグリッドに並んだポールポジションの86EVは、ニュートラルポジション検知のエラーが出たということで、ピットへ戻って再起動、ピットスタートとなった。そのため、グリッドのフロントローは日産リーフ2台が並ぶこととなった。
しかし、ホールショットを決めたのは、そのリーフではなく、4列目7番グリッドにいた石井昌道選手(#16 Tokyo Next Speed i3)であった。絶妙のタイミングとBMW i3の軽さを活かして、電費無視のスタートダッシュを決めたのだ。それに日産リーフの#88 レーサー鹿島選手、菰田選手の#17 ホンダ・クラリティ、国沢選手の#58 トヨタMIRAIが続くというスタートとなった。
3周目には国沢選手がトップを奪い返すも、その後ピットスタートで追い上げてきた86EVの金沢選手がトップに立ち、そのまま独走で今季4連勝を飾った。
FCVの戦いは、スタートでクラストップに立った菰田クラリティだったが、バッテリーの温度上昇に加えてFCスタックの温度上昇の二つのアラートが出てセーフモードに突入して失速。
変わって今回、フロントグリルおよびエンブレムを加工して、温度上昇を抑える作戦に出た国沢MIRAIがトップに立つ。それに続いたのが片山MIRAI。もう一台の金井選手は、スタート直後にアラートが出て後方からの追い上げとなったが、プッシュを続け、最終的には2台のMIRAIをパスしてきっちりFCVクラストップとなる総合2位でフィニッシュしている。
国沢選手は総合3位、片山選手は6位、菰田選手は11位という結果となった。
モータージャーナリストでエコドライブインストラクターなども務める石井選手は、スタートこそしっかりと前に出たものの、最終的にはEV2クラストップの総合8位でフィニッシュしている。
決勝後、片山選手は、「大人げないけど、最後に鹿島選手を体当たりしてハジキ出そうかと思ったよ(笑)」と、最後の最後に鹿島選手にパスされたことが相当悔しかった様子。
ただ、このEVレースについては「初めての経験ですごく面白かった。今までF1もやって、ル・マンもGTもパリダカもやってきたけど、全然意味がなかった」とコメント。
「次世代のレースだからもっと多面的に長期的にいろいろとやりたいし、やるべきことは山のようにあるし、上げ幅はたっぷりある」と今後の参戦も視野に入っている様子だ。
(文・写真:青山義明)
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