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レースマシンにドリンク装置? ヘルメットの下で必死の水分補給 暑さと闘う過酷なレースの裏側

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レースマシンにドリンク装置? ヘルメットの下で必死の水分補給 暑さと闘う過酷なレースの裏側

■速度は凄いがレーシングカーには市販車のような快適装備がない

 モータースポーツは、レーシングカー(マシン)で争うスポーツです。そのマシンを操るドライバーはすごく過酷な状況でコンマ何秒という世界で闘っています。日本で1番人気のレースカテゴリーであるスーパーGTは毎戦、1回のレースで実に250kmから300kmもの距離を走ります。最も距離が長いレースでは500kmにもなります。

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 この過酷なスーパーGTで、ライバルと並んでドライバーの大敵となるのは「暑さ」です。レーシングカーには、市販車と違い快適装備がないのです。

 今でこそFIA-GT3のようなレーシングカーではドライバーの熱中症などを考慮し、クーラーが装着されることが多くなりました。一昔前まではこうした装備が重量増を招くものとされており、省かれることが当たり前だったのです。

 このクーラーについて、今シーズンからスーパーGT300クラスに参戦している「Modulo Drago CORSE」チームのエースドライバーである道上選手に聞いてみると、「NSX GT3にもクーラーは付いています。でも上のクラスのGT500マシンのような高性能なものではなく、吹き出し口もピンポイントで、簡素なものです。だからものすごく冷えるということではないんです」と教えてくれました。

 ちなみにGT500のマシンが搭載するクーラーは、その仕様こそ各メーカーによって様々ですが、なかにはシートにベンチレーション(通気穴)が設けられているものまであります。またメーカー系マシンに乗るドライバーのヘルメットに透明なアタッチメントが着いていたりするのですが、これはまさにクーラーの冷却風を頭部へと導くためのものなのです。

 さらにレーシングカーは、万が一の火災を想定してカーペットはもちろん、断熱材なども取り払われているため、マシンの床は鉄板が剥き出しになっています。すると車内には日差しや地熱、エンジンの熱までもがダイレクトに入って来るため、ひどいときは車内の温度が外気温以上になってしまいます。

 この暑さからドライバーを守るためにレーシングチームは、たとえば外からの通風ダクトで風通しして、少しでも和らげようとします。またドライバーは「クールスーツ」と呼ばれるチューブ付きのインナーウェアを着て、ここに冷却剤を循環させて体温を下げたりしています。

 そしてもうひとつ、ドライバーを脱水症状から守るために、レーシングカーにはドリング装置が搭載されています。

「ただこのドリンクがね(笑)」と道上選手は、笑いながら教えてくれました。

 助手席側に搭載された大きなクーラーボックス。ここにドライバー用のドリンクが搭載されています。ドライバーはここから伸びたチューブを通してドリンクを飲むのですが、NSX GT3ではこの経路が長すぎて(その取り回しから、2m近くチューブがあるといいます)、ドライバーが飲もうとしてもなかなか出てこないというのです。

「コースの後半でドリンクを飲もうと、必死にチューブでチューチュー。ようやくドリンクが出てきたのが最終コーナー(笑)。そして一度出たら圧が掛かって止まらなくなり、ピットと無線で話している最中もドバドバ水が出て、『これじゃ話せないよ!』なんてやりとりを公式練習走行中にしていました」

■表に出てこない小さなこだわりが勝利への道

 コストの高騰を防ぐためにテスト回数が制限されるスーパーGTでは、こうしたマイナートラブルも含めて、レースを含めた少ない走行チャンスを活かしながら様々なことを確認して行かなければならないとのことでした。

 しかしこのドリンク装置、ホースの長さ以外は最新式だと感じました。特に感心したのは、ヘルメットから伸びるドリンク用チューブに着いたアタッチメントです。これはチームが独自に作った装備で、その先端に強力なマグネットアタッチメントを付けることで、簡単かつ正確にホースをつなぐことができます。

 コース上でドライバーが必死になってタイムを削って行くのがレースです。しかしこのタイムも、ピット作業でミスをすると、何秒もの時間が簡単に失われてしまいます。

 こうした緊迫した状況のなかでも、ドライバー交代のような作業をスムーズにしてくれる装備は、大きな助けとなります。

 実はこうした、なかなか表に出てこない小さな積み重ねが、チームを勝利へと導いて行くのです。

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